Good-Loopをきっかけにした新たなビジネスにも期待
──Good-Loopに対する日本の広告主・生活者の反応を教えてください。
山﨑:寄付の文化が欧米ほど浸透していませんが、問い合わせは増えてきており、継続的に出稿してくださっている広告主もいます。ある製薬系の企業様には、2022年3月8日の「国際女性デー」に関連したプロモーションの一環でGood-Loopを活用していただきました。その取り組みが非常に好評だったため、今年も同様のプロモーションを実施しています。
Good-Loopで広告を視聴された方から広告主に「とても素敵な活動だから頑張ってください」という応援の声が寄せられたとうかがっています。デジタル広告がポジティブに受け止められている手応えを感じましたし、広告主のSDGsアクションを促進する装置としてGood-Loopが機能していることに感動しました。広告主の社内でも社会貢献活動へのモチベーションが高まっているようです。
夏見:副次的な効果として、寄付先の団体と広告主の交流が挙げられます。慈善団体にとっては、寄付はもちろんロゴの掲出によるPR効果が期待できますから、広告主に対する感謝の思いは非常に強いわけです。先日、キャンペーン終了後に両者が直接会って話をする機会をセッティングしました。GoodLoopをきっかけにしたSDGsの新たな活動やプロダクトの開発など、広告配信にとどまらないビジネスのサポートを今後も続けたいです。
おすすめのKPIは「視聴再生完了率」
──Good-Loopがもたらす社会的な意義や、デジタル広告に対するイメージの変容については理解できました。一方で、広告主は出稿にあたり定量的な効果を測る必要があります。その点はどのようにクリアすれば良いのでしょうか?
李:Good-Loopの特徴の1つとして、高い視聴再生完了率が挙げられます。視聴者が参加しやすい仕組みと関心を引く広告フォーマットにより、スキップされがちな30秒以上の長尺動画でも最後まで視聴されやすいのです。一般的な動画広告メニューの2〜3倍の値を示すこともあります。広告主側には広告出稿費と別に寄付金が発生するため、インプレッション単価だけを見ると効率は下がりますが、「視聴再生完了率」「視聴再生完了単価」の2つをKPIに設定すれば、効率の良い他の広告メニューとも十分に戦えるパフォーマンスです。
──今号の特集テーマである「社会価値創造と事業成長」を踏まえ、Good-Loopを通じた今後のチャレンジをお聞かせください。
山﨑:株主向けのIRで企業の社会貢献活動が取り上げられることはあっても、生活者とのコミュニケーションで社会貢献が語られるケースはそこまで多くないと思います。また、テレビCMや新聞広告を通じた発信は伝えられるメッセージが限られてしまうため、具体的なアクションがイメージされにくいです。その点デジタル広告はメッセージをインタラクティブに伝えることができるフォーマットと言えます。今後はGood-Loopが各ファネルの態度変容に与える効果を証明し、出稿の機会を増やしたいです。
矢田:長期的にはこの取り組みを通して広告主、生活者、寄付先の団体、そして我々広告会社の「四方よし」を目指しています。広告主の意向だけを取り入れた広告は生活者から遠ざけられてしまう懸念があり、逆に生活者の意向ばかり反映した広告では広告主がメリットを得られません。Good-Loopなら広告主は自社の広告を最後まで視聴してもらうことができ、生活者は社会貢献活動に参加するハードルを下げることができます。広告自体の価値をアップデートすることで、我々広告会社のビジネスチャンスも広げていきたいです。
取材協力
博報堂DYメディアパートナーズ
メディアビジネス統括センター付 出向/SPEXPERT'S 取締役 李眞煥氏
プラットフォーマー戦略局メディアプラットフォーム戦略グループ メディアプラニングディレクター 山﨑宏太氏
プラットフォーマー戦略局第三グループ メディアプロデューサー 矢田菜々子氏
プラットフォーマー戦略局第三グループ メディアプロデューサー 夏見真実氏