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「ADJUST IGNITE TOKYO 2023」レポート(AD)

【ABEMA×TVer×フジテレビ】主要プレーヤーが語るCTV広告の最新トレンドと活用のヒント

 モバイルアプリの計測・分析ツールを提供するAdjustは、アプリマーケティング業界のリーダーを集めたカンファレンス「Adjust Ignite Tokyo 2023」を開催した。「CTV広告がアプリマーケの新定石に!~いま急成長する新たなチャネルの活用事例と今すぐやるべきこと~」と題されたセッションには、OTTサービスの主要プレーヤーであるABEMA、TVer、フジテレビジョン(FOD)の3社が登壇。アプリマーケターに向けて、CTV広告の有用性や最新メニュー、効果計測の手法をシェアした。本稿ではその内容をレポートする。

米国のCTV広告市場は日本の約60倍

佐々(Adjust):CTV(コネクテッドテレビ)広告について議論を進めていきたいと思います。CTVとは「インターネットにつながっているテレビデバイス」のことです。本日お集まりいただいた皆様は、そこに流れるストリーミングサービスやOTT(※1)を仕掛けながら、放送業界を進化させていらっしゃいます。

Adjust ゼネラルマネージャー 佐々直紀氏
Adjust ゼネラルマネージャー 佐々直紀氏

※1 Over The Topの略。インターネットを介して視聴者に直接提供するメディアサービスのことを指す

佐々(Adjust):新たなチャネルとして注目を集めるCTVですが、CTV広告の市場はどのような状況でしょうか。

綾瀬(ABEMA):2023年2月にデジタルインファクトとサイバーエージェントでCTV広告に関する調査を行いました。その結果によると、国内の動画広告市場において2022年は10%だったCTV広告のシェアが、2026年には20%にまで伸びると予測されているのです。CTV広告のポテンシャルの高さが見てとれます。

AbemaTV ABEMA ビジネスディベロップメント本部 シニアプロダクトマネージャー 綾瀬龍一氏
AbemaTV ABEMA ビジネスディベロップメント本部 シニアプロダクトマネージャー 綾瀬龍一氏
動画配信サービス「ABEMA」において、純広告のプロダクトマネージャーとして商品開発に従事

佐々(Adjust):世界に目を向けても、CTV広告市場の拡大は明らかです。US市場だけで日本市場の約60倍に相当する3兆円超の市場規模(2022年時点)を誇っています。それが2026年には5兆円超になると予測されているのです。CTV自体の普及もますます進むでしょう。CTVの保有世帯数が2023年に3,000万、2026年には3,640万まで伸長することを示すデータもあります。

手元のスマホで検索行動を促しやすい

佐々(Adjust):CTV広告の特徴をまとめると「圧倒的なオーディエンス」「共視聴」「大画面」「高い視聴完了率」「セカンドスクリーン」「デジタル(ターゲティングと計測)」の六つが挙げられます。皆さんはどうお考えですか?

綾瀬(ABEMA):大きい画面で訴求できることは大きいですね。最近では45インチが主流になるなど、テレビサイズの大型化が加速しています。

矢部(TVer):大画面であることは高い視聴完了率にもつながっていると思います。大きなデバイスで腰を据えて見てもらえるため、CTVの番組・広告ともに視聴完了率はスマートデバイスの中でも高いです。そのため、広告のメッセージを伝えやすいと考えます。

TVer 広告事業本部 技術統括 矢部怜史氏
TVer 広告事業本部 技術統括 矢部怜史氏
「TVer」において広告プロダクトの開発を担当する

綾瀬(ABEMA):アクションの促しやすさもCTV広告の大きな価値と言えます。CTVを視聴する人は手元にスマホを持っていることが多く、CTV視聴をきっかけに検索行動を起こした人のうち49%はリアルタイムに検索しているそうです。CTV広告はモバイルと非常に相性の良いデバイスだと考えます。

矢部(TVer):高い共視聴率も特徴として挙げられます。当社が実施したアンケートによると、家族など二名以上でCTVを視聴する人の割合は34.5%でした。1インプレッションの価値が非常に高いと言えるのではないでしょうか。

【2023年版】CTVガイド:アプリマーケターのためのインサイト

コネクテッドテレビ(CTV)をマーケティングで活用する際に、知っておくべき情報を網羅しています。AdjustのWebサイトよりガイドをダウンロードしてご確認ください。

スポーツの観戦体験を損なわない新しい広告

佐々(Adjust):CTV広告の特徴を活かし、ABEMAでは新しい広告商品を開発されたそうですね。

綾瀬(ABEMA):2023年春に国内OTT市場初となるスプリットスクリーン型の広告商品「ABEMA Live Screen Ad」の提供を開始しました。これは、スポーツライブ放送中に画面を分割し、インプレー中にCMを表示することができる枠です。

綾瀬(ABEMA):ABEMA Live Screen Adの特徴は、視聴率とコンテンツファンに対するリーチ力の高さにあります。イニング間など試合のブレイク時に配信画面を切り替えて表示するインストリーム型のコマーシャルブレイクと、ABEMA Live Screen AdでCMのリーチを比較しました。その結果、前者のリーチは8割程度だったのに対し、後者はほぼすべての視聴者にリーチすることができていたのです。

 また、広告表示中に投稿されるコメントを分析した結果、ポジティブ&ニュートラルが94%を占めていました。そのうち83%は商材や内容について言及したコメントで、広告のアテンションや視認性の高さがうかがえます。

矢部(TVer):TVerの調査でも、CTV広告が認知度・購買意向に与える影響は見て取れました。対象を「全体」「スマートデバイス/PC」「CTV」の3グループに分けたリフトアップ比較では、CTV広告視聴者の購買意向が最も高かったです。やはり大画面で訴求できる点が効いているのだと思います。

おすすめの計測指標は「アシスト効果」

佐々(Adjust):ここで私からCTV広告の計測・分析手法について説明させてください。Adjustが提供しているCTV広告の計測ソリューションについて「どのように計測しているのか」とよく聞かれるため、仕組みをお伝えしたいと思います。

佐々(Adjust):行っているのはクロスデバイス計測(IPアドレスなどによる確率的モデリング)です。CTVに広告を配信する際に取得できるIPアドレスと、CTV広告を視聴したユーザーが手元のスマホでアプリをインストールした際のIPアドレスを突合する仕組みです。

 CTV広告を出稿する際は、他のキャンペーンに対する「アシスト力」を評価指標に設定することをおすすめします。CTVは高いリーチ力を持つ媒体です。我々のようにモバイルアプリの計測ツールを扱うベンダーは、基本的にコンバージョンに最も近いラスト接触を以て「コンバージョンへの貢献」と見なしますが、実はラスト接触の前に多くのユーザーがCTV広告に触れているのです。CTV広告がキャンペーンパフォーマンス全体に与える影響を可視化し、「コンバーションをいかにアシストしているか」という観点で分析する必要性はこの点にあります。

 Adjustでは「アシストあり/なしのコンバージョン比率と推移」「CTV広告から他媒体へのアシスト」などを可視化します。CTVに広告を出稿する企業の皆様には、ぜひこのアシスト効果分析機能を活用いただきたいです。

FODが実験で証明した「CTV×ミッドロール」の効果

佐々(Adjust):CTV広告の効果という観点では、野村さんがFODでかなり踏み込んだ検証をされていますよね。

野村(FOD):「CTV広告は高い効果が見込める」と言えど、広告枠として提供する以上は実際に予算を投じて検証するべきだと考え、自社の広告で実証実験を行いました。

フジテレビジョン ビジネス推進局 コンテンツビジネスセンター プラットフォーム事業部長 野村和生氏
フジテレビジョン ビジネス推進局 コンテンツビジネスセンター プラットフォーム事業部長 野村和生氏
フジテレビが運営する公式の動画・電子書籍配信サービス「FOD」の事業執行責任者を務める

野村(FOD):具体的には、Adjustを実装した古地図アプリ「大江戸今昔めぐり」のインストール数をKPIに設定し、次の2パターンで広告配信を行いました。

・4種類のCM素材をCTVのミッドロール/ポストロール(※2)に配信する
・スマートデバイスにも同様のCMを配信する

※2 コンテンツの途中(ミッド)や後(ポスト)に広告を表示する配信形式のこと

野村(FOD):実験の結果、どのCM素材で比較してもスマートデバイスよりCTVのほうがインストール数は多かったです。配信タイミングで比較すると、ポストロールよりミッドロールに軍配が上がりました。「スマートデバイス×ミッドロール」のCVRを1とすると、「CTV×ポストロール」は3.5で「CTV×ミッドロール」は5.5くらいのバランスです。

 またQRコードのあり/なしでも比較を行いましたが、やはりインストールはQRコード経由で発生するため、クリエイティブには必ず組み込むべきだと改めて感じました。

矢部(TVer):コンテンツの後に流れるポストロールは「効果が見込めないのではないか」と言われがちですが、この実験ではきちんと価値が示されていて大変興味深いです。

野村(FOD):そうですね。CVRの高さを鑑みても価値はあるため、安く仕入れることができれば穴場の枠だと思います。

佐々(Adjust):広告の訴求の仕方によっては、ポストロールのほうが高い効果を見込めたり、QRコードの効果をさらに高められたりできそうです。「ここからインストールをするとこんなメリットがあります」という訴求にすれば、ユーザーの行動を促しやすいかもしれません。

伸びゆく市場で先進事例を生み出すチャンス

野村(FOD):これほどCTV広告の効果が高いということは、地上波広告の効果も同様に高いと言えるのではないでしょうか。地上波テレビCMは「広告効果が見えづらく、上司を説得できない」と敬遠されることもありますが、数千万円をかけるプロモーションの場合は確実に効果が見込めます。まとまった費用を投入できるキャンペーンなら、CTV広告と地上波広告の組み合わせをおすすめしたいです。

矢部(TVer):CTV広告と地上波テレビCM双方の特性を活かし、相乗効果を狙うことで価値を生み出せると私も考えています。CTVはこれから伸びていく市場ですから、今のうちに実験してみると良いのではないでしょうか。

佐々(Adjust):Adjustではビデオリサーチさんと連携して、地上波テレビCMの効果を測るサービスも提供しています。テレビCMを出稿されている企業のご担当者様は、ぜひご活用ください。最後にお1人ずつ、今後の展望をお話しいただけますでしょうか?

綾瀬(ABEMA):CTVで見られるコンテンツを今後整備していく予定です。広告フォーマットもアプリ事業者の皆様にとってより使いやすいものにできるよう、Adjustさんと連携を進めています。そしてフォーマットに限らず、新しいチャレンジができる広告メニューを開発していきたいです。

野村(FOD):多くの企業にCTV広告をぜひ試していただきたいです。「こういうことやってみたい」というご要望があれば、当社は協力できると思います。広告主の皆様が出稿しやすい広告商品を開発していきたいです。

矢部(TVer):最も注力すべきは、共通のメジャメントをつくることだと考えています。先日Adjustさんと直接連携し、TVerで配信するCTV広告の効果をAdjust上で計測できるようになりました。これからも広告主、広告会社、Adjustさんを含め全員にとってのベストを探ることに尽力したいです。

佐々(Adjust):当社ではCTV広告の事例をさらに蓄積して、知見を共有していきたいと思っています。ともにチャレンジしていただける広告主の方は、ぜひお声がけください。綾瀬さん、野村さん、矢部さん、本日は貴重なお話をありがとうございました。

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この記事の著者

MarkeZine編集部(マーケジンヘンシュウブ)

デジタルを中心とした広告/マーケティングの最新動向を発信する専門メディアの編集部です。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

和泉 ゆかり(イズミ ユカリ)

 IT企業にてWebマーケティング・人事業務に従事した後、独立。現在はビジネスパーソン向けの媒体で、ライティング・編集を手がける。得意領域は、テクノロジーや広告、働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

提供:adjust株式会社

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2023/09/27 10:30 https://markezine.jp/article/detail/43169