広告主のインハウス化が進む中、代理店が出せる価値
谷口(Adjust):続いてのテーマは「インハウス化の潮流における広告代理店の生存戦略」です。各社、どのように考えていますか?
荻田(Septeni America):広告代理店が生き残っていくためには、各広告主様の課題を先読みしてリソースを確保していくことが必要だと思います。おそらくこの先も様々な課題が出てくると思いますが、変化に応じた依頼のされ方が増えてくるでしょう。
また、広告主様やメディアパートナー様と良好な信頼関係を築いていくことも欠かせません。当社の場合、お客様のほとんどは既存の広告主様やパートナー様からのご紹介などでお声をかけていただいています。世界各国、ほぼそのような取引で成り立っています。「この会社と付き合うと安心」「安心して紹介できる」と思っていただけるような関係性をいかに築けるか。代理店が生き残っていける重要な策なのではないかと思っています。
田中(CyberZ):運用において、これまで代理店では、主に入札管理やターゲティング戦略で価値を出していた企業が多いと思います。しかし今、特にアプリではGoogleのアプリキャンペーンやMetaのASC(Advantage+ ショッピングキャンペーン)などの登場により自動化が進んでいる状況です。そのため従来のままでは代理店が価値を出すことは難しくなっていると感じています。
一方で、アドテクノロジーの進歩はすさまじく早く、これらの知見が現場に浸透しているかは別問題で、この技術革新と現場適応のギャップは年々開いている感覚があります。その差を埋めることが代理店の役割なのではないでしょうか。
そのため、私たちが意識していることは、市場の変化を逃さないこと。逃さないだけでなくその変化を自ら評価して、お客様の課題解決につながるようアジャストして提案することが重要だと考えています。
人材派遣も!広告代理店が考える、枠組みにとらわれない生存戦略
三浦(グリーアドバタイジング):グリーのゲームスタジオの場合、元々はスタジオ別でインハウス化を進めていました。先ほどお話した通り、アプリ市場はボラティリティが高いことから、事業が停滞したときの対応に課題がありました。その解決策の1つとして4、5年前に立ち上がったのがグループのハウスエージェンシーです。
具体的には、グリーアドバタイジングの人間をグリーグループの各スタジオにマーケターとして常駐。外部の広告主様にマーケティングコンサルタントとして提案するようにしています。この取り組みの良い点は、営業の視点を持ちつつ、プロダクトをどう高めていくのかといったマーケターの視点を持った提案ができることです。このように広告代理店でありながら人材派遣のようなビジネスも展開できるのではと思っています。
そして、広告出稿の話と離れますが、当社はサービスに対してマネタイズができるSSPや広告媒体を持っています。インハウスの企業様も広告の成果を出していけることが代理店の生存につながるのではないかと考えています。
岩本(オプト):人材派遣の話が出ましたが、マージンとは異なる形で、広告主様との付き合い方を進めている代理店さんは少なくないと感じますし、当社でも実際に人材を派遣しています。常駐でないものの、お客様のオフィスにいるというニーズは高いと思います。
広告代理店は、各分野のプロフェッショナル集団でもあります。エキスパートが培ってきた高い専門知識や豊富な経験、ツールを広告主様にインハウス化を進めるために使っていただくよう提案することも広告代理店の生存戦略の1つです。