誤解されがちなAI活用のメリット
伊佐:ボドナーさんは最近ブログ記事でもAIについて発信されていましたね。このブログ記事で伝えていた内容を改めて紹介いただけますか?
ボドナー:このブログ記事ではAIに対する誤解を取り上げました。多くの人はAIを「少ない時間で多くを成し遂げるための手段」だと誤解しているのです。それは確かに事実ですが、AIの本質的なメリットではないと私は考えています。単なる効率化やコスト削減、時間の節約にとどまらず、施策の効果向上やビジネスの成長をもたらすのがAIです。その点がまだ十分に理解されていないと感じます。
伊佐:なぜAIが施策の効果を向上したり、ビジネスの成長をもたらしたりするのでしょうか?
ボドナー:顧客についてわかっていることをすべて活用してAIモデルをトレーニングし、顧客の背景情報を十分に把握した上でコミュニケーションができるようになるからです。
伊佐:体験をそれぞれの顧客に合わせてカスタマイズし、最適化できるというわけですね。結果として施策の効果が高まると同時に、効率もアップします。AIを活用することで、顧客にさらに寄り添えるようになると。
ボドナー:そのとおりです。
調達プロセスにAIを導入した米ウォルマート
伊佐:汎用的な予測分析ツールに搭載されているAIもまた、データ分析を自動化し、適切な意思決定を支援してくれそうです。
ボドナー:もちろんです。AIには情報へのアクセシビリティーを高める効果があります。AIを搭載した予測分析ツールを使えば、顧客の業績や経営状態の分析情報が入手しやすくなるでしょう。データアナリストを採用して図表やグラフを作成してもらわなくても、AIツールに質問するだけで済むかもしれません。
しかしそれは、優秀なデータチームが不要だということではありません。必要なデータがすべて分析の型に適切に取り込まれているか、分析が適切に行われているかを確認する人員は依然として必要です。とは言え、社内の誰もが必要なデータにアクセスできるようになるため、データの可用性が大きく変わることは間違いないでしょう。
伊佐:AIがビジネスに与える影響として、ほかにどのようなことが考えられますか?
ボドナー:物品の購入方法への影響です。たとえば、世界最大規模のスーパーマーケットチェーン「ウォルマート」では、既に調達プロセスにAIを導入してコスト削減を図り、取引先との交渉を合理化しています。
また、投資の内容を検討する際にもAIは有用です。AIはROI(投資収益率)を計算するだけでなく、ROIモデルに基づいて「ビジネス開発担当者を3名と営業担当者を2名採用するよりも、営業担当者を6名採用することで成果を最大化できるでしょう」といったアドバイスを提供してくれます。企業で常に行われている戦略的な意思決定のプロセスにおいても、AIによるアドバイスが活用されるようになるでしょう。