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『MarkeZine』(雑誌)

第106号(2024年10月号)
特集「令和時代のシニアマーケティング」

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小さな会社、大きな仕掛け

幸福度の高いマーケティングを実践する「グレイトカンパニー」は何がすごいのか

「売上」と「幸せ」の相関関係

 私は20数年の社会人生活の中で、自身の会社を経営するのみならず、Web制作や広告代理事業、コンサルティングに携わるほか、社外取締役や顧問、エンジェル投資家、起業家専門のコーチとして、様々な企業のお手伝いをしてきた。

 M&Aの買われる側も買う側も経験し、現在は上場企業の経営者として役職を全うするために日々勤しんでいる。これまで延べ数百社の企業を中から見る機会に恵まれ、その数以上の創業者や社長を見てきた。売上規模が数億円に満たない企業もあれば、数千億円を超える企業もある。

 様々な企業や経営者との出会いを重ねる30代半ば、あることに気付いた。「売上(営業利益も時価総額も)」と「幸せ」はある時点まで相関関係にあるが、どこかの時点では明らかに相関しておらず、場合によっては逆相関している時さえあるのだ。なんなら後者の方が多い。

 たとえば、ノルマに追われる月末。メンバーが精一杯頑張ってノルマを達成した直後に、さらに厳しい翌月のノルマが降ってくる。その繰り返しによって現場は疲弊し、メンバーが離職する。欠員のしわ寄せがほかのメンバーに及ぶことは容易に想像ができるだろう。

売上が全てを癒すとは限らない

 経営者や数字に責任を持つ立場の人であれば、どこかの時点で「何のためにこれほど数字を追いかけているのか」と、ふと我に返ってしまうこともあるはずだ。「いつの間にか数字に追われ、大事なものを蔑ろにしていないか?」そんな風に考えたこともあるだろう。数字の引力は恐ろしい。

 このような場面を幾度も目の当たりにした経験から、私はある確信を得た。起業家や経営者の間でまことしやかに囁かれる「売上は全てを癒す」という格言は、半分本当で半分嘘である。正確には「売上が全てを癒すことも“たまに”ある」が、いつも売上が全てを癒すとは限らないのだ。

 売上、営業利益、時価総額などの数字はドーパミン(一過性の快感や多幸感を得る成分の意)的な効果が非常に高い一方で、オキシトシン(安らぎを感じる成分や、信頼感・共感が高まる成分の意)的な効果とは真逆のものである。このことはもっと知られるべきではないだろうか。ドーパミンは中毒性をともなうため、囚われ過ぎるとドーパミンに対して耐性が生まれ、より強い刺激を欲しがるようになってしまう。つまり、数字のラットレースから抜け出せなくなってしまうのだ。そのレースの行き着く先が幸福であるはずがない。

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ちょうど良い数字を出す幸福度の高い企業

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この記事の著者

阿部 圭司(アベ ケイジ)

アナグラム株式会社 代表取締役/フィードフォースグループ株式会社 取締役。大手アパレルメーカーを経て運用型広告の世界へ。リスティング広告やFacebook広告を筆頭とする運用型広告の領域が得意なマーケティング支援会社アナグラムを創業。その後、フィードフォースグループにグループジョイン後、現役職。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2023/09/19 09:30 https://markezine.jp/article/detail/43481

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