2023年、X(旧Twitter)事件簿
X(旧Twitter)では、これまでも仕様変更などにより度々離反の波が起きていましたが、2022年にイーロン・マスク氏がTwitterを買収して以降、これまで以上に劇的な変更が行われてきました。以下に主要なものをまとめてみます。
特にユーザーへの影響が大きかったのは、3月のホーム画面の変更と7月のAPI制限ではないでしょうか。ほぼすべてのユーザーに影響がある施策で、反響が非常に大きかったように記憶しています。
7月1日にAPI制限実施が行われ、それを受けたかのように、6日に登場したのがMeta社のThreads(スレッズ)です。Xと似た機能を持つ、今までにない有力な移行先が登場したと言えるでしょう。本記事を読まれている方も、とりあえずThreadsのアカウントを作ってみたという方が多いのではないでしょうか。
果たして、X離れは本当に起きているのか、Threadsへの移行は起こっているのか、どのような人が移行したのか、マクロミルが提供するアプリログデータ「A-cube」を基にして解析していきます(「A-cube」は、アプリの使用状況はもちろん、ユーザーの性年齢、居住地域などの属性も把握することができます)。
X離れは起こっているのか?
X離れを検証するために、Xの週次継続率を見てみます(図2)。
週次継続率の定義は、「ある週で使用したユーザーのうち、次の週も使い続けているユーザーの割合」です。離脱が多い場合、その週の数字が急激に下がることになります。
結論から言うと、離脱はほぼありませんでした。図を見れば3月や7月の数字が下がっていないことが読み取れますが、さらに細かく検証していきます。
まず、2023年3月11日のホーム表示のデフォルト化の影響です。
データの読み方の注意点ですが、3月11日にリリースされたからと言って、3月11日を含む週(3/6週)に急激な数字の低下は発生しません。機能のリリース後も数日間は、ログインが行われるため、離脱が発生するのはその機能を不快と感じるタイミングです。つまり翌週(3/13週)や翌々週(3/20週)に数字の低下が発生するはずです。3月のリリース前後の週次継続率は以下のようになっています(図3)。
新機能をリリースした3/6週と比較して、3/13週は+0.3%、3/20週は-0.2%の変動が発生しています。この1年間の平均週次継続率は93.5%で、標準偏差は0.98%です。この結果を解釈すると、3月の各週の継続率は珍しい変動量ではありませんし、3/20週の継続率を下がったと見なしても、3/13週からは-0.5%程度の変動でほぼ離脱がないと言えます。
次に、2023年7月のAPI制限の離脱影響も検証します。
API制限が実施されたのは、7月1日の夜で、Threadsのリリースは7月6日です。そのため、6/26週、7/3週にログインが行われ、離脱するかの意思決定が行われます。継続率の低下が発生するのは、早くて7/3週から、遅くとも7/10週からとなります。7月のリリース前後の週次継続率は以下のようになっています(図4)。
6/26週に比較して、7/3週は+0.2%、7/10週は+0.4%でした。つまり7月も、7/3週や7/10週に離脱は起きなかったと解釈できます。