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小さな会社、大きな仕掛け

10人中10人に買ってもらうことを目指して ひとりECの「ミウラタクヤ商店」に商いの原点を学ぶ

 「ひとりEC」と呼ばれるカテゴリーがある。サイト制作、広告の運用、配送手続き、コミュニティの運営、メルマガ作成、問い合わせへの即レス対応など、様々なテクノロジーやサービスを駆使しながら、文字どおり組織化することなく、たったひとりでECサイトの運営を行うのだ。ひとりだからと言って侮ることなかれ。ひとりECという言葉の生みの親であり、その代表格とも言える「ミウラタクヤ商店」は、ダイエット研究家の三浦卓也さんが「社会の脂肪を減らす」をコンセプトに掲げ、チャコールバターコーヒーやプロテインなどのダイエット食品を販売している。売上は年間数億円にも到達する勢いだ。同商店の取り組みはひとりECの実践者のみならず、多くのマーケターの参考になるだろう。

大手メーカーが行かない道に商機を見出した

「これまで働いてきたいくつかの会社を通して、マネジメントという仕事があまり好きになれず、得意でもないなと感じました。『40歳くらいまではひとりでやってみよう』と決断して起業した経緯です」(三浦)

ミウラタクヤ商店 店長 三浦卓也さん
ミウラタクヤ商店 店長 三浦卓也さん

 現代の仕事の悩みの多くがマネジメントにあると言っても過言ではないだろう。マネジメントにどう向き合うかで仕事の方向性や報酬は変わってくるわけだが、三浦さんが当時取った選択肢は「マネジメントを切り捨てる」という極端なものだった。

「『ひとりで起業した』と言えば聞こえは良いですが、マネジメントに向かない絶望の中で取った選択肢の一つが起業だったに過ぎません。いわゆる消去法です。特に『これがやりたい』と思って起業しているわけではないため、最初は個人事業主の延長で受託業務をメインに請け負っていました。様々な会社に営業メールを送り、Web制作やデザインなどの仕事を安い価格で引き受け、日銭を稼ぎながら暮らしていたのです」(三浦)

 そんな自転車操業のような日々を繰り返すうちに、三浦さんが元々知見を持っていた健康食品関連の仕事が増えてきた。そこで健康食品特有の問題を垣間見ることになる。たとえばユーザーがSNSで特定の健康商品に言及していても、メーカーはユーザーに返信することができない。なぜなら言及の大半が苦情であるためだ。三浦さんはそこに商機を見出した。

 先に述べた理由を踏まえると、資本の潤沢な大手健康食品メーカーが今後積極的にSNSを使いながらユーザーとコミュニケーションを取るとは考えられない。もしできたとしても、属人的なアカウント運用や自社商品への微妙な言及に反応することは難しいだろう。

 しかし、SNSが消費者の意思決定を促す接点であることは当時から火を見るよりも明らかだった。「SNS上の言及に対して公式アカウントで即反応・即返信できるような自信のある商品をつくって販売し、ユーザーの不満やニーズを汲むことができれば、絶対に上手くいく」という確信を得た三浦さんは、自身のダイエット成功体験からダイエット食品の販売を始めたのだ。

購買促進の鍵は即レス&ウェットなやりとり

 ミウラタクヤ商店のコミュニケーションは実にウェットだ。顧客からの問い合わせは原則LINEで受け付け、質問を受け取った場合は1営業日以内に返信している。いや、1営業日という言い方は正確ではない。基本、即レスなのだ。ECサイトの問い合わせ対応で即レスなどほとんど聞いたことがない。どこの企業も予防線を張り「●営業日以内の返信」とするのがセオリーだろう。

「ユーザーが質問をしてくるときが最もホットな瞬間なんですよね。可能な限り即レスをすることにより、早い段階で悩みを解消してあげたいんです」(三浦)

 即レスを始めたきっかけは、Instagramの公式アカウントに届いた非会員からのDMだった。ダイエットの悩みをつづったDMに対して、三浦さんは真摯に返信を続けた。すると、自社商品のアピールや説明などしていないにもかかわらず、その非会員がミウラタクヤ商店の商品を購入したのだ。

 それまで数多くの広告を打ち、LPを細かく調整し、様々な施策を展開しながら「どうすれば自社商品を購入してもらえるか」と頭を悩ませてきたが、DMに真摯な返信を続けただけで即座に商品が売れてしまった。このとき三浦さんは、何かがつながる感覚を覚えたという。

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この記事の著者

阿部 圭司(アベ ケイジ)

アナグラム株式会社 代表取締役/フィードフォースグループ株式会社 取締役。大手アパレルメーカーを経て運用型広告の世界へ。リスティング広告やFacebook広告を筆頭とする運用型広告の領域が得意なマーケティング支援会社アナグラムを創業。その後、フィードフォースグループにグループジョイン後、現役職。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2024/05/29 12:14 https://markezine.jp/article/detail/43680

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