BtoB広告領域に力を入れているLINEヤフー
根口:BtoB企業の多くは、新型コロナウイルス5類移行後も「顧客接点のデジタル化を継続強化していく」と指針を示しています。今回はLINEヤフーでBtoB企業の広告主を担当する部門に所属されている小渕さんと坂本さんに、その理由や事例を共有いただきます。加えて今後のBtoB広告およびマーケティング施策についてディスカッションできればと思います。まずは自己紹介をお願いできますか。
小渕:入社当初はBtoBのマーケティング部門に所属しており、広告主としてデジタル広告に関わっていました。その後、広告営業部門に異動し、現在は多岐にわたる業種の企業様を担当する部署の部門長をしております。
坂本:広告マーケティングに15年ほど携わっています。スタートは広告代理店で、その後ヤフー(現:LINEヤフー)に転職。10年ほどマーケティング部を経験した後、SaaS系の事業会社に移り、MAやCRMなどBtoBマーケティングに携わりました。2023年1月に改めてヤフーに戻り、主にBtoB企業の広告主様を担当しています。
LINEヤフーがBtoB広告に力を入れる理由
根口: LINEヤフーは、現在BtoB企業の広告市場をどう捉えているのでしょうか。BtoB広告領域に力を入れる背景を教えてください。
小渕:コロナ禍以降、BtoB関連キーワードの検索数やBtoB企業のデジタル広告予算額が増えました。当社内の検索データなどを見ても、各企業の業務プロセスがデジタル化する中でSaaSを中心にBtoB広告領域の動きは活発化してきています。
これにあたり当社では2023年4月に、BtoBの専属チームが発足。その担当が同席している坂本のチームです。チームが設立して半年ほどですが、当社の売り上げ状況を見ても2桁成長の市場規模となっており、着実に拡大しています。それをけん引しているのが、ディスプレイ広告の領域です。
根口:LINEヤフーから見た、BtoB企業の特徴を伺えますか。
小渕:BtoBのクライアント様は、広告の成果や効果を非常に厳しく求められる印象です。そのため、ディスプレイ広告に踏み切れないシーンが多々あります。
ただBtoBで検索連動型広告を出稿する場合、BtoC以上に検索数には限りがある状態です。LINEヤフーとしてBtoB企業の成果の最大化を支援する上で、ディスプレイ広告領域のテコ入れは必須だと考えていました。それを踏まえ、ディスプレイ広告を軸としたメニュー開発を進めました。
ディスプレイ広告に市場拡大の糸口!LINEヤフーの取り組みとは
根口:メディックスでは年間200社近くBtoB企業のマーケティングを支援していますが、当社が支援するBtoB企業様を例に挙げると、LINEヤフーさんが提供されているような運用型広告の予算総額を10とした場合、検索広告が8ほどでディスプレイ広告は2ほど、という現状です。私たちもLINEヤフーさん同様に、ディスプレイ領域の伸びしろは大いに感じています。
貴社では具体的にどのような支援を行っているのでしょうか。
坂本:主にデータの拡充に力を入れています。従来、当社で活用できるデータとしては、法人向けデータベースマーケティングを支援するユーソナー社保有の企業データ・IPアドレスやYahoo!ショッピングを開設している店子(たなこ)さんのデータなどです。これらを連携した、Yahoo!広告のBtoB向けディスプレイ広告メニューである「ビジネスターゲティング」を提供しています。
加えて、2023年4月からSansan社が保有する名刺アプリ「Eight」ユーザーのデータ連携を開始。従前の業種・従業員規模に加えて、部署や役職といったBtoBマーケティングにおいて非常に重要な要素でも、ターゲティングが可能になりました。
AI技術を使い拡張してターゲティングしており、従業員数1,000人未満の企業の役職者であれば、約100万人にリーチできます。
根口:Eightの広告サービス(Eight Marketing Solutions)は当社もBtoBクライアント様にご提案する機会が多かったのですが、2023年7月31日でサービスを終了してしまいました。Yahoo! JAPANという使い慣れたプラットフォームで同様のターゲティング条件が使えるのは魅力的ですね。Yahoo!広告のビジネスターゲティングの強みはどこにあるとお考えですか。
坂本:元々、有効リード率や商談化率の高さは評価いただいておりましたが、Eightのユーザーデータを活用することでより高品質なターゲティングが可能になります。
小渕:加えて、ブランドセーフティの観点もありますね。同じようにターゲティングして出稿できるDSPはどこに広告が掲載されるかわかりません。一方、Yahoo!広告であればYahoo! JAPANや、厳正な審査を経て契約を締結しているパートナーメディアに広告が掲載されるため、安心して出稿できることも強みだと考えています。もちろん、リードの質も高まるでしょう。
CVの先を見据えた、ビジネスターゲティングの活用事例
根口:BtoBの場合、媒体コンバージョンベースで評価するのではなく、施策が商談や受注につながっているかまで把握した上で評価すべきだと考えます。その観点で、ビジネスターゲティングの効果はいかがですか?
坂本:実際の事例をもとにご紹介できればと思います。まず1つ目は、サーバーを訴求している企業様向けに部署/役職ターゲティングを活用した事例です。
その企業様では法人、その中でも決裁権のある役職者を販売対象としています。最初は、検索ワードを活用したサーチターゲティングをご利用いただいていましたが、サーバー導入にあたって社名で検索する人は限られており、広告の十分な表示回数を得られないことが課題でした。
そこで、従業員規模データと部署/役職データのターゲティングを実施。十分な表示回数を得られたことに加えて、決裁権のある部署の役職者との商談数が増えた点をクライアント様にご評価いただき、月のご出稿金額を50万円から500万円まで拡大していただきました。
ターゲットの見直しで、商談単価を3分の1まで改善
根口:別の事例も伺えますか?
坂本:2つ目は、LBC(法人企業データベース)と名刺アプリ「Eight」のユーザーのデータを掛け合わせてターゲティングを見直したことで、商談単価が改善した会計SaaS企業の事例です。そこではThe Model型の営業プロセスを採用しており、マーケティング部門が獲得したリードのうち従業員数が一定以上の企業に対して、営業がアプローチする形を取っていました。
元々は従業員数10~1,000人の企業の役職者をターゲットにしていましたが、2023年10月のインボイス制度が施行される直前で個人事業主からのお問い合わせが激増。しかし個人事業主はこの企業にとってターゲット外だったために、有効リード率や商談化率が低下するという状況に陥りました。
根口:貴社ではどのように改善したのでしょうか。
坂本:ビジネスターゲティングで、ターゲットを従業員数100人以上の企業の役職者に変更しました。その結果、媒体CPAは1.4倍まで上がりましたが、その先の有効リード率は1.6倍、商談化率は2.4倍も向上。最終的な商談単価は3分の1に改善できました。
根口:一般的に、ディスプレイ広告は検索連動型広告と比べ、媒体CPAが高くなりがちです。そのためディスプレイ広告の配信強化に二の足を踏む企業も多いのですが、媒体CPAで評価するのではなく商談単価や受注単価が見合っていれば、推進していくほうが良いですよね。
そのためには、広告経由のコンバージョンがきちんとフィールドセールスに引き渡されたのか、その後どうなったのかまでトラッキングできる仕組みの構築や、広告コンバージョン経由の商談化率・受注率の可視化といったパイプライン管理の重要性を当社では長らく啓発し続けています。
LINEヤフーの目指す、BtoB広告の革新とは?
根口:最後に、BtoB広告領域における今後の展望をお聞かせください。
小渕:LINEヤフーでは、今後もBtoB広告領域でのサービス開発・ブラッシュアップを進めていき、クライアント様の成果につながる媒体を目指していきます。特に強化したいポイントは3点あります。
1点目は、1stパーティデータの活用拡大です。個人情報に関する意識が高まる中で、ユーザーに配慮しながらクライアント様がデータを安心して使える環境を提供することはもちろん、クライアント様側が持っているデータと当社が持つデータを掛け合わせ、最大限の成果改善に向けて支援していきます。
2点目は、ディスプレイ広告の予算の拡大。Yahoo!広告のビジネスターゲティングは、獲得目的だけではなく認知目的の部分でも活用が可能だと考えています。検索エンジンを持つ当社ならではのデータを掛け合わせれば、効果指標の分析や最終的な商談化率の改善にも有効です。最適化の観点では様々な活用の幅があり、こういった取り組みも含めて拡大していきたいです。
3点目は、データ環境の構築です。ヤフーとLINEは2023年10月1日に一つの会社に統合し、「LINEヤフー株式会社」として新たに業務を開始しました。これにともない、今後はYahoo!広告だけでなくLINE広告も提供していきます。よりデータを活用しやすい環境を構築し、データの有効性を活かしてクライアント様の事業に貢献できればと考えています。
根口:私たちもクライアント様の売り上げに寄り添い、本当の意味で事業に貢献するマーケティング活動を目指したいです。本日はありがとうございました。
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