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小さな会社、大きな仕掛け

年間広告費は2.5億円!異端の歯科医院が看板広告を制するまでの波乱万丈ストーリー【前編】

安定経営の最中に相次ぐ予約キャンセル

 その後は地域新聞社などとの交渉を経て、VHSの広告で出稿を再開できることになった。加えてイエローページの一面広告や東京23区内の地域新聞広告、SEOなど、身近な媒体でプロモーションの試行錯誤を重ね、マーケティングを成熟させることで売上を順調に伸ばし続けた。この頃で既に年商8億円を超えていたというから驚きだ。

 看板に関しては、創業時期に西八王子駅中で1ヵ所、2000年頃から八王子インターチェンジの出口に1ヵ所(インプラントのビフォーアフターを載せた両面看板)と、その向かい側の1ヵ所に出稿していたが、効果のほどは全くわからなったという。

 きぬた歯科が看板に注力し始めたのは2012年だが、そこには大きなきっかけがあった。

「年商8億円ほどの経営状態がしばらく続き、安定していた2012年の年初でした。NHKの『クローズアップ現代』で『歯科インプラント トラブル急増の理由』という特集が放送されました。すると翌日からキャンセルが相次ぎ、客足が急激に遠のいたんです。これには参りました。これほど暇になることなんて創業以来ありませんでしたから」(きぬた)

 売上8億円規模で施設を拡大していたきぬた歯科。単純計算で、通常の歯科医院の16倍近い固定費がかかると想像してほしい。そんな折に手の施しようがないほど相次ぐ予約のキャンセル。人生最大のピンチかと思いきや、この出来事がきぬた歯科大躍進のきっかけになる。

1,200万円を投じたSEOと75万円の看板は効果が同じ

 歯科医院があまりに暇になってしまったため、きぬた先生はこれまでおざなりにしていたマーケティング施策の効果計測を試みたのだ。アンケートの回答結果など、顧客データをしっかりと取得・保存していたことが功を奏した。

 効果を可視化してわかったことがある。年間1,200万円をかけていたSEOと、年間75万円で八王子インターチェンジに出していた看板広告の費用対効果がほぼ同じだったのだ。多くの顧客はたった3枚の看板をきっかけにきぬた歯科を思い出し、来店していた。この事実を目の当たりにしたとき、きぬた先生にはインプラント事業の可能性を発見したとき以来の衝撃が走った。顔面こそ硬直しなかったものの、全く同じ興奮を覚えて夜も眠れなかったという。

「今思えば、計測を始める前から看板の費用対効果を示す予兆はありました。当時の八王子インターチェンジに掲出していた、インプラントを入れる前と入れた後の歯茎の画像を載せた看板に、定期的に苦情が寄せられていたからです。苦情が来るということは、それだけ意識して見られているということですよね。忙しさにかまけて広告の費用対効果を測ることから逃げていました」(きぬた)

後編に続く

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この記事の著者

阿部 圭司(アベ ケイジ)

アナグラム株式会社 代表取締役/フィードフォースグループ株式会社 取締役。大手アパレルメーカーを経て運用型広告の世界へ。リスティング広告やFacebook広告を筆頭とする運用型広告の領域が得意なマーケティング支援会社アナグラムを創業。その後、フィードフォースグループにグループジョイン後、現役職。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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2024/05/29 12:14 https://markezine.jp/article/detail/43908

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