サブスク事業の損益分岐点は「今の3倍課金」
サービス対価の安さに甘んじているヒントは、タクシーの配車アプリにも見える。たとえば、「GO」で配車を利用するとき、アプリ手数料(GOの手配料収入)として迎車料金に一律100円がプラスされている。月額のサブスク課金ではなく都度100円でユーザーから協力金を徴収できるのは、カルチャーとしては新しい。が、安すぎる。Uber Taxiにおいても、日本では2023年2月から100円(固定)増しの施策が実施されている。Uber米国では売上総額の20〜25%がアプリ手数料と言われており、日本の「100円コイン、一律課金」は、異次元の低価格・拡販プロモーション状態のままだ。
あまりにも安かったサブスクサービスが「不便の解消」「生活必需」として社会インフラに昇華される場合、おおむね現行の「3倍額」の手数料を払ってでも利用を継続したいと思われるビジネスを提供できるか否かが分岐点になる。タクシー配車アプリなら1回300円でも600円でも使いたいと思ってもらえるかどうかが、本来の損益分岐点であり、これが「山の5合目」だ。
もとより、事業者側と利用者側が「互いに負担する基本コスト」は、事業者側が下になって利用者側に媚びるような不釣り合いの関係ではなく、対等な経済・心理均衡に向かう。むしろ、利用者が「便利・楽ちんになるならば」と喜んでコストを負担するような状態を提供したい。水平リーチでアカウントを増やそうと走り続けるだけでは、損益分岐点はどこまで追いかけても上へ上へと逃げていく。
値上げトレンドの「ま逆」をゆく、あの企業
Amazon PrimeやUberの例のように、グローバルには日本の3倍の課金でもサブスク解約しないユーザーが存在する。その利益貯金からの切り崩しで世界のビジネスを成り立たせているモデルだ。日本でのAmazon PrimeやUberの低価格は、じわじわと上昇調整されるモデルとしよう。
そのトレンドのま逆で、サービス価格をじわじわ「減額」し続けている企業もある。「Tesla」だ。車体販売はどんどん値下げされているのは周知。Tesla車体は月額リース・サブスクとも考えられ、自動運転技術の実装(サブスク)も始まっている。バッテリー急速充電所の規格集約(Ford、Mercedes、GM、日産、ホンダなど)が進めばさらに安くなる道まで見える。クルマ単体のサブスクだけでなく、Starlinkの衛星通信のサブスク環境もTeslaに垂直でつながってくることを考えれば、見えていない向こう側に何やら様相の異なる分岐点が潜んでいそうだ。
