出るだけで満足してしまう研修となってしまう二つの要因
第一回では、デジマ人材育成の研修をするはずが、その主旨が「ズレ」てしまう実態とそれを防ぐ方法についてお伝えしました。今回は、研修に参加するだけで満足してしまう「学んで満足症候群」の問題に焦点を当て、それを回避するための「100回の小成功体験」の重要性について解説します。
まず、「学んで満足症候群」に陥ってしまう要因には大きく二つが考えられます。
1.リモートワークとコミュニケーションの難しさ
リモートワークの定着により、社内でのコミュニケーションが希薄になる傾向があります。以前であれば、研修後に同僚と会話する中で、学んだ知識などを実務に活かすための気づきの場などがありました。しかし、リモートワークの環境下では、そのような場が限られてしまい、学びの成果を実務に取り入れる機会が減少しています。
2.リカレント教育やリスキリング(学び直し)の流行
昨今、「リカレント教育」「リスキリング」などに注目が集まるようになってから、多くの企業で「自社でもリカレント教育などに取り組まなければ」と考える企業が増えました。しかし、それでただ研修を設計しただけでは当然実務に役立つような研修にはなりません。こうなってしまうと研修はただ社員のロイヤルティを高めるだけになってしまいます。
レポートをただ書くだけ 「学んで満足症候群」の事例
「学んで満足症候群」にメンバーが陥ってしまうと、研修を行っても成果につながらない現象が生まれてしまいます。ここでは、実際に見られた失敗事例を紹介します。
事例1.流行りのテーマの研修に出て学んだ気になってしまう
現在、デジマに関するセミナーが毎日のようにあらゆる場所で開かれています。デジマ戦略セミナー、デザイン思考研修、DX研修などは、現在流行しているテーマということもあり、興味本位でこれらの研修やセミナーを受講する社員も多くいます。しかし、受講後は学んだ気になりモチベーションが一時的に上がるものの、実務には一切結びかないケースが散見されます。まさに、これは「学んで満足症候群」の典型例です。
事例2.高額な費用をかけるあまりレポートを書かせることに疲弊してしまう
研修に潤沢な費用をかけられる大企業などでは、一人あたり100万円以上の費用をかけて、海外カンファレンスの視察のために社員を派遣するケースもあります。当然、研修に行かせたからには帰国後、参加者にレポートを書かせ、経営層に向けて発表させるといったことも多いでしょう。
その際、レポートの執筆が負荷の重い業務となり、書くほうも書かせるほうも疲弊するケースが見られます。このように、レポートを書かせるだけで力尽きてしまうことも「学んで満足症候群」の典型例です。