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『MarkeZine』(雑誌)

第106号(2024年10月号)
特集「令和時代のシニアマーケティング」

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ドワンゴが展開する、カルチャードリブンなマーケティングソリューション(AD)

サブカルを軸にクリエイター×Hondaが共創!Hondaがドワンゴと仕掛けた新しいプロモーションの形

 顧客の年齢層が高まる企業・商材において、若年層への接点・コミュニケーションを強化・洗練させることは差別化戦略としても非常に重要だ。しかし、いかにして若年層に刺さる企画にしていくのかは悩みどころでもある。本記事では、本田技研工業株式会社(以下、Honda)と株式会社ドワンゴが行ったクリエイティブ制作に加え、モータースポーツを若年層へとプロモーション展開していった裏側をキーマン2名に聞いた。

若年層へのアプローチを目的に、ドワンゴと意見交換

MarkeZine編集部(以下、MZ):今回はHondaさんが行った、若年層向けのプロモーション事例について伺います。当時、どのような業務やミッションを担っていらっしゃったのか、お話しください。

稲野:私はHondaのモータースポーツ部にて、F1のプロモーションなどを担当していました。モータースポーツに挑戦するHondaを世界中のファンに届けるだけでなく、モータースポーツをまだ見たことのない人にも魅力を届けられないかを考え、そのプロモーション効果の最大化を図る部署にいました。

 2021年シーズン、Hondaは「チャレンジの最高峰」であるF1という場所で、技術者達が勝利にこだわり研さんを積み、世界で競いながら成長していくという大変チャレンジングな取り組みをしていたと感じています。現在は、モータースポーツだけではなく、特にHondaが持つ発信施設や体験を軸にコーポレートとしてのプロモーションを担当しています。

本田技研工業株式会社 コーポレート戦略本部<br />コーポレートコミュニケーション統括部コーポレートプロモーション部<br />UX企画課 チーフ 稲野貴文氏
本田技研工業株式会社 コーポレート戦略本部
コーポレートコミュニケーション統括部コーポレートプロモーション部
UX企画課 チーフ 稲野貴文氏

大滝:私はドワンゴの企画営業部で、ニコニコ動画やニコニコ生放送を活用したプロモーションを軸に動いております。今回の「走れ、誰も追いつけない速度で」プロジェクトのような、クリエイティブ制作やクリエイターを起用したコンテンツ制作なども、企画立案から実行までワンストップで手掛けております。

MZ:同プロジェクト立ち上げのきっかけをお話しください。

稲野:前提として、当時日本人最年少のF1ドライバーであった角田裕毅選手の初シーズンに向けて、我々は彼の背中を押し、世界への挑戦を応援するという立場でした。Hondaは挑戦という言葉をとても大切にしており、企業として挑戦を続けることはもちろん「挑戦する人を応援したい」とも常々考えています。角田選手の挑戦を契機にして、角田選手と同年代の若い人たちが、夢を持つことの素敵さ、夢を持つことでわくわくドキドキする気持ちを知ってほしいと思っていました。

 もう1つ、一部調査によるとモータースポーツが好きな方のボリュームゾーンが45~54歳とあり、社内では常にモータースポーツ領域における若年層へのリーチについて課題を抱えていました。当時はコロナ禍ということもあり、自粛生活中の若年層の過ごし方を調査したところ、多くの時間を動画視聴、特に音楽やアニメに時間を使っていることが見て取れました。そこで、過去に「初音ミク」を起用したiPhone向けアプリを共同開発した縁もあり、若年層領域のコンテンツに強いドワンゴさんと意見交換をさせていただきました。

「今、ボカロ?」の疑念を覆した、若者の“現場”の声

MZ:Hondaさんの課題や要望に対し、ドワンゴさんはどのような提案を行ったのでしょうか。

大滝:ご提案としては、まずボカロのクリエイターを活用して、オリジナル楽曲を制作します。加えて、角田選手をはじめとする若い世代で挑戦している人たちにインタビューを行い、楽曲とともにその挑戦の模様やメッセージを伝えていくという内容でした。

 私自身、F1が大好きでよく見ているのですが、肌感覚として同年代含めて私より若い世代では見ている人は少ないなという感覚があったので、それを何らかのパワーで惹きつけることがしたいと考えました。そういった思いを持ちつつ、Hondaさんの大切にしている「音」にこだわった企画で熱烈ラブコールしました。

MZ:Hondaさんは、提案をどのように思いましたか。

稲野:率直に「今、ボカロなのか?」と思いましたね(笑)

 僕自身、若い時にニコニコ動画やボーカロイドの文化にハマってきた人間だったのですが、ボカロは隆盛を終えた文化なのではないかと。大滝さんから、「最近のソシャゲでもボカロの曲が使われていて、好事例がたくさんあります」と話を聞いても、当初は信じられませんでした。

 ただ、僕は「現場・現物・現実」を意味するHondaの三現主義という考え方に基づいて施策を進めたいと思い、まさに今、夢を追いかける若い方たちがいる声優学校に入学してみることにしました。そして、本気で声優になるという夢を追いかけている18歳~21歳くらいの若い人たちに、授業後に色々聞いてみました。すると、意外と「このボカロPが好き」という会話が出てくるのです。

 他にも休日にカラオケに行って「20代人気楽曲ランキング」を確認してみると、なんと上位10曲中7曲くらいがボカロ関連の曲。カラオケのランキングはネット上の人気ランキングとは違い「歌えるほどに聞き込んだ曲」になるので、これは自分の認識を改めなければと感じ、企画に可能性があると思いました。

MZ:今回はコンペ形式を取られていたとのことですが、何が決め手となりましたか。

稲野:他社さんのご提案も、若年層向けのインタラクティブな内容ではありました。しかしどうしても、僕ら上の世代が考えた“若年層にはこれが刺さるだろう”という印象がぬぐえませんでした。

 今回はとにかく届けたい人達にメッセージを届ける事が第一。Hondaの名前を出すことにこだわっていなかったこともあり、ボカロPやクリエイターさんなどと共創して、若者をまきこんだ形にすることに惹かれました。そこで企業からの押し付けにならない形を提案していただいたドワンゴさんに決めました。

話題のスパイクを生み続けるプロモーション戦略

MZ:具体的にどのように形にし、展開していったのでしょうか。

大滝:今回の基軸は、ファンに喜んでいただく中でムーブメントを作ることにあったので、若い世代のフォロワーが多く、受け入れられているクリエイターさんたちを軸に考えました。先に作曲家を選び、その後に歌い手とイラストレーター、映像クリエイターを並行して選定。できた楽曲と歌をミックスするサウンドエンジニアをアサインしていきました。

 その後、F1ドライバーの角田選手をはじめ、声優、eスポーツプレーヤー、VTuberなどの方にインタビューをして、夢への挑戦と、今頑張っている人に対するメッセージ動画を作りました。

株式会社ドワンゴ 企画営業部 大滝惇平氏
株式会社ドワンゴ 企画営業部 大滝惇平氏

大滝:プロモーションはどうしても、最初に1つスパイクがあって終わってしまうものが多いです。しかし今回は角田選手がレースに出ている間はずっとプロモーションを続けたいと思っていました。

 そこでまず「応援楽曲を発表します」とティザーを作成・公開し、その後に応援楽曲を配信。広くプロジェクト内容を知ってもらった上で、楽曲に乗せ、インフルエンサーの方の夢を語るインタビューが2週間ごとにアップされるように、スパイクを生み続ける仕組みを意識しました。

「走れ、誰も追いつけない速度で」プロジェクト
「走れ、誰も追いつけない速度で」プロジェクトのTOPページ。
息の長いコンテンツにするためHondaのコーポレートサイトへの掲載を直接打診しに行ったという。「今までにないTOPページのデザインにしたことも含め、前代未聞の取り組みでした」と稲野氏は振り返る。

MZ:クリエイティブが制作されるにあたり、気を付けたことはありますか。

稲野:今の若い人たちの胸を打ち、心を掬ってくれるようなキャスティングをしたいと思っていて、大滝さんにはかなり色々なオーダーをしましたよね。フォロワー数のような数字も大事ですが、時節柄、暗い話題が多い時期でしたので、明るく楽しく夢を語ってくださる方々にお声かけをさせていただきました。クリエイティブもスクラップ・アンド・ビルドを繰り返し、最終的にLP、SNSのカスタマージャーニー設計やコピーなどは自身達で書くほどに膝を詰めて話しました。

 工夫した点は、インフルエンサーのインタビュー動画の最後に、次回予告を入れること。そうすると、「次回はあの人だ」とバトンを渡す人と、渡される人の間にどういった意味があるのかと、若い方々が考察してくださることで、期待感とともに話題にし続けていただけました。

 また、SNS上だけだと新しく作ったクリエイティブと企画の趣旨が少しずつ乖離していってしまうのではないかと考えました。そこで社内を説得して、特別にHondaのホームページへ、今回のプロジェクトページを入れてもらいました。これにより、いつでも企画の趣旨や全体像を確認できるとともに、過去の動画や楽曲も楽しめるようにしました。

カルチャードリブンで、若い世代にF1ムーブメントを起こせた

MZ:同取り組みの手ごたえを教えてください

稲野:ボカロ楽曲やeSports、Vtuberの方など、製品とは少し離れて見える文脈のインフルエンサーの方々の起用により、通常X(当時Twitter)で投稿すると500いいね程度だったところが、平均で5~6,000いいねがついていましたし、2021年の年間インプレッションの中でもトップクラスのプロジェクトの投稿となりました。クリエイターさん側でも発信をしていただいていたので、数字で見える以上の方々から反響をいただいたと考えています。

 コメントを見ていても、「角田選手初めて知ったけれど、応援したくなりました」「Hondaが若者向けに頑張っている」と、ポジティブな反応を数多くいただけました。

MZ:実施をふまえての社内外の声はいかがでしたか。

稲野:社内番組で取り上げてもらったほか、グループ会社や他部署から「アニメやVTuberを使ったコンテンツを作りたいのでアドバイスが欲しい」と相談をいただくケースが増えました。

 振り返るとデータや数値ドリブンというよりは、徹底的にカルチャードリブンでドワンゴさんと一緒に考え抜いたプロジェクトだったと思います。メッセージを届けたい人の声を実際に聞いて、リアルタイムでクリエイティブを作り替えていく。比較的長期のプロモーションにもかかわらず、飽きられずに話題にあがるなど一定の反応を得られ続けたところは大きかったです。

 また、このシーズンのF1でRed Bull Racing Honda(レッドブル・レーシング・ホンダ)がHondaとしては30年ぶりとなる優勝を果たしました。その反響を見る中でも、若い世代にもF1が届けられた実感がわきましたね。

受け手が、次の受け手になる。UGCの強いカルチャー

MZ:改めて、サブカルチャーとクリエイティブ制作についてどのようにお考えでしょうか。

稲野:僕は今回、サブカルチャー領域を勉強し直した中で、とても可能性のあるマーケットだなと認識を改めました。クリエイター側がより深くテーマや企業の姿勢を解釈し、音楽などのクリエイティブで表現するムーブメントは素敵だと思います。同時に、そのクリエイティブに触発されて、ものすごい量のUGCが生まれてきました。

 クリエイティブやコンテンツに触れた人が自分たちの言葉で発信したり、歌ってみたり、踊ってみたり、振り付けをつくってみたり。受け手が次の受け手になり、つながっていくことで、元々知らなかった人たちの目にもとまり、興味を持っていただける。非常にいい文化だなと感じます。

大滝:サブカルチャーは、もはやメインカルチャーだと言っていいのではないかと思います。今の若い世代はそれが当たり前な世界で生きていますから。従来のクリエイティブだと、権利関係などで2次創作なんてありえなかったのですが、クリエイターとの共創により、色々なところに拡散される可能性を秘めています。

ユーザーの声を聞きPDCAを回す、三現主義のプロモーションを

MZ:今後の展望や展開について、お話しください。

稲野:「走れ、誰も追いつけない速度で」プロジェクトを通して、改めて三現主義の重要性に立ち返りました。長期のプロモーションだったので、たとえば学生たちから若者の生の声を聞き、公開後すぐにコンテンツについてフィードバックをもらい、2週間後に配信する次のコンテンツに生かしていくような形で進めました。ユーザーの声を聞きながら、走りながら考え展開していくことは、理にかなっているとも感じたので、他のケースでもPDCAを回してみたいです。

大滝:F1人気が高まっていったらうれしいです。特に、Honda さんは2026年にF1再参戦が控えていらっしゃるので、このプロジェクトで作ったものがレガシーとして残り、これからのF1の盛り上がりにも何らか寄与することを願っています。またどこかで再タッグができたらうれしいです。

本記事に興味を持っていただいた企業様へ

 本記事を通して、少しでも興味を持ってくださった企業様はお気軽にお問い合わせください。記事内で語りきれなかった、サブカルを活用した広告の魅力やマーケティング事例もご紹介いたします。

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この記事の著者

落合 真彩(オチアイ マアヤ)

教育系企業を経て、2016年よりフリーランスのライターに。Webメディアから紙書籍まで媒体問わず、マーケティング、広報、テクノロジー、経営者インタビューなど、ビジネス領域を中心に幅広く執筆。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

提供:株式会社ドワンゴ

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2023/12/01 10:30 https://markezine.jp/article/detail/44001