スモールビジネス中心にデジタルでアプローチ
MarkeZine編集部(以下、MZ):現在、弥生が提供しているサービスとメインターゲットについて教えてください。
羽生:弥生では会計ソフトの「弥生会計」、確定申告ソフトの「やよいの青色申告」などをクラウドとデスクトップで提供しています。また、最近では給与計算ソフトの「弥生給与 Next」や「やよいの給与明細 Next」の提供も開始しており、起業直後から事業成長中のお客様まで、様々な業務のデジタル化をサポートしています。
製品群の主なターゲットとしては、スモールビジネスと呼ばれる個人事業主やフリーランス、小規模事業者です。
MZ:どのようなマーケティング施策を行っているかも教えてください。
羽生:お客様が会計ソフトなどを探す際に、情報収集の中心となるのがインターネットです。デジタル上での接点を広げ、利用者を拡大するためにデジタル広告に注力しています。
中でも、ディスプレイ広告や検索広告を中心に出稿しています。また、昨今はSNS広告やブランディング目的のWebCMの活用も進めています。
MZ:ブランディング目的のWebCMも出稿しているとのことですが、ブランディング目的の施策も増えているのでしょうか。
内藤:2022年頃から、ブランディングに関するプロジェクトをスタートしました。テレビCMや大規模なPRイベントなどは実施できていませんが、インボイス制度に関連したWebCMを出稿しました。それを足掛かりに、スケールやパターンを増やしていく予定です。
MZ:デジタル広告が中心とのことですが、その中でYahoo!広告はどのような役割を担っていますか。
羽生:先ほどお話しした通り、ターゲットの方たちはインターネットで情報収集してどのソフトを導入するか検討します。検索にヤフーを使われているケースも多く、重要な接点の一つだと捉えています。
また、LINEヤフーの営業担当の方からも新広告メニューや運用方法を積極的に提案くださるので、チャレンジしやすいです。
温度感の高い層へのリーチを目指しニュース閲覧ターゲティングを導入
MZ:Yahoo!広告では、ニュース閲覧ターゲティングを活用したWebCMの出稿も行ったと聞いています。その背景について教えてください。
内藤:Yahoo!ニュース内にあるインボイス関連のニュースや個人事業主向けのニュースに関心がある層にターゲティングできるメニューがあると、LINEヤフー側から提案いただいたので導入を決めました。
またSNSなど、WebCMを配信できるメディア・プラットフォームはいくつかありますが、その他にも配信できるところを探していました。Yahoo!広告でもアウトストリーム動画広告を配信することで、インクリメンタルリーチ(既存の広告では届かないリーチの増加分)が期待できると考えました。
椎名:データ分析を通して、弥生様のWebページを来訪する層は、個人事業主関連など特定のニュースをよく読んでいることが可視化できました。真の潜在層を見つけ出すマーケティング手法のセレンディピティ・マーケティングは、弥生様のインボイス施策に最適だと考え、マーケティング概念の座組と合わせてご提示したという背景です。
MZ:ターゲットの興味・関心に関連したニュースでターゲティングできること以外に、導入の決め手になった点はありますか。
内藤:Yahoo! JAPANはYahoo!ニュースに対するエンゲージメントスコアを抽出できるため、ニュースを読んだり検索したユーザー層の中から温度感の高い層にアプローチできますね。その点が当社の導入の決め手となりました。
ニュース閲覧ターゲティングを活用する際のKPIとは?
MZ:では、今回どのような施策を実施したのか教えてください。
椎名:インボイス関連のニュースを見ている方にリーチすることは意識しつつも、それだけで弥生様の指名検索やユーザー獲得に寄与できる確証はありませんでした。そのため、ニュースの閲覧率だけではなく、検索リフトを加味したエンゲージメントスコアを抽出して、広告の配信を行いました。
MZ:今回はブランド認知獲得を目的とした施策ですが、KPIにはどの指標を設定しましたか。
内藤:今回はWebCM視聴後の指名検索流入数(VTNQ:ビュースルーエヌクエリ)をKPIに設定しました。つまり、WebCM視聴後に指名検索広告をクリックして、サイトに来訪するとタグが発火するように設定し、ブランド認知獲得やファネルリフト促進(認知、興味から検討まで)だけでなく、最終的にコンバージョンに貢献したかどうかを最優先KPIとしてきました。
他の媒体でもWebCMを配信していたため、横並びで把握できる指標を選択しました。また、「インボイスなら弥生」というイメージを持ってもらいたかったので、広告を見た後の純粋想起を測るためにも、指名検索数が重要だと考えました。
Yahoo!広告に接触することで、Yahoo!検索や他の検索エンジンで「インボイス 弥生」と検索するユーザー母数の増加にも期待しましたし、純粋想起と指名検索の相関性はあると思っていたので、VTNQをKPIにしつつ、指名検索とコンバージョンに相関があるかも検証しました。
ブランディングから獲得まで一気通貫で取り組む
MZ:施策を行うにあたって他に工夫した点を教えてください。
内藤:今回のクリエイティブでは、クレイ・アニメーションを用い、あえて弥生らしくない雰囲気にしました。インボイス自体に難しいイメージがあり、また、弥生という会社も社名や歴史からどこか堅いイメージを持たれていました。そのため、クレイ・アニメーションを取り入れて「私でも弥生を使えばインボイスに対応できそう」と、初心者でも簡単だと思ってもらえるようなWebCMを制作したんです。
羽生:今回のニュース閲覧ターゲティングは、インボイス制度の施行に合わせて発足したプロジェクトの中で行いました。
これまで、獲得とブランディングは目的別に縦割りでそれぞれのKPIを設定していましたが、今回のプロジェクトでは、WebCMの出稿で指名検索数を増やし、その後の獲得につなげていくところまで、点ではなく線で施策を展開しました。そのためのKPI設計や施策の連動を、プロジェクトチームで工夫しました。
椎名:Yahoo!広告でも、指名検索が増えた後、ディスプレイ広告ではどのようなクリエイティブが適切なのか、検索広告ではどのようなタイトル・説明文が効果的なのかを分析して提案しまして、ブランディングから獲得まで一気通貫でご支援しました。
羽生:検索広告のタイトル・説明文に関しては、形態素解析と呼ばれる自然言語処理の一つを活用し、タイトル・説明文に使用すると効果が見込まれるキーワードやフレーズを導き出しました。自分たちで考えるだけではバリエーションに限界があったのですが、Yahoo! JAPANのビッグデータを活用することで、表示回数が増えるなど広告効果の改善が見られました。
指名検索数増加、コンバージョンにも良い影響が
MZ:今回の施策によって得られた成果を教えてください。
内藤:効率良くVTNQを積み上げることができ、また、実際に指名検索と製品コンバージョンの相関も高く出たことで、最優先KPIとしていた製品コンバージョンにしっかりと貢献できることが証明されました。他媒体の70%ほどのCPA効率でVTNQを積み上げ、高い確度のユーザー層をターゲティングできました。この結果、多くの方に「インボイス=弥生」とイメージを定着させることができました。
羽生:2つあります。1つ目は、指名検索からコンバージョンまでのプロセスを「点」ではなく「線」としてシナリオを作れたことです。仮説として、指名検索が増えることで、モチベーションの高いお客様を多く獲得でき、結果、コンバージョンが増える。ということを定量的に可視化ができたのは大きな成果でした。2つ目は、LINEヤフーさんの協力で、画一的だった検索広告のタイトル・説明文・ディスプレイ広告のクリエイティブのバリエーションを増やすことができました。そして、それらを社内にナレッジとして蓄積できたことです。
ブランディング領域のマーケティング成果の可視化は難しいのですが、今回のプロジェクトを通して得られた成果をベースに、新しいことにも積極的にチャレンジし、成果の最大化を目指していきたいと思います。
Yahoo! JAPANのデータを活用して、より効率の良いコミュニケーションを
MZ:最後に、今後のマーケティングに関するプラン、そしてYahoo!広告でチャレンジしたいことについて教えてください。
内藤:これまでは獲得領域の広告が中心になっていましたが、今回の取り組みでは、フルファネルの広告出稿で成功事例を作ることができました。今後は、よりブランド認知とイメージ向上を目的とした広告で潜在層の方々の弥生に対する認知・興味を獲得していき、態度変容と行動変容を促せるように取り組みたいです。
また、Yahoo!広告に関しては、ビッグデータを活用できる点が強みだと思っています。我々はBtoB商材でターゲットも限られるため、Yahoo! JAPANのビッグデータを活用したターゲティングは重要です。より導入確度の高いお客様に対して、効率良いコミュニケーションを仕掛けていきたいです。
椎名:今回の施策でYahoo!広告における勝ちパターンを一つ作ることができました。今後は給与ソフトや会計ソフトなど、他製品にも勝ちパターンを適応し、データ分析を通したマーケティング全体のご支援をしたいです。
また、Yahoo!広告ではニュース閲覧ターゲティングをはじめ、Yahoo!ニュースのデータを活用したセレンディピティ・マーケティングを提唱しています。今後もニュース閲覧ターゲティングなど、弥生様の製品を必要とする潜在層の方にアプローチできるメニューをご提案していきたいです。
LINEヤフー for Business
2023年10月、弊社は「LINEヤフー株式会社」として新たなスタートを迎えました。コミュニケーションアプリの「LINE」、検索ポータルの「Yahoo! JAPAN」を中心に日本最大級のユーザー数を抱える企業として、企業や店舗、そしてパートナーの皆さまと共に手を取り合いながら、ビジネスの成長を支援して参ります。