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MarkeZine Day 2025 Retail

商品やサービスの価値を最大化し事業を成長させる「ベネフィット設計」とは?

「アウトドアスパイスほりにし」はなぜ売れた?商品価値の最大化に不可欠な「ベネフィット設計」

「ベネフィット設計力」を持ったマーケターの重要性が増している

 現在、マーケターを取り巻く環境は厳しくなっています。以前から続く原材料価格の高騰や電気料金の高騰を受け、値上げを検討する販売商品も多いと思います。ユーザーニーズを吸い上げ改良を重ねることでヒットに漕ぎつけた主力商品が、値上げした途端に売れ行きが鈍化するのではないかと不安視する声を多く聞きます。

 また、私は日々多くの企業から新商品開発・新規事業創出に関する相談を受けていますが、変化の激しい社会の未来を予想して、シーズ起点で革新的な商品を企画し新市場創出を試みる企業も少なくありません。シーズ起点の商品は新市場創出を期待され、実際にそのポテンシャルを秘めているものも多くあると思いますが、市場投入時は前例がなくその価値が世の中に理解されないケースも多いです。

 これらの状況においてベネフィット設計力を持ったマーケターの担う役割は大きいと考えます。

 ニーズ起点で改良を重ねロングセラーとなった既存商品を単なる値上げで終わらせず、いかに価格以上の価値を感じて購入してもらえる状況を作れるか。前例のないシーズ起点の新商品であったとしても、革新的な機能をアピールするだけではなく、いかに理解・共感される価値を定義し購入してもらえる状況を作れるか。いずれの場合でもベネフィットをどう設計し、表現するかが重要なのです。

革新的な技術も機能性をアピールするだけではビジネスにならない

 値上げを検討しているロングセラー商品も、前例がないほどに革新的な新商品も「いかに価格以上の価値を感じて購入してもらえる状況を作れるか」という壁にぶち当たります。この壁を越えなければ、事業を存続させることは難しくなります。そのため、商品のベネフィットを設計し適切に伝える役割のマーケターは「事業の寿命を握っている」と言っても過言ではありません。

 ここで私がベネフィット設計を担当し、事業の存続・成長につながった事例を紹介します。

 トランスミッションなど自動車専用の精密部品を開発・販売し、約4兆円もの売上規模を誇るグローバル企業のアイシン。自動車部品メーカーとして半世紀以上の歴史を誇る同社が、2021年より新領域となる「美容」事業に乗り出しました。

 同社が自動車技術の応用によって生み出すことに成功した微細な水粒子「AIR(アイル)」は、肌や髪の奥に浸透する性質を持ち、スキンケアや髪質改善につながることが研究でわかってきていました。しかし、技術的なエビデンスだけでなく「ビジネスとしての可能性」も見えなければ、いかに革新的な技術でも事業を存続させることはできません。

 そこで、AIRをビジネス化するための最初の分野として美容分野でAIRの技術を応用したヘアケア機器「Hydraid」を開発することが決まり、美容室にHydraidを導入してもらうべく、私がベネフィット設計を担当することとなりました。

 AIRは目に見えないほど微細な水粒子で、大きさは約1.4ナノメートル。アイシンの調査では世界最小の水粒子であり、その生成に成功したこと自体が非常に革新的だったため、美容室に対してその機能性をアピールすることから営業がスタートしました。

 しかし、美容室へアプローチを開始した当初は、目に見えない水粒子がゆえに「よくわからない技術」だと半信半疑の声にさらされてしまい、営業は難航しました。

次のページ
「よくわからない技術」の価値を見つける方法とは?

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商品やサービスの価値を最大化し事業を成長させる「ベネフィット設計」とは?連載記事一覧
この記事の著者

北原 成憲(キタハラ マサノリ)

株式会社マクアケ 専門性執行役員/R&Dプロデューサー

 サイバーエージェントを経て、2015年にマクアケへ入社。「Makuake Incubation Studio(MIS)」を立ち上げ、企業の研究開発(R&D)を起点にした新商品プロデュースや、新規事業創出のための新たな仕組みづくりに従事。手...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2024/01/11 08:00 https://markezine.jp/article/detail/44422

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