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小さな会社、大きな仕掛け

プロダクトが強力なら未完成でも売れる なぜ人は「NOT A HOTEL」の虜になるのか

 開業後わずか1年で総販売金額119億円を突破し、不動産業界のみならずWeb3業界など多方面から注目を集めるスタートアップがある。新しい家の持ち方を実現する不動産テック企業NOT A HOTELだ。自宅や別荘として利用できるほか、ホテルとしても貸し出せるNOT A HOTELの物件。その意匠の素晴らしさは、実物を目にした人なら異を唱えようがないだろう。筆者も虜になった一人であるが、NOT A HOTELの素晴らしさは物件の意匠だけにとどまらない。同社の大きな仕掛けを紐解いていこう。

美しい物件が自宅にも別荘にも収益源にもなる?

 皆さんはNOT A HOTELをご存知だろうか。「世界中にあなたの家を」をコンセプトに、世界的な建築家やクリエイターが手がけるデザイン性と、IoT などのテクノロジーによる快適性を両立した、ハイエンドな別荘を提供している企業だ。那須や博多など、全国7拠点に美しい意匠の「NOT A HOTEL(=物件)」を建造し、利用の権利を販売している。

NOT A HOTEL NASU MASTERPIECE(栃木県・那須)
NOT A HOTEL NASU MASTERPIECE(栃木県・那須)

 購入タイプとして1棟購入(毎年360泊の利用が可能)とシェア購入(毎年10~30泊の利用が可能)の2種を用意。オーナーは自身が購入したハウスだけでなく、すべてのNOT A HOTELを相互に利用できる。また、自身が利用しない日程は自動的にホテルとして運用されるため、オーナーが収益を得られる点も特徴。単なる別荘販売ともホテル運営とも異なる斬新なビジネスモデルを考案した人物は、一体誰なのか。

 最初に起業したアラタナをスタートトゥデイ(現・ZOZO)へ売却後、ZOZOテクノロジーズの取締役も務めていた濵渦伸次さんは、楽しく忙しく働いていたと言う。そんな折、ZOZO創業者の前澤友作さんが宇宙へ行くことを決めた。自然エネルギーの爆発的普及を目指すパワーエックスの伊藤正裕さん然り、周りにいた経営陣のスケールの大きさを目の当たりにし「また自分で事業を始めるなら、大きなことを仕掛けたい」そんな衝動に駆られていたそうだ。

NOT A HOTEL 代表取締役CEO 濵渦伸次さん
NOT A HOTEL 代表取締役CEO 濵渦伸次さん

事業発案のきっかけは「諦めとやけくそ」

「元々はホテル事業に挑戦したいと思っていたんです。リサーチを進めた結果、資金が明らかに不足していることを知りました。様々な金融機関とも話をしましたが、どれだけ借り入れができたとしても、お金が全然足りません。そこでふと気付いたんです。『お金がないなら、先にお金がもらえる事業をつくれば良いんだ』と。ちょっとした諦めとやけくそから生まれたアイデアが、自分の中でどんどんNOT A HOTELの構想へとつながっていきました。NOT A HOTEL(=ホテルじゃない)というネーミングの由来もここにあります」(濱渦)

 NOT A HOTELはキャッシュフローの観点から考えられた事業だと言うから驚きである。濱渦さん自身、初めから不動産や建築などに明るかったわけでは決してない。何なら、NOT A HOTELの創業当初は「抵当権」という言葉すら知らなかったそうだ。

「ZOZOテクノロジーズに在籍していた当時、現在のNOT A HOTEL AOSHIMAの場所が宮崎市のプロポーザル(※)にかかったんです。宮崎県は私の地元でもあったので、個人的に手を挙げたくなってしまったんですよね。後追いにはなりますが、NOT A HOTELの構想とその場所が後々一気につながっていくことになります」(濱渦)

※建築物の設計者を選定する際に、複数の対象者に目的物に対する企画を提案してもらい、その中から優れた提案を行った対象者を選定すること

 かつては新婚旅行の聖地として活気を見せていた青島。しかしながら、NOT A HOTELの敷地に元々建っていた「青島橘ホテル」は、廃墟に近しい状態が長らく続いていた。筆者もNOT A HOTELが開業する前の青島を知る一人だが、お世辞にも「この近くに滞在しよう」とは思えない場所だったと記憶している。

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この記事の著者

阿部 圭司(アベ ケイジ)

アナグラム株式会社 代表取締役/フィードフォースグループ株式会社 取締役。大手アパレルメーカーを経て運用型広告の世界へ。リスティング広告やFacebook広告を筆頭とする運用型広告の領域が得意なマーケティング支援会社アナグラムを創業。その後、フィードフォースグループにグループジョイン後、現役職。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2024/05/29 12:15 https://markezine.jp/article/detail/44494

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