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TikTokで流行りの曲はなぜバズる?特徴や理由、しくみを解説

 次なるヒット曲が生まれる場として注目される機会が増えたTikTok。2020年にはインディーズアーティストだった瑛人の「香水」がチャートを席巻し、「第71回NHK紅白歌合戦」に出場。一気に注目を浴びたことは記憶に真新しい。その後も2021年には優里の「ドライフラワー」、2022年にはSEKAI NO OWARIの「Habit」などが大ヒット。さらに2023年もYOASOBIの「アイドル」、新しい学校のリーダーズの「オトナブルー」、Adoの「唱」など、TikTokでバズった曲が社会的なヒットを起こし続けており、その勢いは止まることを知らない。本記事ではTikTokで流行りの曲が、なぜこれほどまでの大ヒットにつながるのか、それぞれの楽曲の特徴や理由、しくみについて探ってみた。

TikTokで流行りの曲・過去に流行った曲一覧

 まずはTikTokで現在流行っている曲、過去に流行った曲の一覧を、過去5年間にわたって挙げてみた。

(タップで画像拡大)
2023年(クリックして画像拡大)
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2022年(クリックして画像拡大)
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2021年(クリックして画像拡大)
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2020年(クリックして画像拡大)
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2019年(クリックして画像拡大)

TikTokで流行る曲の7つの特徴

 TikTokで流行る曲にはそれぞれ特徴があり、簡単にまとめると以下の7つに分けられる。

  1. 1つのパートに魅力的な歌詞が詰まっている
  2. 踊りやすい・真似しやすい振り付けがある
  3. キャッチーなメロディや歌詞を持っている
  4. アップテンポである
  5. 難解なメロディでおしゃれさがある
  6. アニメや映画、ドラマなどに使用されている
  7. 過去のリリース曲+真似しやすい振り付けがある

 それぞれの特徴を実際の曲を例に出しながら見てみよう。

1.1つのパートに魅力的な歌詞が詰まっている

 TikTokは、サービス開始時には15秒までの動画しか投稿できなかった。今でこそ長尺の動画も投稿できるようになったが、プラットフォームの特性上、TikTok動画は今なお短い尺の人気が高い。

 したがってTikTok動画では曲をフルで使う場面がなく、サビやメロディ部分を切り取って使う場合がほとんどだ。そのためTikTokでは、短いパートの中で歌詞が完結する曲が人気になりやすい。つまり、限られた秒数の中でいかに魅力的なメッセージを伝えられるかが重要ということだ。

 限られた秒数の中でより強い印象を与える手法として、よく用いられるのがタイアップ曲に見られる“テーマとのリンク”だ。ドラマやアニメ、商品など、イメージしやすいものと歌詞とをリンクさせればより鮮明に人々の記憶に残り、面白さや共感を与えられる。

 「アイドル」を始めとするYOASOBIの楽曲は、その典型例といえるだろう。曲や歌詞だけで作品全体のイメージが伝わり、聴く者に強烈なインパクトを与えている。

 他にも、商品CMに採用されている曲などは、ほとんどが短いパートでその商品のイメージが伝わるように作曲されている。これもCMという限られた時間の中で、楽曲を切りとる必要があるためだ。

 このように、短いパートに魅力的かつ印象強い歌詞が詰まっている曲は、TikTokの短い動画にも当てはめやすいため、多くのTikTokerから支持されるというわけだ。

2.踊りやすい・真似しやすい振り付けがある

 MVなどで披露されているダンスが踊りやすかったり、真似しやすかったりする楽曲は、TikTokで流行りやすい曲の典型といえるだろう。またそれが独特な踊りであればあるほどインパクトを与え、次々と真似して踊る人が増え、瞬く間にTikTok内で拡散されることになる。

 SEKAI NO OWARIの「Habit」、新しい学校のリーダーズの「オトナブルー」などがその典型例で、次々とヒット曲が生まれている。

 SEKAI NO OWARIの「Habit」は、癖の強いダンスなのに踊りやすいため、誰でも簡単に真似できた。また、新しい学校のリーダーズの「オトナブルー」は2020年にリリースされた曲だが、アーティスト本人らの投稿から、独特で印象的な「首振りダンス」が話題となり、リリースから3年後の2023年に異例の大ヒットを記録した。

 さらにユニバーサルスタジオジャパンのハロウィンイベント「ハロウィーン・ホラー・ナイト」のコラボ曲に採用されたことでも話題になったAdoの「唱」が、若い世代を中心にダンス動画で大流行したのも記憶に新しい。

 他にも、ひらめの「ポケットからきゅんです!」から流行した片手の親指と人差し指を交差させてハートを作る「きゅんです」のポーズは、老若男女誰もが真似をするほどの社会現象となった。これも片手でできる手軽さや使いやすさが人気の引き金となったのだろう。「きゅんです」はポーズだけでなく、2020年ギャル流行語大賞で3位、2020年JC・JK流行語大賞のコトバ部門で1位と、その年の流行語にも輝いている。

 今や「真似しやすい振り付け」を取り入れることは、SNSでバズらせるための王道の手法と言えるだろう。

3.キャッチーなメロディや歌詞を持っている

 ついつい口ずさんでしまうキャッチーなメロディや歌詞、軽快なリズムなどを持っている曲も人々の記憶に残りやすく、TikTokでもバズりやすい傾向にあるようだ。

 マニアックで一部の熱狂的なファンに刺さりやすい曲ももちろん魅力的だが、TikTokは老若男女あらゆる世代が気軽に閲覧するSNSだ。そのためTikTokで流行する曲には、万人に愛されるような曲が多く、基本的にコード進行も定番のものが扱われやすい傾向にある。

 YOASOBIの「群青」「祝福」、Official髭男dismの「Subtitle」といった人気曲も、やはり定番のコード進行である「王道進行」と呼ばれるコードが使用されている。また、先ほど紹介したひらめの「ポケットからきゅんです!」のような、つい言いたくなるようなキラーフレーズを使用するのもバズらせる上で非常に有効なテクニックだ。

 さらに、MVの「足ダンス」で話題となった水曜日のカンパネラの「エジソン」の中には、DTM(Desk Top Music)をかじったことがある層に「わかる!」と共感を呼ぶような歌詞が散りばめられている。こういった“ある層にブッ刺さる歌詞”というのも、爆発的な人気の引き金になるかもしれない大切な要素といえるだろう。

4.アップテンポである

 TikTokのダンス動画などで人気な曲は、基本的にアップテンポな曲が多い。TikTok公式も「テンポの速い曲の人気が高い」とし、BPM(Beats Per Minute)120以上の楽曲を活用すれば、BPM120以下の楽曲に比べて再生率が高くなることが確認されたと公表している。

 そのような背景からやはりTikTokで使用される人気の楽曲を見ると、その多くがアップテンポな曲調で、明るく活気に満ちた楽曲が多い。アップテンポな曲は最初に与えるインパクトが強く、スピーディーなカットが多いTikTokにマッチしていることが要因だろう。

 例として、ぼっちぼろまるの「おとせサンダー」はアップテンポな曲で有名だが、この曲もTikTokで「#イナズマに打たれました」をつけた動画の投稿が後をたたなかった。また、AJRの「World's Smallest Violin」の終盤部分のように、曲のテンポが徐々に上がっていくような楽曲は、動きのある動画のBGMとして非常に使いやすく、TikTokで耳にした方も多いだろう。

 このようにTikTokでバズる楽曲は、踊りや歌詞だけでなく、テンポも考えて作られているものが多い。

5.難解なメロディでおしゃれさがある

 メロディの高低差が広い曲や、印象的な転調を用いた曲も、現代の楽曲のトレンドといえるだろう。メロディが難解な曲はインパクトが強く、個々のアーティストのオリジナリティを表現しやすいメリットがある。さらに聴いていておしゃれに感じるので、「歌ってみたい」という気持ちもくすぐりやすい。

 “歌ってもらうこと”だけを考えれば、シンプルで簡単な曲の方が万人に馴染みやすいだろう。しかし、複雑な曲でもキャッチーなメロディであれば記憶に残りやすく、人々の感情を動かしやすい。

 YOASOBIの「アイドル」がその典型例で、“アイドルの表の顔と裏の顔”というテーマを転調という形で上手く表現している。メロディも高低差が広く非常に難解だが、その流れがとても心地良く、聴くものを離さない魅力が詰まっている。

 また、Official髭男dismの楽曲もテクニカルなメロディを持つことで有名だが、彼らの人気の理由はもちろんそれだけではない。彼らの楽曲の多くは、テクニカルなメロディに乗せられた歌詞に、心地良い韻の数々が散りばめられている。そのような巧みな技術もあり、“プロが絶賛するアーティスト”と言われるほどにまで上り詰めたのだろう。

 このように、難解なメロディにはアーティストの個性が出やすく、「自分も歌ってみたい」と思わせる魅力がある。こういった「上手さ」を持ったアーティストたちが、今後も数々のヒット曲を生み出していくに違いない。

6.アニメや映画、ドラマなどに使用されている

 アニメやドラマ、映画に使用されている楽曲は、その作品のストーリーとともに曲がスッと記憶に入り込むため、より強烈に人々の印象に残り、流行につながりやすい。

 最近ではテレビアニメ「ONE PIECE」のOP主題歌に起用された、SEKAI NO OWARIの「最高到達点」がその最たる例だろう。主人公のモンキー・D・ルフィが会得した“ギア5”はまさに“最高到達点”と呼ぶにふさわしく、アニメと歌詞とのリンクが瞬く間に話題となった。

 このように、作品とのリンクを重視した楽曲は非常に多い。2023年異例の大ヒットとなったYOASOBIの「アイドル」もそのうちの1曲で、楽曲全体を通してテレビアニメ「【推しの子】」の登場人物・星野アイの心情や生き様を描いた楽曲だ。

 また、テレビアニメや映画で一世を風靡した「鬼滅の刃」のOP主題歌であるLiSAの「紅蓮華」の歌詞には、あるこだわりが隠されている。元々の「紅蓮華」のフレーズの中にある「ありがとう悲しみよ」という歌詞を、まだ幼い主人公がそのように思えるはずがないという理由から、テレビ版では「何度でも立ち上がれ」に変更したのだ。

 このようにタイアップ曲には、作詞家や作曲家の作品に対する熱い思いが込められている。そんな魂のこもった力作だからこそ、聴く者の共感を呼び、強烈なインパクトを与えるのだろう。タイアップ曲は、その作品が好きであればあるほどその人の心に刺さるため、むしろ流行らないわけがないのかもしれない。

7.過去のリリース曲+真似しやすい振り付けがある

 ブラックビスケッツの「タイミング」、槇原敬之の「もう恋なんてしない」、ラッツ&スターの「め組のひと」、広瀬香美の「ロマンスの神様」、PUFFYの「愛のしるし」など、TikTokではリバイバルヒットした曲も後をたたない。

 過去にヒットした曲が再燃することをリバイバルヒットと呼ぶが、これまで楽曲がリバイバルヒットする際は、映画やCMに過去の曲が使用されたり、有名アーティストにカバーされたりして生まれるケースが定番だった。しかし近年では、ダンス動画クリエイターによって起こる、偶発的なリバイバルヒットが増えている。

 そもそも過去にヒットした曲たちは当然名曲揃いだ。メロディーやリズム、歌い回しなど、耳残りの良いキャッチーなものが多い。これらの楽曲に真似をしたくなるような振り付けを加えれば、たちまちTikTok上で人気が再燃するというのが、今やパターン化してきている。

 忘れていた名曲を思い出す世代、知らなかった過去の名曲に心を掴まれる世代、それぞれの世代に心地良く浸透し、TikTokで流行っていくのだろう。

流行りの曲は時代に合わせて少しずつ変わる

 近年のインターネット社会では、すぐにブラウザバックできることもあり、現代の若者は昔よりも急ぎがちな傾向にある。そのため、タイムパフォーマンス時代ともいわれる現代の楽曲には、イントロ部分を短くしたり、曲の冒頭でサビなどインパクトの強い部分を聴かせたりなど、一瞬で心を掴んで離さない工夫が必要だ。

 またコロナ禍では弾き語りや、家などでも動画をできる「指ダンス」のような簡単な踊りなどが特に人気を見せた。しかしコロナ自粛が緩和されてからは、また複数人で一緒に踊るようなダンス動画が伸びている。

 このように、動画ジャンルや楽曲の流行は時代に合わせて少しずつ変化していく。楽曲のターゲットとなる世代の動向を常にチェックし、時代に沿ったマーケティング戦略を打ち出していく必要があるといえるだろう。

TikTokで流行りの曲を生み出すための、その他の工夫

 TikTokで流行りの曲を生み出すためには、そもそもTikTokへ投稿した動画をバズらせる必要がある。

 TikTokで動画をバズらせるには、TikTokのおすすめに選ばれることが重要だ。おすすめに載るには、短期間で多くのインプレッションやいいねを獲得する必要があるので、流行りのハッシュタグをつけるなどの工夫もしなければならない。

 また、フォローしてくれたファンを離さないためにも、日ごろから定期的に動画を投稿したほうが良いだろう。さらに、ファンにとっては好きなアーティストの新曲は待ち遠しいもの。現代では楽曲のリリース頻度が遅いだけでも固定のファンを逃してしまうことになりかねない。そのためリリース頻度の多さにも気を配りたい。

 TikTokでは、熱心なファンを獲得できる機会が多い反面、興味がなくなったらすぐに飽きられてしまう可能性も高い、流行りの流れが凄まじいプラットフォームだ。常にTikTokのトレンドを察知し、自身でも楽しみながら楽曲を制作すれば、バズる動画や楽曲を生み出せるかもしれない。

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この記事の著者

マーケ研究所(マーケケンキュウジョ)

 マーケティングに関する情報を調べ、まとめて届けています。

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MarkeZine(マーケジン)
2024/07/13 00:00 https://markezine.jp/article/detail/44626

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