イケアが安くて高品質な理由は、値付けをしてから行う商品開発
大里:ホームファニッシングの商品は基本的にグローバル共通とお聞きしましたが、フードを日本で展開する時に工夫されていることはありますか?
菊池:まず、我々はスウェーデン発祥の企業ですから、スウェーデンらしさを伝えることは意識しています。たとえば、ミートボールはリンゴンベリージャムとクリームソースを添えて、ポテトと一緒に食べるという、グローバル共通であえて現地の日常的なスタイルのまま提供を行っています。

一方、カレーのようにローカライズしたメニューも存在しています。ローカライズを行うことで、より多くの方に食べていただけるきっかけ作りになります。加えて、グローバルメニューに比べると、ローカライズされたメニューの方が他社との値段や味の比較がしやすいです。そのため、ローカライズされたメニューを提供することで、より多くのお客様に当社のフードの安さとおいしさを実感してもらうことも狙いとしてあります。
大里:確かにイケアで食事をすると、北欧の雰囲気を感じながら新鮮な気持ちで食事ができて、低価格のものを食べている感覚があまりありませんよね。価格を下げているにも関わらずブランドイメージを高く保つために行っている工夫は何かあるんですか?
菊池:イケアでは、企業ビジョンに関連して「消費者が実際に体験できる、手に届きやすさ」の観点から低価格にはやはりこだわっています。一方、イケアは独自に高い基準を定めて、品質の良い食材を扱うようにしています。

菊池:フードに限らず、イケアでは必ず最初に値段を決定してから商品開発を行っています。値段を確定した後に「デモクラティックデザイン」と呼ばれる五つの要素(優れたデザイン、機能性、品質、サステナビリティ、低価格)を意識しながら開発を進めています。
このように、自分達で先に制約を決めることで、その制約の中で良い商品を作るために工夫しています。これにより、低価格にも関わらず高い商品価値をお客様に感じていただくことにつながっているのだと思います。
スウェーデン発祥を強みとした店舗体験作りに注力
大里:最後にイケアの日本国内での展望を教えてください。
谷川:イケアでは、日本国内で13店舗目となるIKEA前橋が1月18日に新規オープンしました。ここでも、これまで培ってきたノウハウを活かして前橋に住む方々の暮らしを調査し、他店舗と異なる店舗設計にも取り組んでいきたいと考えています。

谷川:また、2024年もこれまでに引き続き人気の商品をさらに低価格でお届けしています。当社が行う調査からも、インフレによる年収や物価に対する危機感や不安感といったインサイトが多く見てとれます。そんな中で、人気商品をより低価格で提供することで、多くの方が安心して楽しくお買い物ができるようになると考えています。これからも是非ご期待いただきたいです。
菊池:フード部門では2023年10月19日から、原材料をプラントベースドに切り替えたソフトクリームの販売を全国のイケア店舗でスタートさせています。50円という低価格での提供を可能にしている上に、乳製品に引けをとらない味になっています。是非来店して食べてみていただきたいです。
また、スウェーデンにおける伝統的な行事スタイルを店舗で再現することに注力し、店舗に足を運んでいただいたお客様にしか味わえない楽しさを提供していきたいと考えています。