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【特集】2024年の消費者インサイト

ピンチをチャンスに 消齢化社会でインサイトをどう掴む?

デモグラに代わる2つの物差し

 とは言え、年齢という手がかりなしにインサイトを発掘するのは、浮き輪を持たずに大海原で「泳げ」と言われるようなものです。であるならば、まずは従来どおり年齢でセグメントを設定し、インサイトが掴めたら「このインサイトが他の年代にも通用するか」という視点で考えてみてはいかがでしょうか。仮に「50〜60代にも通じるものがあった」となれば、対象が広がってパイが拡大しますよね。逆に「やはりこのインサイトは20代に固有のものだ」とわかれば、その年代にフォーカスしてアプローチすれば良いのです。

 消齢化は確かに進んでいますが、すべての分野で消齢化が見られるわけではありません。たとえば、健康状態や子育てなどのライフステージに紐づいた事象は、年齢による違いが大きいです。年齢で区切って見るべき事象と、そうでない事象の見極めは必要だと思います。

──デモグラに代わるインサイト把握の新しい物差しはあるのでしょうか?

 その点については我々も研究を続けているところです。消齢化分析に活用した生活定点データで、年齢以外のデモグラや社会属性(性別、未既婚、年収、学歴)による差がどうなっているかを確認してみたのですが、いずれも差は拡がっていませんでした。

 研究の結果、価値観に基づいて人を分類する2つの物差しが導き出せました。1つは「暮らしの質の高め方が理想に向かうか、実用に向かうか」です。定量的な解析の結果、理想派と実用派で属性は明確に分かれることがわかりました。たとえば車の購入を検討する際に、理想派は「その車が自分の知らない世界に連れて行ってくれるか」を重視します。一方、実用派は「その車が今の生活にどれだけ役立つか」「その車のコスパは高いか」を考えるのです。

 もう1つの物差しは「興味や関心の深め方が交流に向かうか、没頭に向かうか」です。ビールを例に挙げると、交流派は他者と円滑なコミュニケーションを図るためのツールとしてビールを楽しみます。逆に没頭派は、味にこだわる場合や何かに集中する際のお供としてビールを選ぶようです。これら2つの物差しは、人を分類する際の有効な指標になると思います。

 ただ「実用派と理想派、どちらをターゲットにするか」と考えるより、訴求のバリエーションを広げるためにこの物差しを活用することが有益だと考えています。これまでは年代に合わせて変えていた訴求内容を、これからは実用派と訴求派のそれぞれに届くよう考えるイメージです。たとえば実用派に共通する価値観やインサイトを明文化して「この人たちにはどういう訴求が響くか」を考えるために用います。

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「消性化」や「消域化」も進む

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この記事の著者

渡辺 佳奈(編集部)(ワタナベ カナ)

1991年生まれ。慶應義塾大学環境情報学部を2013年に卒業後、翔泳社に新卒として入社。約5年間、Webメディアの広告営業に従事したのち退職。故郷である神戸に戻り、コーヒーショップで働く傍らライターとして活動。2021年に翔泳社へ再入社し、MarkeZine編集部に所属。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2024/02/01 09:30 https://markezine.jp/article/detail/44646

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