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マーケティングの近未来

いまGoogleを使ってない人は、何を使っているのか?


Googleは1st Party Dataのトレンドに乗り遅れたのか

 「こんなに叩かれているのに、なんでGoogleを使う理由があるのかね?」と諭してくる人がいたのだが、「タッチポイント/CMP」+「AI/生成AI」+「還元プログラム」という3要素を競っているのがいまの欧米の状況であって、Googleを使っていない人たちからは、Googleはかなり対応が遅れているとみえている。

 検索エンジンの場合、タッチポイントは検索エンジン自体だが、そこでCMP(Consent Management Platform)を使ってどんな同意を取得して、どのようなAI/生成AIで利便性を向上し、どんな個人向け還元・社会的な還元を提供できるか? 競争の軸は、検索エンジンを過去の遺物とし、単なるタッチポイントの一つに変容させてしまった。検索エンジンの優劣について問題視・最重要視している人はいなくなったのだ。

 2020年に「監視資本主義(原題 The Social Dilenma)」というNetflixのドキュメンタリーが欧米で話題を呼んだ。元Google社員や元Facebook社員などが出てきて、「こんなに酷いことをGoogleはやっている」とか「個人情報を知らない間にこんなに取得して、ユーザーをネット中毒にしている」というような発言をしていて、もはやIT業界に対する悪意すら感じるドキュメンタリーになっているのだが、綿密に取材しており、GoogleやFacebookも反論するのは難しいという状況だった。

 私からすると、ちょっと単純化し過ぎていると感じるし、「ドキュメンタリー『監視資本主義』は、ソーシャルメディアの問題をあまりに単純化している:映画レヴュー」という『WIRED』US版の記事に概ね賛成なのだが、そうはいっても、一般の人々が、GoogleやFacebookと距離を置き始める契機になったのはたしかだろう。

 独占禁止法やGoogle解体論、そして、個人データ保護の問題などで社会的な批判を浴びたことも理由だと思うが、Googleは「Don't Be Evil」という行動規範を取り下げてしまった。2018年の記事「Google Removes 'Don't Be Evil' Clause From Its Code of Conduct」に記載されているのだが、要するに、「Don't Be Evil」(邪悪になるな)とは言い切れない、いや、取り下げてしまった事実があるので、多くの人が思ったのは「We have been actually Evil」(実は邪悪だったのだ)と「Googleは認めた」ということだ。私の知っているGoogleの人たちは、誠実に真面目に働いている。だが、知らない間に個人データが収拾されていたユーザーの中には「裏切られた」と感じる人も、特に、欧米の意識高い系の人たちの中には、いたようなのだ。

 昔はなんの問題もなかったのに、社会的な影響力が大きくなって、ルールが変更された結果、Googleは社会的な批判を浴びるようになった。私は、邪悪(Evil)だとはまったく思っていない。だが、ユーザーの同意取得なくして、データを使うことができず、かつ、3rd Party Dataから1st Party Dataに移っていくトレンドに、Googleは少々乗り遅れた。

ビジネスモデル構築の現在のトレンド

 この時代変化の中、「タッチポイント/CMP」+「AI/生成AI」+「還元プログラム」という3要素のビジネスモデル構築が現在のトレンドだ。一般のメディアや金融サービスなど検索エンジン以外のユーザー接点(タッチポイント)でも、「1st Party Data プラットフォーマー」を目指した動きがある。1月25日付日経記事「みずほ銀行が広告ビジネス、サイバーエージェントと提携」のようにニュースになることも増えている。

 いま、私自身は米国コンサルティング企業の方々の協力を得て、今後の広告ビジネスの方向性を資料化している。「1st Party Data プラットフォーマー」時代には、「1st Party Data アドネットワーク」が発展し、さらに、IoT広告ネットワークを生み出していく。「タッチポイント/CMP」+「AI/生成AI」+「還元プログラム」の3要素を多面的多重層に連携しながら既に、展開されつつある。

図1:「今後のIoT広告の世界 - 1st Party Data Platformerの時代へ」
図表1:「今後のIoT広告の世界 - 1st Party Data Platformerの時代へ」(タップで拡大)

 ユーザーの同意を取りながら、ユーザーを理解し、ユーザーに寄り添い、意図を汲み取った期待を超えるオファーをして、金融やサブスク、地域社会の活性化を行いいつつ、NFTや地域通貨・ウォレットなどで決済の利便性を高めて、我々の生活を豊かにしていく。GoogleもMicrosoftもFacebookもAppleも、ドコモやKDDI、ソフトバンク、テレビ局や新聞社、LINEヤフーなどポータルサイト、楽天やイオンなどリテールメディア企業までも巻き込みながら、フィードバックループを回していくことで、生産性を高める。そのとき、志の高い企業が「1st Party Data プラットフォーマー」として立ち現れて、デファクトスタンダードを勝ち取る。それはどこなのか。我々の分析結果では、日本企業にも大きな飛躍のチャンスがある。

 OpenAIのサム・アルトマンやイーロン・マスクなども、そのことがわかっているからこそ、「Worldcoinプロジェクト」を開始してベーシック・インカム(還元)の理想を掲げたり、Twitterの社名を「X」に改変し、本人確認や認証のために有料会員制度(サブスク)の試験導入を開始しているのだ。次回以降に、図表1に掲載したアウトライン・デザイン(概念図)を詳らかにしていく。

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この記事の著者

ヴァイオレット・エヴァーインディゴ(ヴァイオレット・エヴァーインディゴ)

1990年代に米国西海岸に留学し、シリコンバレーで就職。1998年のGoogle誕生に衝撃を受け、ネット広告・デジタルマーケティング領域に職域を転換。2000年代初めに帰国。米国大手IT企業・プラットフォーマーを6社経験。デジタルマーケティングのコンサルティングを生業とする。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2024/08/07 11:34 https://markezine.jp/article/detail/44776

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