検索クオリティの減退、その原因は3rd Party Dataへの依存
Googleの検索クオリティが下がっている。2024年1月16日付の記事「Google Search Really Has Gotten Worse, Researchers Find」では、「a new, year-long study by German researchers」(ドイツの研究者らによる一年に及ぶ最新の調査結果)を紹介し、「Google検索は本当に悪化している(Google Search Really Has Gotten Worse)」と結論づけている。先日の記事『「Google検索は死んでいる」という指摘から得た着想 変容しつつある価値形態』でも紹介したが、「先見的な人はもうGoogleを使っていない」とあるように、最先端のハッカーやエンジニアのほとんどが、もうGoogleを使っていない。
品質低下の主な要因は、3rd Party Dataから1st Party Dataへの流れである。SEOスパムやMFA(Made for Advertising)サイトの悪影響もあるのだが、5年ほど前ならもっと上手に最適化できていた。だが、3rd Party Cookieで集めた行動履歴データを使って最適化することが事実上、禁止された。歴史的に、検索エンジンは3rd Party Data依存なのだ。3rd Party Cookie/3rd Party Dataが使えないと、ビジネスの根幹が崩壊する。個人データだけではなく、もし、クローラーで収集している3rd Party Dataをコンテンツ所有者の同意なくして使えないとなったら、ビジネスできない。
検索エンジンは、簡単にいえば、世界中のウェブサイトの情報(3rd Party Data)をクローラーで収集し、独自のアルゴリズムを使ってユーザーの検索クエリに対して検索結果ページを戻す仕組みだ。そして、その広告をパーソナライゼーションすることで効果を高めていた。そのパーソナライゼーションの基盤の一つが3rd Party Cookieで集めた個人データだ。大手ブラウザが 3rd Party Cookie対応を廃止した結果、個人の行動履歴データが集まらなくなった。もちろん、Google独自の1st Pary Dataはあるのだが、3rd Party Cookie/3rd Party Data依存のビジネスモデルだった。だが、もうさすがに限界で、結果的に、悪化していることが隠せなくなった。
「1st Party Data プラットフォーマー」の時代に移行
既に広告やマーケティングビジネスは、「1st Party Data プラットフォーマー」の時代に移行している。Amazon広告やMicrosoft広告の台頭は1st Party Dataの強みを生かした結果だ。図表1にある「1st Party Data プラットフォーマー」時代のアウトライン・デザイン(概念図)を解説し、「タッチポイント/CMP」+「AI/生成AI」+「還元プログラム」の3要素を多面的多重層に連携しながら発展していくダイナミズムと、そのビジネスの胎動を今後、書き進めていくつもりだ。だが、その論稿に入る前に、「いまGoogleを使ってない人は、何をつかっているのか?」という素朴な疑問を解きほぐしていく。なぜなら、そこには、時代の本質が蒸気となって蜃気楼のように揺らいでいるからだ。
調査結果にもよるが、Googleのシェアは落ちている一方で、Microsoft Bingのシェアは上がっていて、デスクトップでは「2021年12月にComscore(コムスコア)が行った調査では、<中略>グローバルにおけるマーケットシェアでは、既に米国では37%、EU主要国でも20%を超えている」という(参照)。この2021年の時点では、デスクトップのシェアしか公表しなかったのは、モバイルのMicrosoftのシェアは低いからだろう。だが、その後、2022年11月以降、OpenAI社のChatGPTやBing Chat Copilotなどの開始によって、モバイルのマーケット状況も変化しているようだ。