費用対効果の良い施策が、大きな成長を生むとは限らない
フリーミアムモデルを難しくしている二つ目の理由は、大きな成長をしようとするとマーケティング投資の回収期間が長くなり、事業年度内で回収できない場合が出てくることです。
お客様を増やす方法には、費用対効果が高いものと低いもの様々ありますが、基本的に費用対効果が高いものは、投資できる金額に制限があります。
たとえば、リスティング広告でブランド検索ワードを絞れば(NewsPicksであれば「NewsPicks/ニューズピックス」)、獲得単価も低く事業年度内で投資を回収することも難しくありません。しかし、ブランド検索ワードで検索してくれるお客様は、すでに認知してくれている方々です。追加で認知のための施策を実施しない限り、検索ボリュームは大きく変動しません。結果として、ブランド検索ワードだけでは獲得件数を増やすことは難しく、縮小均衡に陥りがちです。
そのほかにも費用対効果が高い施策はありますが、件数を増やすことが難しい場合が多く、大きな成長を期待できません。この問題を解決するためにも、LTVが役立ちます。
LTVを算出した結果、一人のお客様から複数年にわたって収益をいただけることがわかったとします。そのようなサービスでは、複数年かけてマーケティング投資を回収する方法を検討でき、事業を大きく持続的に成長させることができます。LTVを算出することにより、可能性を広げることができるのです。
一方でマーケティング投資を複数年で回収するとなると、月次や年次での売上目標と時間軸のズレが発生します。マーケティングの部署だけではなく、社内で共通の認識を持つことがとても重要です。
ちなみに、NewsPicksではLTVを無料会員登録後3年間の有限の期間としています。NewsPicksは長く使っていただけるお客様が多く、4年以上使っていただけるお客様も大勢いらっしゃるので、本当の意味でのLTVはもっと高くなります。しかし市場環境の変化も激しい現代では、マーケティング投資の回収は3年以内に抑えたいと考えており、LTVの算出も3年にしています。
ここまで、NewsPicksが現在取り組んでいるLTVドリブンマーケティングの概要をご説明してきました。次の記事では、現在の形に至るまでにあった様々な試行錯誤について、失敗した話も含めてご紹介します。