新規集患を目的に広告運用に取り組む
MarkeZine編集部(以下、MZ):これまでの簡単なご経歴と、現職での業務・ミッションなどについてお話しください。
須部:イースト駅前クリニックのマーケティングを担当している須部です。新卒で入社し、別事業部が展開するメンズシャンプーを担当、その後経営企画に異動し、経営分析や事業課題の可視化をする傍らで、興味のあった広告運用にも関わっていました。現在はイースト駅前クリニックの新規集患を目指して、広告運用やプロモーションを担当しております。
中野:オーリーズの中野と申します。前職では広告効果計測ツールの営業をしておりました。現在はオーリーズでアシスタントマネージャーをしております。メンバーのマネジメントや案件の支援品質を高めることがミッションです。イースト駅前クリニック様は契約の段階からご支援させていただいています。
松尾:オーリーズの松尾です。人材採用系の広告会社、Web系の広告代理店を経て2年前にオーリーズに入社しました。現在、イースト駅前クリニック様の広告運用担当責任者としてプロジェクトマネージャーを務めています。
山宮:FIREBUGの山宮です。以前はカルチャー系Webメディアで、タレントやアーティスト、お笑い芸人の方々のニュースを取り扱っていました。FIREBUGではそういった方々とコンテンツを作ったり、YouTubeタイアップなどの取り組みを一緒に行ったりしています。今回イースト駅前クリニック様には、弊社の新サービスである、タレントの3Dアバターを活用した広告「AVATORS」を初めて活用いただきました。
競合が急増 広告チャネル拡大による認知拡大を図る
MZ:イースト駅前クリニックの医療事業の概要、デジタル広告運用に求める役割をお教えください。
須部:イースト駅前クリニックは、EDとAGAの診療をメインとする自由診療のクリニックです。予約不要、診察時間は最短10分というところを強みに、全国に40院を展開しております。ターゲットは、手軽に通院を続けたい男性患者様となります。
現在、この業界では競合他社が非常に増えてきているため、デジタル広告を配信し、認知拡大を図る必要性が高まっています。現在マーケティングチームの担当は3名で、デジタル広告とプロモーションは私1人で担当しております。もう1人はホームページ運用とSEO、アフィリエイト担当、もう1人は運用分析を行う形で役割分担をしています。
MZ:イースト駅前クリニックではデジタル広告の運用において、2023年に新規チャネルとしてYouTube広告を採用し、特徴あるクリエイティブで成果を得られたと伺いました。新規チャネルの拡充を判断した背景をお聞かせください。
須部:コロナ前までは競合クリニックが非常に少なく、AGAクリニックの中では安価で、手軽という訴求をすれば十分に集患できていました。そのため、広告施策はほぼリスティング広告のみでした。ところが、ここ数年でオンラインクリニックが増えたことで、少しずつ新規集患のシェアを奪われるようになりました。
これまでは先行して事業展開していた他社様の力でAGAという市場が広がってきた段階で、当社は既にAGAを認知している患者さんにアプローチしていました。しかし、今後はイースト駅前クリニックという名前とそれがどのようなクリニックなのかを認知させる取り組みが重要だと考えております。そこで今回、認知のための広告チャネルを広げました。
コストを考慮した新規チャネルの厳選 PDCAの基礎をつくる
MZ:オーリーズ社では以前からイースト駅前クリニックの広告運用を支援されているそうですが、今回の施策ではどのような提案をされたのでしょうか?
松尾:前提として今回の取り組みはクリエイティブアイデアから決定し、そのクリエイティブアイデアが認知獲得を果たせるよう、メディアプランニングや配信手法の確定、KPI設定など広告の目的と接続する流れで進めました。
クリエイティブアイデアについてはFIREBUGさんから後述いただく3Dアバターの活用を現在抱えている課題を解決できる表現としてご提案いただきました。続いて広告配信においてもイースト駅前クリニックさんの課題や今後のブランドとしてありたい姿、リーチしたい顧客像などとの一貫性を実現できる方法を考えました。特に今回は認知獲得が目的だったため、チャネルとしてYouTube shortsを選択したのが特徴的でした。ここ1、2年で非常に伸びているフォーマットであるにもかかわらず、YouTube広告に複数フォーマットがある中でYouTube shorts単体への出稿はまだ競合があまり行っていない状態で、認知獲得を高い効率で期待できそうなところがメリットでした。
加えて、今回はブランドリフトとサーチリフトの計測も提案しました。ご相談当時のイースト駅前クリニックさんは、認知を目的とした広告施策はほとんど行っていない状況にあり、認知施策の定量的な価値を図れるようブランドリフトやサーチリフトを導入しました。それによって、認知施策のよくある課題である「この施策やってよかったんだっけ?」と施策結果が曖昧なまま終わってしまう状態を避けたり、イースト駅前クリニックさんの社内で次回以降の施策の基準づくりをしたいと考えました。
MZ:新たなチャネルに挑戦する時点で次の施策、PDCAについても考えていたのですね。配信設計ではどのようなことを意識されましたか?
松尾:ターゲットへのリーチ数とフリークエンシー量のバランス、計測環境の整備を意識していました。特にYouTube広告においてブランドリフトの計測をしたい場合、期間あたりの配信金額の条件が設けられています。今回のイースト駅前クリニックさんは、月のご予算がそれに満たなかったのですが、クリニックの繁忙期にあたるお盆前後の10日間のみ予算を増やしていただくことで、期間あたりの配信金額の条件を満たすようにしました。そのおかげでブランドリフトを実施できる形になりましたし、期間の中での予算の最適化ができたと思います。
3Dアバターとトレンドを掛け合わせてクリエイティブを制作
MZ:FIREBUG社では、クリエイティブの制作においてどのような工夫があったのでしょうか。
山宮:まず改めてですが、FIREBUGではタレントさんを3Dアバター化し、安価かつスピーディーに広告に利用できる「AVATORS」というサービスを提供しています。
今回はアバターを使用し、サイズや配信面に合わせて6種類の動画を制作しました。イースト駅前クリニックさんが訴求したい「来院実績280万人以上」「駅から近い」「悩みが周りの人に知られにくい」といった強みを踏まえて、クリエイティブに落とし込む作業をしました。
たとえば「来院実績280万人以上」を訴求するために、アバターのクロちゃんを大量に作りました。これもアバターを使わないとなかなかできない表現ですし、インパクトもあるので認知を取れるのではないかと考え、提案しました。
それに加えて、配信媒体でトレンドになっているフォーマットも踏まえました。たとえば、短尺縦型動画で当時流行っていた「〇〇5選」というフォーマットを活かして、クロちゃんが「イースト駅前クリニックのすごいところ5選」を伝えるように制作しました。
MZ:FIREBUGからのご提案を受け、イースト駅前クリニックとしてはどのように感じられたのでしょうか。
須部:クリニック全体として、出稿金額では競合他社になかなか勝てないけれど、新しさやおもしろさでは負けたくないといった想いがあります。FIREBUGさんとは以前からいろいろな取り組みをさせていただく中で、いつもおもしろい提案をいただける信頼感がありましたし、今回のご提案も「めちゃくちゃおもしろいよね」と話していました。
「3Dアバター」を使うという目新しさがありますし、AGAクリニックの広告でスキンヘッドのクロちゃんをあえて起用するというセンスもおもしろいですよね。アバターだとタレントさん本人を起用する金額感よりも費用を抑えられることも、制作を決断できた背景にはあります。
来院数120%に貢献 サーチリフトは411%に
MZ:イースト駅前クリニックでは、今回の施策によってどのような成果が得られたのでしょうか。
須部:来院数は前月比120%に着地できました。配信地域とした東京エリアは新規集患が鈍化傾向にあったのですが、それが回復した形となって良かったです。
動画自体の反響も非常に良いですね。普段はSNSで「イースト駅前クリニック」と検索をしても、月に1~2件発信があればいい程度でした。ただ配信時期は1週間で何件も関連コメントがされていましたし、「今まで見た広告の中でも一番おもしろい」といったポジティブな内容も多かったです。
MZ:広告出稿の施策ではあるものの、SNSで話題化して金額以上の成果が出たと捉えていらっしゃるのですね。他に数値的な成果として挙げられるものはありますか。
松尾:大きく3点あります。1つは、CPMが一般的なYouTube広告VLCの2分の1程度と非常に安くできた点です。これは今回のクリエイティブが3Dアバターとユーザーにとって良い意味で違和感のある注目の集まりやすいものにできたことに加え、まだ競合が少ないYouTube shortsオンリーの配信をしたからこそ実現できたことだと考えています。
2つ目が指名検索数の増加です。メインエリアとした東京の配信前後を比較すると、東京以外の地域では27.13%のインプレッション増加率であるのに対し、東京では63.16%増加。配信地域で明確に指名検索数が伸びていることが確認できました。
3つ目はサーチリフトの伸長です。広告に「接触したユーザー」と「接触していないユーザー」で自然検索数を比較すると、411%となりました。
中野:今回は繁忙期に合わせて配信したので、そもそも来院数や検索数は増えやすいタイミングだったと思います。ただ、各クリニックでの初診来院者数のデータをデイリーでモニタリングをしていると、配信期間終了後にある傾向が見えてきました。
非配信エリアは繁忙期を過ぎると、初診来院数が配信前の水準まで戻りましたが、配信エリアでは繁忙期を過ぎても減少幅を抑えられました。全体の来院者数になるので広告以外の影響も多いと思いますが、地域トレンドに差分が生じていたので残存効果もあったのではないかと考えています。
より大きく成長するには新たな挑戦が必要 認知と市場の拡大を目指す
MZ:今回の施策を踏まえ、イースト駅前クリニックでは今後、どのようなデジタル広告運用を展開されていくのでしょうか。
須部:自由診療のクリニックが増えてきたことで、当院がユーザーに接触すること、選択肢に入ることが難しくなっていています。いかにして選択肢に入っていけるか、「イースト駅前クリニック」を指名で選んでいただけるかは今後も重視していきます。そのために、質の良い広告やプロモーションの数を増やしていきたいと思っています。
MZ:オーリーズとしては、イースト駅前クリニックの挑戦をどのように支援したいと考えていますか。
松尾:一定数の初診来院数を確保することへのコミットは大前提です。その上で、より大きく成長するには、今まで行っていなかったような効果的な認知施策が必要です。クリエイティブや配信面など、こちらから様々なご提案をしながら、イースト駅前クリニックさんのやりたいことを実現していければ幸いです。
中野:現在はAGA以外の治療においても支援を始めています。今後、イースト駅前クリニックさんが積極的に市場を広げる側になっていけるような施策も、協力して実施していければと思っております。
MZ:FIREBUGとしては、今回の実績を踏まえ、3Dアバターの表現や制作力をどのように活かしたいと考えていますか。
山宮:3Dアバターでのクリエイティブ制作は、タレントさん本人が出演するものよりもかなりスピーディーかつ安価に制作できるのが利点です。広告配信においてはPDCAを回すプロセスは必須なので、その意味で広告配信に向いた表現方法ではないでしょうか。FIREBUGとしては、今後もタレントさんやインフルエンサーさんとの強いつながりを活かし、クライアントさんの新たなチャレンジをサポートしていきたいと思います。
3Dアバターの活用にご興味のある方へ
本記事で登場したFIREBUGの「AVATORS」は、有名タレントのアバターを自在にご利用いただける、サブスクリプションサービスです。タレントの3Dアバターで、TikTokやXなどの企業のデジタル広告のためのオリジナル動画や画像を制作できます。少し奇妙な、クセになるアバターを使ってインパクトのある広告を制作しませんか? ご興味を持たれた方は、公式ページからお気軽にお問合せ下さい。