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デジタルで広がる、オフライン広告の可能性

OOHの評価基準は視認者数だけではない YOUTRUSTから学ぶユーザーを巻きこむオフライン広告

「多くの人に見てもらう」をあえて捨てた新たなOOHの価値

 これら三つの事例を通して、YOUTRUSTのOOHには大きく二つの特徴があると私は考えています。

 一つ目が、「OOH自体が熱源となることで拡散を広げている」点です。私自身、OOHの戦略パターンは「ユーザーへのメッセージを発信するもの」と「ユーザーによる二次拡散を前提とするもの」の2通りだと考えています。

加藤が考える、OOHの戦略パターン2分類

 たとえば、美容・アパレル製品などの広告では、拡散よりも価値観や世界観を表現するブランディングに重きが置かれることが多いです。そのため、「ユーザーへメッセージを発信」する内容が多くなります。

 一方、YOUTRUSTのOOHは総じて、ユーザーによる二次拡散を前提にコンテンツ作りがされているのが特徴的です。言い換えると「より多くの方に見てもらうことよりも、より多くの方に写真を撮ってもらい、投稿してもらう」発想が強いと考えています。ゆえに、“写真映えする広告面”が多く選定されています。

 具体的には、一つ目の事例「すごい人は、ここにいる。」企画などで登場している「品川自由通路セット」のサイネージでは、広告面が高い位置にあるため、人が映り込むことなく44面の迫力がある写真を撮ることができます。なお、3分1回のロール放映となっているので、歩行者との接触数は決して多くありません。

 また、三つ目の事例「ダレカ」企画で使っていた「東急東横線渋谷ビッグ20」は、面している通路が広く、落ち着きがあるエリアで写真が撮りやすい反面、渋谷駅内では利用者が多くない特徴があります。

 このように、YOUTRUSTのOOH展開では、現地での視認者数は優先度を落としてでも、「写真映えする場所」が意図的に選定されていたと言えます。

画像を説明するテキストなくても可
YOUTRUSTのX公式アカウントより。同社の発信する掲載写真も“迫力”や“映え”が意識されている
OOHには「大きな面で、多くの人に見てもらうもの」という発想が今でも根強くあります。それゆえ、資本力のある大手企業が大型枠を買い付け、残りの枠を中小やベンチャー企業が買う状況が長らく続いている印象です。しかし、同社の施策は、面の選定基準を新たに考える上で大変参考になるのではないでしょうか。

出稿場所はリアルでも主戦場はWeb

 二つ目が、「OOHを展開しつつも主戦場はWeb上」である点です。一般的にOOHは、正確な効果計測が難しい分、視認者数や面のインパクトで効果が語られがちです。最近は、周辺歩行者数をカウントして数値化する動きもありますが、依然事例は多くありません。

 それに対して同社が展開するOOHでは、Webを主戦場と捉え、ゴールをUGCによるアテンション獲得に落とし込んでいるのが特徴的です。企画に参加している企業やSNS上でのユーザーによる能動的な投稿・拡散を喚起しており、彼らの関連投稿が認知拡大に大きく貢献していると感じます。こうすることで、施策の効果計測などもしやすく、企画の反省が行いやすい点も大きな利点と言えるでしょう。

 最近、特にスタートアップやベンチャー企業のOOH施策が増えていると感じます。直近では、「人通りの少ない路地」や「隙間スペース」にあえて出稿していたタイミーの事例もありましたが、その多くがWeb上での二次拡散を意識しているように思います。

 掲出されたOOHにはマーケティング施策のヒントが多く眠っています。YOUTRUSTのOOHにも注目しつつ、引き続き広告巡礼を通して得られた知見を発信していきます。

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この記事の著者

加藤 誠也(カトウ セイヤ)

株式会社ビズパ アドクロ編集長

 食品メーカーで営業職を経験後、2019年に同社入社。主に、編集長として広告・マーケティングの情報メディア「アドクロ」のコンテンツ制作を担当。「広告巡礼」を日課としており、Xでは見つけた広告事例に考察を添えて発信、テレビ出演やセミナー登壇も多数。 

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2024/03/08 08:30 https://markezine.jp/article/detail/44881

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