※本記事は、2024年2月刊行の『MarkeZine』(雑誌)98号に掲載したものです
【特集】お客様の「ご愛顧」を得るには?
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リニューアルは接客高度化の第一歩
──昨年8月、御社では会員プログラムの名称を「ハウスカード」から「UAクラブ」へとリニューアルし、提供内容も刷新したとうかがいました。そもそもどのような理念・戦略に基づいてリニューアルを実行されたのでしょうか?
旧ハウスカードプログラムでは、オンラインとオフラインの会員統合を実現しました。お客様は店舗で購入する場合も、ECサイトやアプリで購入する場合も、同じ会員IDを利用することが既にできていたんです。ただ、店舗における購買体験をさらに向上させるためには、お客様の“シグナル”をスタッフの接客に活かす必要があると考えました。
シグナルとは、オンラインでの商品閲覧やお気に入り登録などを指します。来店目的や興味のある商品をお客様に直接ヒアリングしながら探ることは接客スキルの一つですが、会員統合によってつながった情報を参照できれば、ヒアリングをしなくても来店時のニーズを把握して適切な接客ができるはずです。そのための第一歩として実行したのが、今回のリニューアルでした。
──具体的な変更点を教えてください。
ポイントを廃止してマイルを導入し、購入だけでなくお客様の様々な行動に対して「アクションマイル」というインセンティブを差し上げる仕組みに刷新しました。
旧ハウスカードプログラムでは購入額に応じてポイントを付与し、年間購入額でお客様の翌年のステージ(会員ランク)が決まっていました。たとえば、1回のお買い物で10万円分の商品を購入された方も、購入額2万5,000円のお買い物を4回された方も、同じステージだったわけです。また、アプリのインストールやメールの受信、ハウスカードとLINE公式アカウントのID連携もお済みで、数多くの商品をお気に入り登録してくださっているお客様でも、年間購入額が条件に満たなければステージを上げることができませんでした。
そこで、UAクラブでは「アプリのインストール」「LINEのID連携」「店頭での試着予約」「レビューの投稿」など、当社とつながるためのアクションを起こしてくださった方にもマイルを付与しています。その年の購入とアクションで貯まったマイルに応じて翌年のステージが決まるため、たくさん購入してくださった方だけでなく、様々な接点でご自身の情報を共有し、当社と深くつながってくださった方もステージが上がりやすくなる仕組みです。