CRM活動における勘違い、重要なのは「成功」だけでなく「失敗」を分析すること
データマーケティングの発展により、CRM活動においては、オウンドメディアへのアクセスや来店、購入履歴から顧客の行動を“メタ情報化”することで、顧客の購入までのプロセス(結果)を起点にコミュニケーションができるようになっています。
おおよそ読者の皆さんは、こうした環境の進化を積極的に利用されていると思いますが、CRM活動におけるデータ活用の効能をとりわけ上手く享受し成果をあげている企業もあります。そうした成功企業の共通点をいくつか紹介していきましょう。
まず1つ目の共通点は、なぜ購入に至らなかったのかの理由、つまり「結果の前にある原因」に着目し、顧客理解を深化させているということです。たとえば、アパレル業界では、「購入に至るまでの行動(来店時の試着体験の有無やお気に入りの店員・アイテムなど購入に至る要因)」と「実際の購入の有無(結果)」を測り、顧客の興味関心を理解する仕組みを構築しています。
ここで重要なポイントは、商品を「買わなかった」顧客の情報にも価値を置いていること、これにより顧客満足度を構造化しようとしていることです。こうして、顧客の購買行動の解像度を上げ、自社の商品やサービス価値を見直そうとしていく動きは各企業で加速しています。
「買わなかった」情報が重要である理由
なぜ、商品を「買わなかった」顧客の情報が重要なのか? それは、多くの企業において、ビジネスの最終ゴールである購入や契約は「レアイベント」だからです。
「なぜ購入に至らなかったのか」をデータで定量分析していく活動は、言わば「顧客の期待外れ」をトラッキングしていく活動です。あまり起きないレアイベント(購入)のみのデータをもとに改善を試行していくより、発生回数が多い「期待外れ」の要因を分析し、両方を組み合わせていくほうが顧客理解が進んでいくことは自明でしょう。
実際、過去に支援した企業で「なぜ購入するのか? しないのか?」という視点によるデータトラッキングから購入予測モデルを構築し、顧客理解を深化させた事例がありました。この企業は予測モデルを構築したことで、売れ残りの在庫量を半分以下に減少させることに成功。サプライチェーンにおける課題解決で大きな成果をあげました。
CRM活動は、生産計画や価格設定など顧客と直接的な接点がないビジネスプロセスにも影響を与える可能性を持っているのです。