生活習慣まで変えてこそ「ウエルネス」
磯山:先ほどの「家庭訪問調査」の他には、どのような顧客接点を持たれているんですか?
藤澤::コンタクトセンターを通してさまざまなお声をいただいています。23年1月から、コンシェルジュサービスの企業をグループ会社に迎え、サポートを内製化しました。
磯山:シニアの顧客とのコミュニケーションは、電話やメールのほうが良いなど、他の世代と違いがあるものですか?
藤澤:多様性があるので「シニアだからこれが正解」というのはあまりないと思います。多くの方がLINEを使っていますし、電話やDM、メール以外にも様々な接点を用意しています。
磯山:2023年には、会員向けの無料アプリ「Comado(コマド)」の提供を始めたのも話題になりました。どういうきっかけから始められたのですか?

藤澤:「ヘルス」の先にある「ウエルネス」を実現する上で、健康食品や美容商品だけではなく、生活習慣を変えていくことも重要です。Comadoは、お客様が生活習慣を変えるサポートをしたいと思い提供を開始しました。
たとえば、Comadoと連動した「サントリーウエルネスクラブ」という会員向け制度があり、商品の購入に応じてポイントを付与するだけではなく、「朝日を浴びる」「毎朝水を飲む」などの健康行動をしたらポイントを付与するという仕組みになっています。
健康食品+Comadoを組み合わせて、内と外からのトータルケアを提案していくことで、心と体が健やかな状態を実現していきたいと考えています。
磯山:シニアの皆さんは、アプリを使いこなされていますか?
藤澤:使い方がわからないといった問い合わせをいただくことがあります。当社では、どんなにデジタルを推進しても、そうしたお客様を絶対に置き去りにしてはいけないと考えています。たとえば、アプリを開く前に「わからなければいつでも電話してきてください」など、お客様に寄り添ったコミュニケーションも意識的に行っています。
磯山:顧客対応が複雑になることに対して、社内から「面倒だ」といった声が出ることはありませんでしたか?
藤澤:オンライン家庭訪問調査で全員がお客様の声を聞いていますし、当社ミッションとして「一人ひとりの『生きる』を輝かせる~体と肌と心のつながりを通じて~」を掲げており、全社員が同じ方向を向いていると感じています。
磯山:そこを徹底しているからこそ、顧客解像度が高いし、当事者意識を持って自ら動けるんですね。
ブランディングは広告担当だけが取り組んでも意味がない
磯山:サントリーウエルネスというブランドを顧客に届ける上で、大切にしている価値観は何ですか?
藤澤:ブランディングを広告表現の一種だと捉えず、全社員でブランドを作り上げることが重要だと考えています。ブランドはバリューチェーン全体を通して形成されるものなので、広告宣伝担当だけがブランドを意識しても意味がありません。
我々は「事業一貫」という言葉を使っていて、基本的に全社でブランド会議を行っていますし、商品開発の段階から広告宣伝の担当者が参加します。「事業一貫でブランドを作っていくこと」「作ったブランドをお客様に届けること」「届けたことによってお客様にウエルネスな状態になっていただくこと」、この流れを重要視しています。
磯山:全社でのブランド会議は運営が大変そうですが、そうすることで商品開発からアフターフォローまで一本筋の通ったブランドを作ることができ、お客様のウエルネスを実現できるということですね。