行動変化の背景を読み解く
利用業態や購入カテゴリの違いから購買行動変化の背景を読み取っていきましょう。図表4は利用業態の構成比、図表5は購入カテゴリの構成比です。
タイプによって利用業態に大きな違いがあることが見て取れます。慎重購買型はスーパーでの買い物が60%以上、コンビニでの買い物が約3%となっているのに対し、直感購買型はコンビニの構成比が高いという特徴があります。
慎重購買型は、コンビニをあまり利用せずスーパーを中心に買い物をしていることから、利便性よりも価格を重視していることがわかります。その背景には自分や家族の将来にリスクが残らないような選択をしたいといった心理を垣間見ることができます。直感購買型は、価格よりも利便性に重きを置いており、今を充実させたいという思いから、お金の節約よりも時間の節約に価値があると考えているようです。

購入カテゴリにおいても顕著な違いが表れています。慎重購買型は食品系、特に主食や日配品の構成比が高くなっており、自宅で料理をする頻度が高く、時間をかけてもお金の節約ができることを重視している様子がうかがえます。直感購買型は飲料・日用品・化粧品の構成比が高く、自分の時間の節約や自分磨きにつながる消費を重視している様子が見て取れます。

さらに、各カテゴリ別の購入金額前年比(2023年と2022年を比較)を見てみると、化粧品カテゴリ以外のすべてのカテゴリで直感購買型の前年比が慎重購買型を上回っています。また、意外なことに、慎重購買型は化粧品カテゴリの前年比が106.7%で最も大きいという結果になりました。こちらは値上げの影響に加え、2023年がアフターコロナ元年であったことも関係していると考えられます。
慎重購買型は前述の通り、必要性を考えて買い物をするタイプです。化粧品の購入個数の前年比が103.2%と増加していることから、コロナにより外出を控えていた時期は化粧品の必要性が低くなり、購買の優先度を下げていたようです。アフターコロナに入り、外出の増加とともに化粧品の購買も増加、その中で値上げラッシュも続き食品系のカテゴリで節約せざるを得ない、といった状況が想像される結果となりました。

生活者理解のための「価値観」データ
値上げが生活者に与える影響は一様ではなく、買い物に対する価値観によって反応の違いが見られることが明らかとなりました。また複数の価値観情報を駆使することで、目に見える購買行動の変化だけではなく、その背景を知ることができ、生活者のよりリアルな人物像を描くことが可能となります。
マーケットが縮小し競争が激化する中で、生活者に選ばれ続ける商品・サービスを生み出すためには、より細やかな生活者理解が求められています。価値観を切り口とした分析は、現状より一歩進んだ生活者理解の実現のために欠かせないものとなっていくでしょう。
