「慎重購買型」「直感購買型」の生活者が持つ価値観とは?
両タイプの生活者について、上記107項目の価値観スコアの違いを分析し、より詳細な人物像を描いていきます。下の図表2は、それぞれのタイプでスコアが高い価値観項目をピックアップしたものです。

SCIデータとSCIモニターへの意識調査をもとに推定した価値観スコアより特徴的な価値観を選定。
※推定に使用したデータ
(1)インテージSCI(15∼79歳) 期間:2022年9月-2023年8月
(2)SCIモニターを対象とした意識調査
・2023年度第1回Profiler (n=42,264)
・2023年度第2回Profiler (n=39,692)
・2023年度第3回Profiler (n=43,320)
・2023年度 美・健康に関する意識調査 (n=41,494)
慎重購買型の生活者は、「特売」「安物買い」「節約調理」といった価格志向な価値観だけでなく、「家族の健康」といったキーワードも特徴として挙がってきました。このことから、このタイプの生活者は、家庭を持ち家族のお財布を管理しているタイプで、自分のことより家族のために購買をしている人物像が思い浮かびます。
また、志向性としては安定志向・慎重派で、「現在未来のバランス重視」が特徴となっているように、今だけではなく将来も充実させたいと考えているため、リスクの少ない行動選択を好み、購買行動も堅実に行っているのだと推察されます。
一方、直感購買型の生活者は、「美容への積極投資」や「自分優先」といったキーワードが特徴的となっています。志向性としては、チャレンジ志向・好奇心旺盛なタイプであり、商品の選定基準においても、「ブランド」「グルメ情報」「新製品」といった点を重視しています。そのため、自己投資を惜しまず、話題のものや人気のものに目がない人物像だということがわかります。
慎重購買型の生活者とは対照的に、現在を充実させることを重視しているため、直感的で衝動的な購買行動につながっていると推察されます。
値上げラッシュによって購買行動はどう変化したか?
それではここから、値上げラッシュ時の購買行動の変化について見ていきます。図表3は、2023年4~9月における主な購買指標を前年同期(2022年4~9月)と比較したものです。生活者分類によって購買行動の変化がどう異なるのかに着目してみます。

購入金額はどちらのタイプも前年より増加しています。これは多くの商品の値上げが大きく影響しており、個数単価が約6ポイント増加していることからもわかります。慎重購買型においても5.9ポイント増となっており、価格志向の高い生活者ですら単価を抑えた買い物をすることが難しくなっているようです。
ただし購入金額の増加幅はタイプによって差が出ています。直感購買型の購入金額は前年から4.8ポイント増であるのに対し、慎重購買型は2.2ポイント増にとどまりました。
慎重購買型は、単価を抑えるのが難しい中、買い物回数や1回の買い物の購入点数を少なくすることで、支出の増加を抑えようと努力している様子がうかがえます。このタイプの生活者は、値上げラッシュにより購入商品の取捨選択がよりシビアになり、今まで以上についで買いをしないこと(買い物点数の抑制)や、ポイントが多くつく日や割引率が高い日にまとめ買いをすること(買い物回数の抑制)を心掛けているのかもしれません。
直感購買型は、前述の通り、話題のものや人気のものをつい買ってしまう傾向にあります。そのため、値上げの状況下においても支出を抑えることをあまり心掛けず、その場での欲求に忠実に買い物をしている結果、購買行動の変化が小さくなっていると考えられます。