同一人物でも、購買影響要因は変わる
問題なのは、対象ブランドが変わってしまうと(特にカテゴリーや価格帯が変わると)、同じ人でもこれらの購買影響要因が変わることです。この行動はすでに、データでしっかりと把握できています。逆に考えると、同一カテゴリーや同価格帯のブランドを担当しているマーケターにとっては、このロジックは非常に有効なのです。
もちろんCRMなどで自社ブランドの顧客や、見込み顧客を人で括っていることは、顧客をデータ化できていないマスマーケティングよりは、確実な手法でしょう。ですが、「いつまでもロイヤルカスタマーでいるのか」、「いつまでも見込み顧客であると認められる意識や行動パターンでいるのか」については、その程度を把握するには課題があるでしょう。つまり、人は変化するのです。
ですから、顧客をデータ化しないマスマーケティングのほうが、変化する顧客の括り方を変えて追いかけられる分、対応力があるとも言えるでしょう。

人の「カメレオン化」にどう立ち向かうか
現状では、人の「カメレオン化」については、研究が進んでいるとはあまり言えません。ヒトを個別に特定するマーケティング手法では、人はスタティック(静的)に意識や行動パターンを持っていないと困ります。せっかく人を特定したのに、その行動パターンが変化してしまうと、特定した意味がなくなってしまいますから。ですから、あえて気まぐれでコロコロ変わるということを、突き詰めてこなかったともいえるでしょう。
そこで意識や行動パターンを変えてしまう要因を考えてみたいのですが、それは専門である消費心理学の先生にお願いするとしましょう。
では、ヒトのカメレオン化にどう対応したらよいのでしょう。筆者の考えでは、ヒトの多面性を全部違うヒトと認識して、物理的に同じヒトに集約しないほうがいいと思っています。同じヒトでも別人格は別者と認識すべきでしょうね。ただ豹変する思考や態度については、単に別人格とするだけでは難しそうです。