東京ドームよりも身近な比較対象で実感させる【たとえ】
次に、消費者に伝えたい数値を、“たとえ”の活用で表現した二つの事例を紹介します。
一つ目が、2024年2月に渋谷駅で展開された楽天モバイルの広告。同広告では、同社サービスの契約数が600万回線を突破したことを記念して、この“600万”という数のインパクトを伝えるために様々な数と比較した内容になっています。

600万を対比している内容が身近なネタで、思わず「へぇ~」となるものも
おもしろいの
が比較対象として選定された事柄が、身近なネタである点。規模感を表現する手法としては、よく「東京ドーム〇個分」が用いられますが、実際は規模感のイメージが難しいと感じる人も多いと思います。その点、同広告の比較対象では、「飼い犬の数と同じくらい」や「佐藤さんと鈴木さんより多い。」「自販機の数の2倍くらい。」などと、“実際の数字は知らないが、実生活で何となく実感があるネタ”が挙げられています。そのため、600万のインパクトを肌で感じることができました。
二つ目が、2024年3月に実施された「スカルプDまつ毛美容液」の広告。同広告では、まつ毛にかかる1年間のダメージを表現する手段として、「約800㎏」という数値を活用していました。

800㎏だけだとイメージが付きにくいが、ホッキョクグマと言われると恐ろしく“重い”感じが伝わってくる
800㎏だけだとイメージが難しいかもしれませんが、同広告では、800kgを「ホッキョクグマ1頭を持ち上げるのと同じ」と表現。これによりインパクトがある広告になっています。
「何かにたとえる」ことは決して目新しい方法ではありません。ですが、対比として持ってくる対象の選定次第で、インパクトを与えやすい手法であると感じます。
違和感を与えて消費者に行動喚起させた三つの事例【違和感】
次に紹介するのは、2023年7月に渋谷駅で掲載された、友達と遊べるたまり場アプリ「パラレル」の広告。

同広告では、「あの佐藤もたまってる。」と大きく描かれており、それ以外の説明は何もありません。見た人がついツッコミを入れたくなる違和感のあるクリエイティブで、私も撮影後にこの広告の真意が知りたくて「パラレル」のサービスをWebで検索してしまいました。
2023年12月に新宿駅で掲載された「カクヤス」もおもしろい見せ方をした広告でした。特に印象的なのが「お、おい、ここ見て見ろよっ!」とQRコードに誘導する潔さ。思わず気になって立ち止まってしまいました。

同広告は、“ズバン”という効果音が効いているのと、エフェクトの効いたデザインの掛け合わせにより、QRの先に何があるのか覗きたくなる仕掛けになっていたように思います。
通りがかりの違和感という点では、2024年3月に中野駅で掲出された「焼きとん大黒」のオープン告知広告もユニークな事例でした。

一見すると新規オープンにともなう求人広告に見えますが、広告には「常連客募集」の文字。加えて、右側には、勤務条件のようなデザインで、店舗の営業情報が記載されています。求人広告のようなデザインで、「常連客募集」というキーワードで違和感を誘い、関心を持ってもらう見事な広告でした。
このようにこれら三つの広告は、クリエイティブでちょっとした違和感を与えることで興味を持ってもらう仕掛け作りができており、話題化に成功していました。