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広告/マーケティングにおける7つの転換点~『2030年の広告ビジネス』番外編

これからの広告人へ告ぐ 生成AI時代、コンサルと差別化するAI活用の観点【横山隆治×細金正隆対談】

広告会社のAIとコンサルのAIとの差別化:クリエイティブの観点

横山:先ほどおっしゃったように、広告会社もクリエイティブのプロセスでAIを使うようになっていますが、コンサルティング会社によるAI活用とどのように差別化していくかが大きなテーマになりそうです。

細金:はい、少なくとも大手広告会社では喫緊の課題だと思います。差別化のためには、これまで培ったクリエイティブのメソッドやノウハウを学習させた、独自のAIを確立することがいちばんのポイントになるのではと思います。

横山:その独自AIが確立したら、あとはそこにインプットすれば、的確なアウトプットを生成してくれる?

細金:ブランド広告のような、シンプルなようで統合的な判断が必要なものは100%任せきりにはできないのでは、というのが私の見解です。企画にまつわる業務の負荷や時間は大幅に短縮しても、あくまでそのAIを壁打ち相手に、クリエイターが主導することになると思います。

 以前個人的に、商品カテゴリー別に過去に評価の高いとされるコピーをAIに学習させて‟自動コピー生成”を実験したんですが、うまくいかなくて。結局、学ばせるのは過去のコピーですし、それはその時代の空気感だから成立した言葉なんですよね。

横山:なるほど。その実験でAIの案は古臭かったり、ピンとこなかったりしたんですね?

細金:そうなんです。世の中には耐用年数がすごく長いコピーもありますが、時代に左右されない要素が重要な場合ばかりではないし、実際そうではないものがほとんどです。

 やはり、たった一行でも、クリエイターは命がけで絞り出しているわけで。‟命がけ”を解説するなら、人間理解や文化的背景の理解、時代の空気の理解、またそれらと関連した心の機微や情緒を察知しようと尽力することだと思います。……それも、いずれAIが担うかもしれませんが。

横山:そうですね、「人がどう感じるか」の大量なデータを学ばせれば。

細金:はい。文化的背景や年代の指向性などはマーケティングデータでインプットできますし、人の感じ方は、表情やしゃべり方などを読み取ったセンシングデータなどを使えます。それも、実装されつつあります。

横山隆治事務所(シックス・サイト)代表 横山隆治氏
横山隆治事務所(シックス・サイト)代表 横山隆治氏

広告会社のAIとコンサルのAIとの差別化:マーケティング課題抽出の観点

横山:もうひとつ、コンサルのAI活用と差別化できるポイントとしては、広告会社だから持っている広告のエグゼキューションのデータを活用することだと思います。

 前提として、この数十年で広告会社が広告クリエイティブだけでなく、もっと上流のマーケティングから広告主を支援するようになってきた経緯がありますよね。要因のひとつは、コンサル会社の上流への関与が強まってきたことで、呼応するように広告会社もそうしないと付加価値の高い仕事にならなくなっています。

 それを踏まえて、連載第5回「ID取得型マーケティングの限界」でも解説しましたが、マーケティングから課題を抽出し、解決策をプランニングし、エグゼキューションし、再び課題を抽出する……というループもAIが自動最適化するなら、広告会社の強みはエグゼキューションのデータになると思うんです。

細金:たしかに。そのループはAIに任せて、今よりもっと上流の話に集中できる。

横山:本来、結果のデータから次のステップを抽出して然るべきですが、今までは広告効果をデータ化しきれなかったこともあって、やりっぱなしになっていたと思います。今後は膨大なエグゼキューションを実行している現場こそ、結果のデータを基にAIに新たな課題を見つけてもらい、次々とループを回せそうな気がします。

細金:ですね。現場って、何が起こるかわからない不確定要素が多いですし、顧客の生の声みたいなデータ化できない要素もたくさんあって、それが次のプランニングにつながるので軽視できない。その非データの価値と、AIの機能をうまく融合できるといいですね。

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AIで気持ちを揺さぶる広告はつくれるのか?

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この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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2024/06/11 08:00 https://markezine.jp/article/detail/45753

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