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顧客満足度2年連続No.1「スカイマーク」のCS・CX戦略 専門家と紐解くPDCAと現場巻き込みの鍵

人口減少にともなって新規獲得による事業成長が困難になり、他方では顧客ニーズが多様化、コモディティ化。以前に増してCXの改善が着目されるようになっている。そのような中で、JCSI顧客満足度ランキング(国内長距離交通部門)で2年連続No.1を獲得しているスカイマーク。今回はスカイマークのCS・CX担当者と、CX領域に詳しい研究者である法政大学名誉教授の小川氏、CXマネジメントを多数手がけているインテージ・田原氏に取材し、CX推進に必要な考え方、具体的なアクションを探った。

顧客満足度ランキング2年連続1位のスカイマークがCSマネジメントに取り組んだ理由

━━スカイマークでは、JCSI顧客満足度ランキング(国内長距離交通部門)で2年連続No.1を獲得するなど、CS(※1)のマネジメントに注力されている印象です。貴社が注力してきた背景をお教えください。

画像を説明するテキストなくても可
  • (写真左)スカイマーク株式会社 執行役員 DX本部長 中川 卓氏
    外資系コンサルティング会社を経て、以前から乗客として高頻度に利用していたスカイマークに入社。DX本部担当の執行役員として、DXをミッションとした取り組みを統括する
  • (写真中)スカイマーク株式会社 CS推進室 室長 戸田 健太郎氏
    大手航空会社にて約10年勤務した後、米国留学を経て米国の航空会社に入社。2011年にスカイマーク入社後、空港支店長を経てCS推進室長となる
  • (写真右)スカイマーク株式会社 CS推進室 副室長 井上 弥緑氏
    スカイマークの客室乗務員3期生として、就航1ヵ月後の1998年10月に入社。複数の部署を経て、現在はCS推進室で搭乗後アンケートの分析などを担当している

戸田:当社はフルサービスキャリアとLCCとの間にポジショニングしており、フルサービスキャリアに近いレベルのサービスを、身近な価格で提供しています。

 当初からCSに注力をしていたわけではありませんが、2015年の1月に経営が一度破綻し、その後“新生スカイマーク”として生まれ変わる際、まずは基本となる定時運航率の改善にフォーカスしました。

 そこから2年半ほどで、破綻前に下から2番目だった定時運航率が国内航空会社の中で1位になれました。この時、さらなる高みを目指すと同時に、より顧客満足度の向上に取り組み、運賃が安いだけのエアラインとの差別化を図るという方針を打ち出したのです。こうして、CSの向上に取り組み始めたのが2015年ですが、DX推進を担う中川もCSやその先にあるCX(※2)に重要性を見出していたことから、現在はCXへの進化に向けた社内基盤を確立するべく一緒に活動しています。

スカイマーク公式サイトより

中川:ビジネスの観点からも、ロイヤルティを高めてリピーターを増やすことが効率的であり、そのためには顧客体験価値を向上させる必要があります。しかし、現実的には時間やコストが限られている中で、カスタマージャーニーのすべての顧客接点で一気に価値を高めるのは難しいです。そこで、お客様の視点から見てより印象的な顧客体験を見極め、そこに優先的に注力することが、効率的にDXを推進する上でも重要だと考えました。

※1 CS:Customer Satisfaction/顧客満足
※2 CX:Customer Experience/顧客体験

結果よりもその過程を見るCXの視点 横断的な協力が必要

━━小川さん、田原さんに伺います。企業がCXやそのマネジメントに着目する背景を改めてお教えください。

画像を説明するテキストなくても可
  • (写真左)法政大学 名誉教授 小川 孔輔氏
    法政大学経営学部名誉教授。マーケティング領域を専門とする。2007年から公益財団法人日本生産性本部に参画し、日本版顧客満足度指数(JCSI)の開発に携わり、企業の顧客体験に関わる設計改善やデータ活用をしたコンサルテーションを担当
  • (写真右)株式会社インテージ CXコンサルティング部 田原 祐太氏
    ITベンチャー企業を経て2011年にインテージ入社。以降は一貫してサービス業、耐久消費財メーカーなどのマーケティング支援やデータ分析に携わる

小川:「CS」はサービスが提供された結果ですが、結果を良くするためには当然、その過程であるカスタマージャーニーそのもの、顧客体験をより良くしなければなりません。他方で、顧客が求める体験はそもそも一律ではなく、多様であることもわかっていますし、企業としてもターゲットを絞るという考え方もあります。何をどうすることで、特定の層が満足してリピーターになっていただけるのか。顧客体験の中身を分析していく必要がある。これに世の中の企業が気づいてきた、というのが「CX」重視に変わった大きなポイントだったと思います。

田原:以前はビジネスパーソンの間でもCSとしか言われておらず、部署それぞれが一部分の満足度を高める取り組みにとどまる企業が多かった印象です。企業視点でもその過程にある体験を横断的に見ることが重要だと気づいた結果、CXという言葉のほうが多く使われるようになったと捉えています。

小川:自社のCXを見ていくと様々な課題が見つかると思いますが、着手の優先順位をつけることが重要です。スカイマークさんは最初に定時運航率の改善、2番目にサービス改善に取り組んだ。最も重要なポイントを適切に見極めて素早く実行されたことが成功につながったと思います。

━━ここからはスカイマークでこれまで行ってきたCSマネジメントの代表的な取り組みについて段階的に伺います。最初期からの取り組みの変遷をお教えください。

井上:2018年度にCSワーキンググループを発足し、「みんなの気持ちと本気で向き合う」というスローガンを掲げて、まずはお客様の声を聞くようにしました。具体的には、現場のスタッフが直接聞いたお客様の声を登録する管理システム「DUMVO」を導入し、最初はとにかくネガティブコメントの解消・改善を中心とした「不満足の解消」と「嫌われないスカイマーク」を方針に据え、破綻以前のネガティブイメージを払拭する目的でこのような活動をしていました。今は「満足度の向上」「より好かれるスカイマーク」に180度転換して活動しています。

 その後、よりお客様の声を直接聞くために「搭乗後アンケート」を導入しました。これが現在も続くお客様からの声を生かしたCS推進のPDCAサイクルの基盤になっています。アンケートは搭乗券のQRコードを読み取って回答いただくので、お客様の声(VoC)とともにお名前や路線なども自動的に登録されるシステムになっています。

 アンケート内容は、「空港評価(出発地空港での地上係員の対応)」「客室評価(航空機内での客室乗務員の対応)」「全体評価(ご搭乗についての全体満足度)」「利用目的」「利用頻度」「フリーコメント(任意)」の6つ。毎日500~700件ほどの回答データが集まります。問題はそれを現場に取り入れてもらえるかどうかでした。

次のページ
集めたVoCが現場で役に立つために必要だったこと

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この記事の著者

落合 真彩(オチアイ マアヤ)

教育系企業を経て、2016年よりフリーランスのライターに。Webメディアから紙書籍まで媒体問わず、マーケティング、広報、テクノロジー、経営者インタビューなど、ビジネス領域を中心に幅広く執筆。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

提供:株式会社インテージ

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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2024/06/27 12:00 https://markezine.jp/article/detail/45767

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