新たな計測の指標を求める、バンダイナムコの取り組み
山田:バンダイナムコエンターテインメントさんでは、広告の計測に関する新しい取り組みをされているのですよね。
田畑:iOS14.5以降で広告の計測が難しくなったこともあり、短期目線と中長期目線での取り組みを実施しました。短期目線の取り組みは、既存のデータや今取得可能なデータの中から、広告運用を継続するための最適解を検討しています。
田畑:中長期目線では、個別の案件単位ではなく、予算全体の最適配分を従来とは別の評価指標でやるというものです。新しい分析方法も取り入れ、それぞれ推定ROASとMMM(マーケティング・ミックス・モデリング)と呼ばれる仕組みを自社で開発・運用しています。
ATT(App Tracking Transparency)の影響を受けたiOSの出稿に対応するために、売り上げやUU数といったメディアやMMPなどから取得可能なシグナルから、広告出稿に対する回収率がどうなっているかを予測する数理モデルをグループ会社のバンダイナムコネクサスと独自開発していて、これは特許出願中です。日々の運用は、こちらのROAS予測モデルを使い行っています。
田畑:テレビCMや雑誌などのオフライン広告も含めて、出稿後の結果がアプリの中のイベントにどう紐づくか、全体の寄与度を分析する仕組みも開発しました。
メディアごとに「予算をどの程度かけると限界効率がどこになるか」「どの媒体にどれくらいの割合で予算をかけると最適なインストールやゲーム内KPIを達成できるのか」を割合で表示するようになっています。これらを使って、メディアプランニングの検討から一番インパクトが大きかった施策をインクリメンタリティで計測する仕組みです。
山田:これをデベロッパーさんが独自でつくるのは相当難易度が高いですよね。実はUNICORNではMMMを外部から簡単に導入できるソリューションを提供しているので、後ほどご紹介します。
「どんなユーザーに届けたいか?」に立ち返る
山田:オンライン広告の課題に対応するためには、どうしたらよいとお考えですか。
家門:バンダイナムコエンターテインメントさんのように外部ツールに任せきりではなく、自分たちで見るべき新たな指標をつくることはやるべきです。しかしこれは資本もパワーもかかります。
誰でもできることとしては、広告をどうするか考える前に、初心に立ち返り、「どういう人に届けたいか?」に正面から向き合うことが大事だと思います。
田畑:弊社でもアプリのファンの方への定量・定性調査を行っていますが、それはすごく大事なことですね。
家門:僕らは毎月定量調査をやっていて、年間で100名くらいユーザーインタビューをしています。「何を見てゲームに来ますか?」と聞くと、XかYouTubeと答える人が多いです。
広告計測SDKは素晴らしいツールですが、それだけを見ていると、ハックしている計測結果を見て、実は効果の出ていたXの出稿を止めてしまうこともあり得ます。もしSDKでXの数値が悪くても、ユーザー調査ではXが見られているということが言えれば、配信を続ける判断ができますよね。
山田:適正に評価できる仕組みを模索していけば、ゲームの未来を作っていけそうですね。僕らもたくさんのお金を預かって広告配信をしているので、ゲーム業界のビジネスを伸ばすサポートをしたいと思っています。