テレビはどう生き残るか~鍵を握る「インプレッション取引」を成功させる仕組みとは~
─ テレビCMセールスに迫る変革の時。「GRP取引」から「インプレッション取引」へ
─ GRP取引が持つ課題とは。テレビの本当の価値を「質と量」で捉え直す
─ テレビCMの価値を再定義するために不可欠なのは、デジタル広告と同様の「ターゲットCPM」(本記事)
─ 「インプレッション取引」でテレビ局のスポットCM収入はどう変わるか。総収入試算と仕組みへの課題
─ テレビCMの「インプレッション取引」を成功させるためのアイデアと仕組み
─ 「インプレッション取引」と「GRP取引」の共存で局収入は最大化する
─ 「インプレッション取引」の導入は広告主から急かすべき?広告主視点でテレビCMセールスの変革を考える
インプレッション指標で見たターゲット毎の価値、ボリュームとCPM
近年、様々なテレビ視聴データが各社から提供されるようになり、その便益のひとつとしてデジタル広告と効率を比較したり、あるいはもう少し進んで「テレビCM+デジタル広告」の統合リーチ&フリークエンシーを測定したりするために、テレビCMのGRPはインプレッション換算されるようになってきました。
そこでインプレッションを指標として、テレビCMにおけるターゲット毎の価値、そのボリュームとCPMの関係を整理してみます(図表1)。

すると、①テレビCMのCPMは安い、ということになりますが、それは男女4歳以上の「個人全体」の場合で、今さらそれをターゲティングが前提となるデジタル広告とそのまま比較する訳にもいきません。
かたや、②デジタル広告の流儀になぞらえて、複数のAND条件で「メインターゲット」だけに矮小化してテレビCMを評価するのは、前回までにご紹介したようにあまり正しくなさそうです。
とはいえ、③せっかく個人ベースの指標があるにもかかわらず「コアターゲット」(たとえば男女13~49歳)として、ざっくりと括り直してしまうのはもったいなく、マーケティング指標としても十分とはいえません。人口の半数近くを1つのセグメントとしてしまうコア視聴率は本当に広告主が求める新しい指標になっているのか? 少々疑問に思えます。
そこで、④テレビCMの特性を生かした「周辺ターゲット」を含む「総量評価」で、適切なCPMを“質と量”で再定義していくことが必要となります。これは、コネクテッドTV(CTV)などでのストリーミング視聴が国内でも増加する中で「テレビ×ストリーミング」時代における重要な評価の考え方となります。
図表2は、実際のテレビCMキャンペーンにおいて上記①〜③のCPMを試算してみたものです。事例としたのは若者層向けに新発売された茶系飲料で、全日型スポットを関東エリアでは個人全体で381GRP投下しています。%コストをキリ良く15万円と仮定するとCM費用は約5,700万円です。

このキャンペーンの総インプレッション数は1億6,300万回ですので、①個人全体のCPMは約350円となります。たしかに非常に安いです。
ですが、②メインターゲットをF1(女性20~34歳)とするならば、CPMは6,940円まで上昇します。つまり、%コスト15万円でGRP取引されたこのCM枠(340本)を仮にF1だけのインプレッション数で取引するなら、CPMは約7,000円で売買されないとテレビ局収入は現状維持もできないということになります。
インプレッション数は合算できるため、男性を加えたMF1層(男女20~34歳)でも見てみます。F1のインプレッション820万回にM1の810万回を合算した1,630万回で試算してみるとCPMは3,500円になりました。当然ですがCPMは約半分となります。
しかしMF1へのインプレッション数は、この事例に限らず平均で個人全体の10~11%程度しかありません。今後、もしMF1比率がこれよりも下がることになれば、このCPMはもっと高騰することになります。
③コアターゲット(男女13~49歳での試算)は約1,950万人ですので、関東エリアのテレビ視聴測定対象の4,200万人に対して人数比率は46.4%となりますが、インプレッション比率では33.6%でした。CPMは1,050円となりました。
整理すると、CPMは①個人全体:350円、②メインターゲットF1:6,940円/MF1:3,500円、③コアターゲット:1,050円です。④メインターゲット+周辺ターゲットのCPMは、この①と②の間になることになります。
ただし、①~③は過去のキャンペーンからCPMを試算したものです。④は、これから設定していくCPMとなります。したがって、周辺ターゲットの設定により③より高いか/安いかは変動します。また、④は単に1つのCPMを設定すればいいという訳でもありません。