総量評価のインプレッション取引でテレビ局は増収する
関東エリアA局のとある1週間のCM量を集計した結果、スポットは合計で5,156本、10,867GRPでした。当然ながら、これらは局毎に異なりますが、前述例と同様に%コストを15万円とすると週のスポット総収入は約16億3,000万円ということになります。これは、この局のIR情報から週割した数字とも大きな差は見受けられませんでした。
また、総インプレッション数は48億6,000万回でしたので平均CPMは335円になります。前述の飲料メーカーが実際はいくらで買っているのかはわかりませんが、CPMはほぼ同水準ですので、キャンペーン例の試算としては概ね合っていると思われます。
そこで、インプレッション取引を導入していく中での可能性、アイデアを見つけるために、かなり極論ですがスポット全枠を女性20歳以上(F20+)だけのTCPMでインプレッション取引した際の収入を試算してみました。本来インプレッション取引はカスタムセグメントにも対応していくべきですが、セグメント間の重複、また抜け漏れがないので、ここではわかりやすくデモグラで試算します。
F1をメインターゲットとしてCPMを1,400円、周辺ターゲットのF2(女性35~49歳)1,200円、F3(女性50~64歳)800円、F4(女性65歳以上)600円と段階的にTCPMを設定しています(図表5)。女性19歳以下および男性群については、他との比較がないので例外的にすべて0円としています。
この試算から言えることは、現状のままの視聴者構成だったとしても(過去実績から試算しているため)、全スポット枠をF20+のインプレッション(全体の約52%)だけで取引してもテレビ局の総収入は約21億6,000万円となり、30%以上の増収が見込める計算となります。
極端な値引きセールスを除くと、一般的な広告付き無料ストリーミング(CTV広告に限定していない)のバイイングに必要な広告単価は通常CPM2,500~3,000円前後からですので、これでもむしろ安すぎるくらいのTCPMで試算しています。
もし、基本的にプレミアムコンテンツにしか挿入されないテレビCMのF1のインプレッションが、TCPM1,400円以下でしか売れないとしたら、そこは逆にもっと別な大きな問題がありそうです。しかし、現実的にはすべてのスポット枠を同じターゲットに向けて売ることもできませんから、もっと具体的なインプレッション取引の仕組みとシミュレーションも必要です。
次回は、総収入試算のもう少し細かなご説明といくつかの試算例などをご紹介していきます。
