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行動科学で「購買行動」を変える!心理バイアスのマーケティング活用術16と2分の1選【お薦めの書籍】


 寄付金額、ワインのボトル、石けんの純度……。あなたの何気ない選択の裏には、実は巧妙な心理バイアスが隠されているかもしれません。書籍『自分で選んでいるつもり 行動科学に学ぶ驚異の心理バイアス』(東洋経済新報社刊)で紹介される、行動科学の16と2分の1個のアイデアは、マーケティングの打ち手に新たな視点をもたらします。

購買行動に影響を与える心理バイアスを使いこなそう

 突然ですが、質問です。あなたが寄付をするとします。次のうちどの金額を選びますか?

  • 毎月27ポンド
  • 毎月18ポンド
  • 毎月7ポンド

 異なる3つの金額が並んだ場合、多くの人が真ん中の金額を選びがちです。これは「極端回避」と呼ばれる心理バイアスの一例です。このような心理バイアスは、私たちの購買行動にも大きな影響を与えています。

『自分で選んでいるつもり 行動科学に学ぶ驚異の心理バイアス』
『自分で選んでいるつもり 行動科学に学ぶ驚異の心理バイアス』
リチャード・ショットン(著)、上原裕美子(訳) 東洋経済新報社刊 1,980円(税込)

 今回紹介する書籍『自分で選んでいるつもり 行動科学に学ぶ驚異の心理バイアス』(東洋経済新報社刊)は、このような心理バイアスをマーケティングに活用する方法を解説しています。著者のリチャード・ショットン氏は、行動科学をマーケティングに応用する専門家で、GoogleやMetaなどの有名企業をクライアントに持つコンサルティング会社の創業者でもあります。

 「心理学」や「行動科学」と聞くと、実用的ではないと感じる人もいるかもしれません。しかし著者は、「行動経済学や心理学以上にセールスやマーケティングに関連のある学問は考えられない」と断言しています。実は、この分野では130年以上前から研究が行われており、膨大な研究結果が蓄積されているのです。

 本書では、そんな膨大な研究結果の中から、著者が選りすぐった16と2分の1個のアイデアが紹介されています。しかも、行動科学の実験結果と理論だけでなく、それをマーケティングに応用するための具体的な展開例とともに記されているところが、本書の魅力です。

今すぐマーケティングに応用できる行動科学のアイデア

 早速、行動科学をマーケティングに応用するアイデアを一部紹介していきましょう。クイズ形式で出題するので、一緒に考えてみてください。

 1つ目の例は、石けんの価値を伝えるための文言です。どちらの文言のほうが、より関心を引くでしょうか?

【A】「この石けんは純度99.44%」
【B】「この石けんは純度100%」

 この場合は、具体的な数字で伝えているAのほうが、印象に残りやすいそうです。この数字はP&Gの「アイボリー」という石けんブランドが実際に謳っているものでもあります。また、数字が細かいほど人に「正確さ」を連想させ、商品やブランドの信頼性を高めることにつながります。

 さらに、この細かい数字がもたらす心理バイアスを価格設定に応用した場合、細かい金額で提示した方が「お得感」を与える効果があり、希望価格に近い金額で購入してもらえたという実験結果も紹介されています。ちなみに、本書で取り上げられているアイデア数の「16と2分の1」も、このバイアスにちなんでいるそう。

 次は赤ワインを例に、商品の品質イメージが高まる心理バイアスを紹介します。赤ワインのボトルを開ける時のことを想像してみてください。AとBでは、どちらが「品質」を高く評価されるでしょうか?

【A】ねじ切り式のキャップを開ける
【B】コルクを抜く

 中身は同じワインながら、被験者はBの「コルクを抜く」の「品質」を10%高く評価し、「おいしさ」も4%高く評価する結果になりました。なお、高評価の理由は、コルクと品質を結び付けたからではなく「開栓作業の手間をかけたから」だそうです。

 マーケティングでは「簡単にする」ことが良しとされがちですが、本書を読むと「面倒にする」ことにも効果があるとわかります。ブランドを売り込むにあたって、面倒にすることで品質に対する評価の向上が期待できるためです。

 その一方で、消費者の行動変容を促す場合は、簡単にすることが有効とのこと。そのため状況に応じて、どちらの作戦にするか判断する必要があるのです。

商材や対象年齢によってバイアスのインパクトに差

 本記事の冒頭で、金額が3つ提示された場合、人は真ん中を選びやすくなるという「極端回避」バイアスをご紹介しました。本書では、商材の特性と対象年齢層によって、極端回避バイアスがもたらすインパクトの大きさに差があることにも踏み込んでいます。

 対象が実用品の場合、高額な支払いという苦痛を下げることが重要となり、中間の選択肢を選ぶ傾向があった。一方で、嗜好品の場合は喜びを求めることが重視され、中間を選ぶ傾向は比較的低かった。(中略)年齢層が高いほど、極端回避バイアスが強くなるのだ。

 他にも、組み合わせると極端回避バイアスのポテンシャルがより高く発揮される「順序効果」や「おとり効果」といった理論が紹介されています。

 本書に登場するアイデアを、自分の購買行動に置き換えて考えてみると、タイトル通り「自分が選んでいるつもりで、実は選ばされていた」ことに気づかされます。マーケターであれば事例研究をする際に、本書で登場するアイデアと照らし合わせてみることで、新たな気付きを得られるかもしれません。

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この記事の著者

竹上 久恵(編集部)(タケガミ ヒサエ)

早稲田大学文化構想学部を卒業後、シニア女性向けに出版・通信販売を行う事業会社に入社。雑誌とWebコンテンツの企画と編集を経験。2024年翔泳社に入社し、MarkeZine編集部に所属。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2024/07/10 17:55 https://markezine.jp/article/detail/46104

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