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【特集】拡大中の注目市場「フェムテック」の現在地

TENGA「iroha部」のキーマンに聞く、女性の性に対する認識を変えたマーケティングの軌跡と展望

 フェムテック・フェムケアを考える際、セクシュアルヘルスは欠かせない観点だ。近年、“女性 の性”を取り巻く環境は大きく変わりつつある。変化の一翼を担っているのが、性のオピニオンリーダーとして長く発信し続けているTENGAだ。今回は同社の西野氏と月島氏に、女性に向けた生活者や社会の意識の変化、マーケティングの変遷、そしてビジネスの観点で今後フェムテックに関わりを持ちたい企業に向けたヒントをうかがった。

売上成長は平均37%、数字で見る「女性の性」の変化

――TENGAは2013年より、女性向けセルフプレジャー(※)アイテム「iroha」を展開されています。これまでの変化について数値的な観点から説明いただけますか。

 ※自分の身体と向き合う行為で、セルフケアと地続きのもの

西野:irohaの国内における売上は、2021年3月~2024年3月の3年間で平均37%ずつ成長しています。また、販売店数は2019年から2023年の間で10.7倍になりました。

 同じ期間のデリケートゾーンケア(インティメートケア)アイテムの販売店数は、59倍の伸びを記録しています。これはドラッグストアに展開していただけたことが大きく影響していると思われます。

株式会社TENGA マーケティング本部 国内マーケティング部 マーケティング・ディレクター 西野 芙美氏
株式会社TENGA マーケティング本部 国内マーケティング部 マーケティング・ディレクター 西野 芙美氏

 当社の女性向けセルフケアブランド「iroha INTIMATE CARE」がローンチした2017年当時は取り扱い店舗もほとんどなく、インフルエンサーに紹介をお願いしてもNGが続出するような状況でした。そこから比べると大きく変化したと言えます。

 情報発信の面でも幅の広がりを感じます。たとえば、ペイドメディアではセルフプレジャーアイテムの広告を出せるメディアが限られていましたが、昨年全国紙でirohaの広告掲載を実現しました。またXでも制限が解除され出稿が可能になりました。

月島:SNSの活動も変化しています。当社のアカウントでも最初はオウンドメディアの更新をお知らせするなど、限定的な情報発信をしていました。

 そのため、セルフプレジャーアイテムの具体的な使用感が気になっている方や、セルフプレジャーアイテムを使用している・使いたいと思っていることに不安や罪悪感を感じている方に、実際に役立てていただけるような情報がお届けできていなかったかと思います。

 そこで、2021年頃から社員が顔を出して出演するインスタライブをスタート。使用方法を具体的に説明したり、ゲストの方をお招きしてアイテムを紹介したりするようになりました。さらに昨年の秋頃からショート動画の投稿を始めたところ、総再生数が約630万回と私たちの想定をはるかに上回る結果に。これまで接点を持てなかった方たちにもアプローチできていると実感しました。

 2023年度に行った調査では、irohaを知っている方の4人に1人は「SNSをきっかけに知った」と回答されています。

株式会社TENGA マーケティング本部 国内・アジアコミュニケーションデザイン部 兼 ブランド経営本部 月島 のの氏
株式会社TENGA マーケティング本部 国内・アジアコミュニケーションデザイン部 兼 ブランド経営本部 月島 のの氏

「自分らしい性のあり方」を求めることは「はしたない」?

――数値の変化や情報発信の仕方を見ても、「女性の性」に対する認識が変わってきていると感じます。性のオピニオンリーダーとして長く発信を続けてきた御社が変えてきた部分もあるかと思います。これまでどのような取り組みを進めてきたのでしょうか?

西野:irohaは一貫して、女性一人ひとりが自分らしい性のあり方を見つけ、さらにセルフプレジャーやケアなど、自分にとって適切な行為を選べる社会になってほしいと考えています。

irohaのアイテム
irohaのアイテム

 しかし、まだ「自分らしい性のあり方」を求めること自体が「はしたない」という社会通念があり、その道が絶たれている状態だと感じます。そのため、まずは「自分らしい性のあり方」を求めてもよいと思える環境を作り、その実現のために様々な方法を提案するといったサポートを行っています。

 自分で自分の体を知り、どうすれば心地よく過ごせるかを知ることは大切です。また、更年期障害や閉経後のGSM(生殖器・尿路症候群)など、女性は生涯を通じて様々な変化や課題に直面します。これらをネガティブに捉えるのではなく、適切な対処法を知り、選べるようになる。そのような社会の実現を目指しています。

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性を当たり前のこととして発信する「iroha部」

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この記事の著者

和泉 ゆかり(イズミ ユカリ)

 IT企業にてWebマーケティング・人事業務に従事した後、独立。現在はビジネスパーソン向けの媒体で、ライティング・編集を手がける。得意領域は、テクノロジーや広告、働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2024/09/11 09:30 https://markezine.jp/article/detail/46307

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