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第106号(2024年10月号)
特集「令和時代のシニアマーケティング」

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エビデンスベーストマーケティングの基礎

パンテーンの圧倒的な強さを解剖。ブランド成長の要「浸透率」とは、どのような指標なのか?

 前回、前々回の記事では、「浸透率がブランド成長のメインドライバーである」という話をしてきました。しかし、実際どうすれば浸透率を伸ばせるのでしょうか? そもそも浸透率とはどのような指標なのでしょうか? 数回に渡って、浸透率という変数の特徴・特性についてファクトベースの理解を深めていきます。今回はSKUと浸透率の関係から、単に商品ラインアップを増やせば浸透率が増えるわけではない、という話をしたいと思います。

本連載はマーケティング学会との連動企画です。本連載で解説する実証研究は、初報を2024年8月8日に開催されるマーケティング学会主催のマーケティングサロンにて、続報を2024年9月11-12日に開催されるMarkeZine Day 2024 Autumnにて発表する予定です。また、本研究は、全国の大手スーパーマーケットとドラッグストア計8,200店舗、対象ID数8,000万IDのID-POSデータを預かるカタリナマーケティングジャパンに、データ&アナリティクス面でご協力いただきました。

そもそも「浸透率」とは?

 まず、浸透率の基本的な定義から始めます。ブランドの浸透率とは「特定の期間にブランドを1回以上、購入あるいは利用した消費者の数/母集団の数」です。この時、母集団定義を「未顧客含む潜在顧客全員」とした場合は絶対浸透率、「特定期間内にカテゴリーを購入した人」とした場合は相対浸透率と呼びます。

 浸透率にはもう1つ、増分浸透率と累積浸透率という分類があります。今回の話で大切になってくるのはこちらの分類です。

 増分浸透率とは、ある施策により純増した(インクリメンタルな)浸透率を指します。たとえば「新しいラインアップを1つ追加することで、これまで買ってくれなかった未顧客をどれだけ獲得できたか」といった文脈で使われます。累積浸透率は重複を許した増分浸透率の合算です。

■浸透率の基本的な定義

ブランドの浸透率:特定の期間にブランドを1回以上、購入あるいは利用した消費者の数/母集団の数

 ・絶対浸透率:「未顧客を含む潜在顧客」を母集団とした場合

 ・相対浸透率:「特定期間内にカテゴリーを購入した人」を母集団とした場合

 ・増分浸透率:ある施策により純増した(インクリメンタルな)浸透率

 ・累積浸透率:重複を許した増分浸透率の合算

全てのSKUが売上に等価貢献するわけではない

 ブランドが持つラインアップの広さは、そのカテゴリーにおける専門性やコンピテンシーのシグナルとなるため、知覚品質を向上させ、長期的な売上に貢献する働きがあると言われています(Ataman et al., 2010; Berger et al., 2007)。ただし、闇雲に商品数を増やせばいいわけではありません(Gourville & Soman, 2005)。

 本来であれば、SKU(Stock Keeping Unit)の数に比例して浸透率が増えていくのが理想ですよね。言い換えると、ラインアップを増やすほど新しい顧客の獲得につながっている、という状態であって欲しいわけです。

 しかし、SKUの数と浸透率の関係を調べた研究によると、そのような単純な線形関係にはならないようです(Tanusondjaja et al., 2012)。現実的にはどうなるかというと、下図のような収穫逓減型のカーブを描きます。

出典
出所:以下をもとに筆者が作成
Tanusondjaja, A., Nenycz-Thiel, M., Kennedy, R., & Corsi, A. (December, 2012). Is Bigger Always Better? Exploring the relationship between the number of brand offerings in a portfolio and its overall brand penetration [Conference Paper]. ANZMAC Conference, Adelaide, Australia.

 つまり、全てのSKUが等しく売上に貢献するわけではないのです。さらに興味深いのは、同程度の浸透率のブランドでも、Aのようなロングテールになるパターンもあれば、Bのようにテールが短いパターンもあるということです。

 では、なぜこのような違いが生まれるのでしょうか?

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この記事の著者

芹澤 連(セリザワ レン)

マーケティングサイエンティスト。数学/統計学などの理系アプローチと、 心理学/文化人類学などの文系アプローチに幅広く精通。 非購買層やノンユーザー理解の第一人者として、消費財を中心に、 化粧品、自動車、金融、メディア、エンターテインメント、インフラ、D2Cなどの戦略領域に従事。 エビデンスベースのコンサルティングで...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2024/08/07 08:45 https://markezine.jp/article/detail/46394

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