本連載はマーケティング学会との連動企画です。本連載で解説する実証研究については、初報をマーケティング学会主催のマーケティングサロンにて共有済であり、また続報を2024年9月11~12日に開催されるMarkeZine Day 2024 Autumnにて発表する予定です。なお本研究は、全国の大手スーパーマーケットとドラッグストア計8,200店舗、対象ID数8,000万IDの大規模ID-POSデータを預かるカタリナマーケティングジャパンに、データとアナリティクス面でご協力いただきました。
ダブルジョパディの法則とは?
まずダブルジョパディの法則とは何か、という部分から説明します。アレンバーグ・バス研究所バイロン・シャープ教授の著書『ブランディングの科学』(朝日新聞出版)では、次のように定義されています。
“マーケットシェアが低いブランドは購買客数も非常に少ない。またこれらの購買客は行動的ロイヤルティも態度的ロイヤルティもやや低い”
出典:Sharp, B. (2010). How brands grow: What marketers don't know. Oxford University Press. (シャープ, B. /加藤巧(監修)・前平謙二(訳)(2018)『ブランディングの科学:誰も知らないマーケティングの法則11』朝日新聞出版)
要するに、大きなブランドと小さなブランドの主な違いは浸透率(顧客数)であり、浸透率が増えれば購入頻度や利用額もやや高まりますが、浸透率を増やさずに購入頻度や利用額だけを高めることは原則的に難しいということです。従って、小さなブランドは売り上げにつながる顧客数とロイヤルティの両方が低くなる、そこからダブルジョパディと言われています。
大きなブランド:顧客数(非常に多い)×購入頻度(やや高い)×利用額(やや高い)
小さなブランド:顧客数(非常に少ない)×購入頻度(やや低い)×利用額(やや低い)
なぜそうなるかというと、数学的には、売上を構成する顧客数と購入頻度は独立した変数ではなく、次のような関数でつながっているからです。これをダブルジョパディライン(DJライン)と言います。
つまり、市場には「買う人が増えれば平均購入頻度も上がっていく」「浸透率が増えるとロイヤルティも高まる」という傾向があります。いくつか例外パターンもありますが(後述)、多くのカテゴリーに共通して見受けられる傾向です。消費財だけではなく、耐久財、サービス財、スポーツ、エンターテインメント、メディア、オンライン、BtoBまであらゆるカテゴリーで実証されています。
では、この傾向は実務においてどのような意味を持つのでしょうか?
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