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エビデンスベーストマーケティングの基礎

差別化戦略は企業都合の希望的観測でしかない?カテゴリー理解の重要ツール「購買重複の法則:DoP」とは

 前回の記事では、エビデンスベーストマーケティングで最も重要な「ダブルジョパディの法則」を日本のデータで検証しました。今回はダブルジョパディと双璧をなす「購買重複の法則(DoP)」について理解を深めていきます。DoPも重要な経験的一般則なのですが、あまり知られていません。本稿は、恐らく日本語では執筆時点で最も詳しいテキストになっていると思いますので、これを機にしっかりと習得しましょう。

本連載はマーケティング学会との連動企画です。本連載で解説する実証研究については、初報をマーケティング学会主催のマーケティングサロンにて共有済であり、また続報を2024年9月11~12日に開催されるMarkeZine Day 2024 Autumnにて発表する予定です。なお本研究は、全国の大手スーパーマーケットとドラッグストア計8,200店舗、対象ID数8,000万IDの大規模ID-POSデータを預かるカタリナマーケティングジャパンに、データとアナリティクス面でご協力いただきました。

消費者は「いくつかのブランドにロイヤル」なのが普通である

 消費者は、経験や習慣的によく選ぶ商品のレパートリーを持っています。たとえば、コーヒーや洗剤のブランド選択を考えてみて下さい。よく選ぶブランドが2つか3つくらいあって、時々新商品やSNSで気になった商品を買う、あるいはセールで安くなっている商品を買う、みたいな感じではないでしょうか?

 1つのブランドに100%忠実であり続けるわけでもなく、かといって完全ランダムに選んでいるわけでもない、習慣的にいくつかのブランドに分かれた行動ロイヤルティ――これをポリガマスロイヤルティ(Polygamous Loyalty)と呼びます(Ehrenberg et al., 2004; Sharp et al., 2002)。

 消費者にとっては、いくつかのブランドに対してロイヤルティが分割されていることが“普通”であるため、1つのブランドだけにロイヤルであり続けるという状態を維持するのは難しいということです(Dowling & Uncles, 1997; Sharp et al., 2002)。

カテゴリー理解の基本ツール「購買重複の法則(DoP)」とは

 こうした性質はカテゴリー内の競争環境に1つの規則性を生み出します。次の表を見てください。ブランドが浸透率の降順に並んでおり、各ブランド(行)の共有率トップ3の競合ブランドを赤くハイライトしています。

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 どのブランドも、大きなブランドとより多くの顧客を共有し、小さなブランドとは共有が少ないというパターンになっていることがわかりますね。このデータではパンテーンが最も浸透率が高く、2番目にラックス、3番目にメリットと続くわけですが、たとえばラックスは最大手のパンテーンと最も共有が多く(つまりブランドスイッチも多く)、3番手のメリットとはそれより共有が少ないことがわかります。それ以降も浸透率の降順に共有率が少なくなっています。

 こうしたパターンを購買重複の法則(Duplication of Purchase Law、以後DoPと表記)と言います(Sharp, 2010)。

 DoPはエビデンスベーストマーケティングの中心的な規則性の1つで、DJラインと(ダブルジョパディライン)と双璧をなすカテゴリー理解の基本ツールです。DoPは、もともと1960年代に雑誌やTV番組の視聴重複パターン(Duplication of Viewing Law)として発見されました。

 これは「異なる2つの番組の重複視聴者数は、番組内容などとは無関係に、それら番組の視聴者数(オーディエンスサイズ)から予測できる」という規則性で(Goodhardt & Ehrenberg, 1969)、これをシェア(浸透率)とブランド選択の関係に拡張したものが現在のDoPです。

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この記事の著者

芹澤 連(セリザワ レン)

マーケティングサイエンティスト。数学/統計学などの理系アプローチと、 心理学/文化人類学などの文系アプローチに幅広く精通。 非購買層やノンユーザー理解の第一人者として、消費財を中心に、 化粧品、自動車、金融、メディア、エンターテインメント、インフラ、D2Cなどの戦略領域に従事。 エビデンスベースのコ...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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2024/09/09 09:00 https://markezine.jp/article/detail/46869

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