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MarkeZine Day 2025 Retail

エビデンスベーストマーケティングの基礎

パンテーンの圧倒的な強さを解剖。ブランド成長の要「浸透率」とは、どのような指標なのか?


日本のシャンプー市場を解剖

 答えは、SKU1つあたりの増分浸透率(SKUを1つ追加することで新しい顧客をどれだけ増やせるか)が異なるからです。

 Aはロングテール部分に増分売上を生み出さないSKUを大量に抱えているのに対して、BはそれぞれのSKUが異なる顧客を獲得しているため、ポートフォリオ効率がよいと分析します。メーカーにしてもリテールにしても、Bのように各SKUがMECEな仕事をしてくれる状態が理想的ですよね。

 ただ、現実的にはAのようなポートフォリオになることが少なくないと思われます。実際、ある大規模な消費財の研究では、ブランドの浸透率の約80%、および売上の約70%をポートフォリオ上位50%のSKUが支えていると報告されています(Tanusondjaja et al., 2018)。

 これは、日本市場にも当てはまるのでしょうか?

 次の表は日本のシャンプー市場における浸透率上位14ブランドを抜粋したものですが、浸透率および売上の約97%をポートフォリオ上位50%のSKUが支えていることがわかります(出所:カタリナ消費者総研)。さらに上位30%まで絞り込んでも、売上、浸透率共に9割近くを占めているようです。

【クリックして拡大】集計期間:2023/06/05 ~ 2024/06/02。データの特性上、商品切り替え時やチェーン専用品などでSKU数が膨れている可能性がある。
【クリックして拡大】各ブランド売上上位50%SKUのブランドへの貢献
(集計期間:2023/06/05 ~ 2024/06/02。データの特性上、商品切り替え時やチェーン専用品などでSKU数が膨れている可能性がある)

シャンプー市場における経験的一般化

 ここから、次のような経験的一般則(Empirical Generalization)が導かれます。

■シャンプー市場における経験的一般化:上位50%SKUの貢献

・先行研究:消費財一般では、ポートフォリオ上位50%のSKUが浸透率の約80%、および売上の約70%を支える(Tanusondjaja et al., 2018)。

・再現研究:日本のシャンプーカテゴリーでは、ポートフォリオ上位50%のSKUが浸透率および売上のほぼ全て(97%)を支える。さらに上位30%のSKUが浸透率、売上のおよそ9割を支える。

 言い方を変えると、シャンプーカテゴリーはロングテール部分のコストが膨らみ、赤を吐き出すだけのSKUを大量に抱えやすいということです。このことについて詳しく見ていきましょう。

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トップに君臨する「パンテーン」の圧倒的な強さ

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この記事の著者

芹澤 連(セリザワ レン)

マーケティングサイエンティスト。数学/統計学などの理系アプローチと、 心理学/文化人類学などの文系アプローチに幅広く精通。 非購買層やノンユーザー理解の第一人者として、消費財を中心に、 化粧品、自動車、金融、メディア、エンターテインメント、インフラ、D2Cなどの戦略領域に従事。 エビデンスベースのコンサルティングで...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2025/09/02 07:10 https://markezine.jp/article/detail/46394

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