日本のシャンプー市場を解剖
答えは、SKU1つあたりの増分浸透率(SKUを1つ追加することで新しい顧客をどれだけ増やせるか)が異なるからです。
Aはロングテール部分に増分売上を生み出さないSKUを大量に抱えているのに対して、BはそれぞれのSKUが異なる顧客を獲得しているため、ポートフォリオ効率がよいと分析します。メーカーにしてもリテールにしても、Bのように各SKUがMECEな仕事をしてくれる状態が理想的ですよね。
ただ、現実的にはAのようなポートフォリオになることが少なくないと思われます。実際、ある大規模な消費財の研究では、ブランドの浸透率の約80%、および売上の約70%をポートフォリオ上位50%のSKUが支えていると報告されています(Tanusondjaja et al., 2018)。
これは、日本市場にも当てはまるのでしょうか?
次の表は日本のシャンプー市場における浸透率上位14ブランドを抜粋したものですが、浸透率および売上の約97%をポートフォリオ上位50%のSKUが支えていることがわかります(出所:カタリナ消費者総研)。さらに上位30%まで絞り込んでも、売上、浸透率共に9割近くを占めているようです。

(集計期間:2023/06/05 ~ 2024/06/02。データの特性上、商品切り替え時やチェーン専用品などでSKU数が膨れている可能性がある)
シャンプー市場における経験的一般化
ここから、次のような経験的一般則(Empirical Generalization)が導かれます。
■シャンプー市場における経験的一般化:上位50%SKUの貢献
・先行研究:消費財一般では、ポートフォリオ上位50%のSKUが浸透率の約80%、および売上の約70%を支える(Tanusondjaja et al., 2018)。
・再現研究:日本のシャンプーカテゴリーでは、ポートフォリオ上位50%のSKUが浸透率および売上のほぼ全て(97%)を支える。さらに上位30%のSKUが浸透率、売上のおよそ9割を支える。
言い方を変えると、シャンプーカテゴリーはロングテール部分のコストが膨らみ、赤を吐き出すだけのSKUを大量に抱えやすいということです。このことについて詳しく見ていきましょう。