組織利用がもたらす複利効果
生成AIの組織利用には、「複利効果」が強く働くと考えています。
生成AI自体が日進月歩で進化していくため、一見すると、後発利用組織が最新モデルを利用して一足飛びで高いレベルの活用ができるように思えるかもしれません。しかし実際はそう単純ではありません。生成AIは導入したらすぐに最大効果が出るものではなく、組織内での試行錯誤を経て、初めて最大成果を生み出す使い方が見えてきます。
個人での利用であれば一足飛びの進化(リープフロッグ)も可能かもしれませんが、組織での利用は異なります。各人のリテラシーの違いや、実際の業務への「擦りあわせ適用」が必要であり、最新のモデルを即効果が出るように使い始められないのです。
そのため、先行して利用して失敗と成功の経験を蓄積することが重要です。この過程を通じて、組織は新しい生成AIツールの登場などの変化にも柔軟に対応できる力を養うことができます。これがAIの活用における成果の複利効果を生み出すのです。結果として、生成AIを先行利用する組織と後から導入を始める組織との間で、指数関数的な成果の差が開いていく可能性があります。

「目的と戦略」が重要
組織として利用する際には、より目的と戦略が重要になります。目的が無いと、ただ単に生成AIを業務利用している人が集まっている集団にしかなりません。生成AIの利用レベルや利用深度が異なる人達の集まりだからこそ、方向性が必要になります。
もちろん後から生成AI活用の目的が生まれる可能性もありますが、組織利用の効果を最大化させるためには、「大きな目的」や「組織や役割ごとの小さな目的」が必要になります。目的が生まれると、その達成のために、生成AI活用の始め方・普及のさせ方・発展のさせ方に戦略性が必要になります。全員に同じ生成AIツールを使ってもらうべきか、もしくは用途やリテラシーによってツールを分けるべきか。普及させていく順番をつけるべきか、そうではないか。
対象となる組織の規模が大きくなるほど、対象をセグメントし、ターゲット層ごとの活用設計を行う元となる、戦略が必要になるでしょう。生成AI活用を促すための泥臭い喧伝ではなく、戦略的な社内マーケティングが必要になるのです。
まとめ
AIの組織利用は、個人利用とは異なり、非常に大きな成果インパクトをもたらす可能性を秘めています。一方で組織利用だからこそ、目的や戦略が必要となり、また知見蓄積の複利効果への意識も必要になります。そこで、生成AIの本質的な組織利用を推進するために、生成AI活用に対する手触り感を持ち、戦略を立てて推進し、組織の成果を劇的に変える先導者としてのマーケターのような存在(実際のマーケティング担当者であるべきという話ではありません)が必要になると考えます。