マーケター主導で進める生成AIの組織利用
─ 生成AIを組織利用するメリット
─ 生成AIの組織利用における課題と解決の鍵
─ 生成AIの組織利用をマーケティングのように戦略を描いて実行する方法
─ リサーチ、戦略策定、アイディア創出…マーケティング業務全般へのAI活用事例を紹介(本記事)
これまでの3回にわたり、生成AIの組織利用のメリット、課題と解決策、そして利用促進のための戦略についてお話してきました。最終回となる今回は、マーケティング業務の各領域における具体的なAI活用例をご紹介していきたいと思います。
1.リサーチにおける活用
市場調査・競合調査の高速化
生成AIのリサーチ機能は大きく向上しており、組織利用にかかわらず、仕事の場面でも非常に有用な用途だと思います。特にChatGPTやGeminiといった、リアルタイムのWeb検索機能を備えた生成AIは機能性が非常に高く、2024年10月に登場したChatGPTのWeb検索機能である「ChatGPT Search」は、自然言語による質問に対して、タイムリーな情報を基にアウトプットを作成してくれます。
さらに検索に特化した生成AIのサービスとしては、「Perplexity」「Genspark」「Felo」といったサービスがあります。それぞれの特徴を簡単にご紹介しましょう。
- Perplexity:アカウント登録不要で利用でき、最新データに基づいた回答を提供することに重点を置いています。
- Genspark:SEOや商業的バイアスを無くした中立的な情報を作成してくれる特徴があり、カスタムページ(Sparkpages)生成機能によって検索結果を一つのページにまとめて表示してくれます。
- Felo:検索した情報をわかりやすく表示することに加え、深層推論モード(ディープ推論モード)があり、通常の検索機能よりも深く思考し、複雑な質問に対して高速に回答を作成してくれます。さらに、アウトプットを自動で資料化してくれる機能等の特徴があります。
筆者はFeloを特によく利用しており、市場情報やカテゴリー情報、さらには競合企業やベンチマーク企業の調査に利用しています。
どのツールも調べた情報に対して、深堀りする検索質問を提示してくれ、あっという間にデスクリサーチが充実していきます。また、情報源についても提示してくれるため、どの事実情報に基づいたアウトプットなのかも効率的に確認することができます。
定量調査分析の効率化
定量のリサーチデータについては、生成AIの組織利用をすることで効率化できる部分だと思います。なぜなら、組織利用=業務で使っても問題ない利用環境を作れるからです(セキュリティ面等、組織で業務利用しても問題ないツールやツールプランを選択しているという意味です)。
そしてChatGPTには、Advanced Data Analysis(旧称Code Interpreter)という機能が組み込まれているため、Pythonといったコードの実行ができます。これによって、データを読み込んで、整理・加工・分析・可視化するだけでなく、分析の方向性も提案してくれます。
実際に分析を行う前に、データの全体像や簡易的な分析であったり、統計的なデータの偏り等を把握するといったことを簡単に行うことができます。
定量分析においては、まだまだ深堀りした分析や発見は、人が行ったほうが効率的だと感じています。しかし、データの全体像の把握や、事実ベースでの分析コメントの作成といった、人の創造性が必要ない部分への、AI活用は分析の効率性を大幅に向上してくれます。
定性調査分析の高度化
定性的なデータの分析においては、圧倒的に生成AIが力を発揮してくれる部分です。
生成AI登場前は、アンケート調査で自由回答されたデータを分析しようとすると、どうしても人が見て示唆を出す必要がありました。分析的な能力が求められる一方で、どうしても労働集約的な作業にならざるを得なかった部分です。
しかし生成AIの活用によって、従来何時間もかかっていた分析業務が、10分程度に短縮されました。これは圧倒的なインパクトです。
分析の方法としては、まずは対象とするデータをChatGPTにエクセルデータの形でアップロードし、「このデータの××の項目について、10個の要素に分類して分類名とその概要を作成し、各分類に該当するデータの数と、特徴的なコメントデータを5個づつ記載し、全体のサマリーを作成してください」と指示することで、定性データの全体観を把握することができます。
出てきたアウトプットについて、気になるカテゴリーを深堀りしたり、発見したりするための追加質問をしていきます。