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愛されるブランドの仕組み:ブランド・リレーションシップ入門講座

ブランドと顧客の絆の強さはどう測る? 日本の自動車メーカー5社のスコア比較を例に解説【第3回】

ホンダ、マツダ、スバル、日産、トヨタをBR尺度で計測

 BR尺度によってまずわかるのが、「そのブランドは、どのくらい愛されているか」ということです。たとえば、私が2023年に行った調査によると、日本の自動車メーカーのBRSは「ホンダ 53.73」「マツダ 52.34」「スバル 51.16」「日産 48.49」「トヨタ 47.55」でした(図3)。この調査では「お気に入りのブランド」を1つ挙げてもらい、そのブランドに対するリレーションシップの強度を測定しました。

図3 日本の自動車メーカーのブランド・リレーションシップ・スコア
図3 日本の自動車メーカーのブランド・リレーションシップ・スコア

 前回説明したように、ブランド・リレーションシップは「評価」や「満足」と異なります。それは「良い・好き」や「満足した」ではなく、ブランドとの間に感じる「結びつき」のことです。したがって消費者がそのブランドを自分の一部のように感じていたり、愛着を抱いたりしている場合にBRSは高くなります。上述した調査結果を見る限り、「ホンダ」のBRSは相対的に高く、「トヨタ」のBRSは相対的に低くなっています。どうやら「ホンダ」は消費者から愛されているようです。

 ただし、誤解しないでいただきたいのですが、BRSが低いのは必ずしも悪いことではありません。なぜなら、いわゆる「普通の消費者」に幅広く受け入れられている場合、BRSは低くなるからです。

 冷静に考えるとわかるように、大半の消費者は「お気に入り」のブランドに対して、良い(あるいは好き)とは思っていますが、愛着を感じているわけではありません。したがって、これら「普通の消費者」に焦点を合わせ、彼・彼女らを幅広く取り込むのは有効な戦略の1つです。おそらく「トヨタ」はそうした戦略を採用しているのでしょう。

 企業には、「愛されるブランドを目指す」という選択肢もあれば、「より広い浸透を目指す」という選択肢もあります。私は、後者のように市場に広く浸透していく方法を「裾野を広げる戦略」と呼んでいます(久保田, 2020; 2023; 久保田・澁谷・須永, 2022)。いわゆるダブルジョパディを念頭においた戦略であり、古くからからあった考え方ですが、最近は実務書で取り上げられるようになり、広く知られるようになりました(e.g., 芹澤, 2023; 森岡・今西, 2016; Sharp,2010)。

 BR尺度の優れているところは、上述したような「好きではあるが、愛着を抱くほどではない」といった状態を正確に測定できることです。その結果、ブランドの状態や顧客基盤について、実務的に非常に有効な情報を得られます。これは、実務界でよく用いられているブランド態度や、ブランド満足(あるいはネット・プロモーター・スコア)と大きく異なる点です。

ブランド・リレーションシップはニッチ・ブランドだけのものか?

 先ほど、大半の消費者は「お気に入り」のブランドに対して、良い(あるいは好き)とは思っているが、愛着を感じているわけではないと書きました。するとブランド・リレーションシップは、一部の消費者に深く愛されている「ニッチ・ブランド」に顕著なものと思えてきます。実際、「結局のところ、BRSが高いのはニッチ・ブランドばかりですよね?」という質問をいただくこともあります。

 確かに熱狂的なファンを抱えるニッチ・ブランドは珍しくありません。しかし「BRS」と「知覚されたブランド・サイズ」の相関係数を計算すると、ほぼ無相関となります(久保田, 2024)。分析結果を見る限り、BRSはブランドの大きさと関連性がないようです。

 ちなみに2023年の調査では、BRS1位はディズニーリゾートの57.73でした。ディズニーリゾートは、明らかにニッチ・ブランドではありません。

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この記事の著者

久保田 進彦(クボタ ユキヒコ)

青山学院大学 経営学部教授、博士(商学)(早稲田大学)。日本商業学会学会賞受賞(2007年論文部門 優秀論文賞、2013年著作部門 奨励賞)、公益財団法人吉田秀雄記念事業財団助成研究吉田秀雄賞受賞(2010年度、2016年度)。最新作は『ブランド・リレーションシップ』(有斐閣)他著書多数。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2024/10/22 09:00 https://markezine.jp/article/detail/46711

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