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業種別アプリマーケ事例大全

購買の瞬間だけでなく、長くお客様と関わるために。スギ薬局の「いつでも、どこでも」なアプリ戦略とは

アプリのID統合で、購買データだけでは読み取れない顧客の姿を分析

MZ:先ほど、トータルヘルスケア戦略を実現するためDX推進に取り組まれているとお話がありました。具体的な取り組みについてお教えください。

増田:元々、複数あるアプリのID統合ができていない課題を抱えていました。たとえば、一人のお客様がスギ薬局アプリの会員IDとスギサポwalkのIDを持っているものの、それらが結びつかず別々で存在していたのです。

 そこで、まずは各アプリのID統合に取り組みました。幸いにも、スギ薬局アプリの会員ボリュームが他のアプリと比較し圧倒的だったことで、ID統合はそこまで大きなハードルになりませんでした。現在は統合したIDをベースに施策を展開しており、新たにサービスを立ち上げる時はすべて統合されたIDにひも付く形で作っています。各サービスを同じ会員体系の中で作ることで、今後プロダクトが増えても、すべてのIDが結び付いた形で運用を行えます。

 これによって、当社グループの複数のアプリを使う方と単体で利用される方の差を分析したり、相談ごとや運動習慣にまつわるデータなど通常の買い物データには表れないお客様の行動・インサイトを把握したりすることが可能となります。まずはデータを活用する環境という土台作りができたので、その先の施策に今後は注力していきたいと考えています。

MZ:ID統合の結果、データからわかったことはありますか。

増田:たとえば、スギ薬局アプリとスギサポwalkの両方を使っているお客様のほうが来店率も高く、ロイヤルティが高いことが可視化されました。ただ、健康にまつわるデータはパーソナルなものであり、慎重に取り扱う必要があります。データから発見が得られたとしても、それを基に実際にアプローチすることが必ずしもお客様にとって正解とはいえない可能性は、常に意識しています。

「いつでも、どこでも、手のひらにスギ薬局」を実現するために

MZ:ID統合以外のお取り組みについても伺えますか。

増田:2023年1月、スギ薬局アプリをリニューアルしました。リニューアルに際して、今後アプリを通じてどのような顧客体験を提供すべきか検討し、「いつでも、どこでも、手のひらにスギ薬局」をコンセプトに定めました。なお、DX戦略本部が立ち上がるタイミングである2021年でスギ薬局アプリは既にリリースしており、当時1,000万ダウンロードほどあった中での取り組みとなりました。

 小売企業のアプリは、「店舗のレジ前でクーポン画面を開き、使ったら終わり」と、お客様の起動時間が短く利用シーンがピンポイントにとどまりがちです。生涯にわたって関わりを持つトータルヘルスケア戦略の実現に寄与するためにも、よりお客様と長くつながる意図をコンセプトに込めました。

 元々、店頭に行かずともアプリ上で相談やカウンセリングを受けられ、買い物もできるという構想がありました。その実現のために、エンジニアなどDX人材をメンバーへ加え開発を内製できる体制を築いたことが、アプリリニューアルに至るきっかけとなりました。

MZ:アプリリニューアルではどのようなことを行いましたか。

増田:まず、リニューアル前から多くの方に利用いただいていたクーポン機能を、より使いやすく改善しました。加えて、ポイントプログラムの改修にともないセキュリティ周りも強化しました。

「スギ薬局アプリ」の「スギチャンネル」配信画面
「スギ薬局アプリ」の「スギチャンネル」配信画面

増田:さらに、お客様との関わりを点ではなく線にしていくため、コンテンツ配信を行う「スギチャンネル」をアップデートしました。具体的には、おすすめ商品やキャンペーン紹介など販促に関する情報だけでなく、生活や健康のお悩みやといったお役立ち情報を配信するようになりました。

次のページ
ID統合で実現した、顧客一人ひとりに合わせた再来店促進施策とは

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この記事の著者

吉永 翠(編集部)(ヨシナガ ミドリ)

大学院卒業後、新卒で翔泳社に入社しMarkeZine編集部に所属。学生時代はスポーツマーケティングの研究をしていました。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2024/11/21 09:00 https://markezine.jp/article/detail/46994

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