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AIと人間のチームに必要な戦略は?世界のCMOたちに学ぶ/INBOUND 2024レポート

ストーリーを語るのをやめよう。相手と会話を続けるために

 収益に貢献するブランディングを目指すのであれば、自社の一人語りである「ストーリーテリング」ではなく見込み客との「対話」を重視すべき、というのがディレオ氏の主張。初対面の相手との間に許されるのは、短い挨拶の時間だけであり、その時間にストーリーを語っても、何の意味ない、というわけだ。

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ケイト・ディレオ氏(The Brand Trifecta 創業者兼ブランドアーキテクト)

 では、許された短い時間を使って自社製品にコンバージョンしてもらえるような対話をするためには何が必要なのか。ディレオ氏が推奨するのは、「ブランドの三要素(=Brand Trifecta)」に当てはめて自社ブランドを言語化すること。要素は(1)タグライン、(2)バリュー・プロポジション(自社の提供価値)、(3)自社の強みを説明するステートメントの三つだ。同氏はそれぞれの言語化について注意点を解説した。

1.タグライン(Tagline)

  • ブランドを伝える会話の最初の防御線
  • 「私はこういうことをやっています」と短く簡潔なフレーズで伝えること
    良い例:「私は企業の税務対応を助けています」
  • 大胆かつ自信に裏付けられた説明が必要だが、大げさな表現はNG。
  • 見込み客の次のようなリアクションを促すフレーズが理想
    「おお、そうなんですか?それってどういうこと(仕事/事業)ですか?」

2.バリュー・プロポジション(Value proposition)

  • バリュー・プロポジションとは、タグラインをさらに踏み込んで説明すること
  • 納税は企業にとって重要だが、毎日の業務の大部分であってはいけない
  • 顧客の一番深いところにある課題(pain)を、自社がどう解決するのか
  • 顧客の「わかってくれてる!」を引き出す
  • 見込み客がコンバージョンするために必要な比較の瞬間を作り出す

3.自社の強みを説明するステートメント(Differentiator Statements)

  • なぜ自分たちが競合他社よりも優れているのかを説明する
  • 最大で3~5点の箇条書きにする

 以上の三要素はあくまで基礎知識だと考える方もいるかもしれない。しかし、ディレオ氏によると、「これがブランドメッセージだ!」と思っても多くの場合はもっと深掘りできる。たとえば、タグラインを考えるプロセスでも繰り返し修正が必要であり、「1~2回で確定できるのは、15年以上のキャリアがある人かな」と同氏は話す。

 また、同氏は「ブランドの三要素を言語化する過程では、自社のCEOやCMOなどのリーダーを巻き込んでいくことが大切」と強調する。経営層の後押しがあってこそ、「営業サイクルの短縮」「営業パイプライン中のリードの質(温度感)」といった指標で測定される成果が伸びてくると語った。もし現状のブランドメッセージ、対話の流れに懸念があるなら、試してみてはいかがだろうか。

マーケターも無視できない「ウェルネス」の視点

 最後に着目したいのは、来訪するマーケターの悩みが仕事の中身だけに限らないことをINBOUNDの運営チームが理解し、「より良い生き方」という目線でもメッセージを共有していたことだ。

 セッション「The Secret to Optimizing Performance In Business and Life(ビジネスと人生におけるパフォーマンスを最適化する秘訣)」では、Women’s health誌で編集長を務めるリズ・プロッサー氏と、米国のサプリメント会社AG1でCEOのカット・コール氏が対談。幼少期は裕福ではなかったと語るコール氏のキャリア形成の話から始まり、やがて話題はコロナ禍で世界中の飲食フランチャイズ事業の責任者をしていた際の気づきに。

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カット・コール(AG1 CEO)

 コール氏は「強さというのは、苦しい環境の中でもベストの状態でいることを求められ、追い込まれた時に初めて現れるものだ」という学びを共有し、会場から拍手が上がるほど、多くの共感を得た。

 また、「The Future of Technology and Wellness(技術とウェルネスの未来)」のセッションでは、HubSpotの創業者の一人であるブライアン・ハリガン氏と、人間のパフォーマンスと健康を最適化するウェアラブル・デバイスの開発でアスリートから支持を得ているWHOOPの創業者兼CEO、ウィル・アーメド氏が登壇。

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写真左から、ブライアン・ハリガン氏(HubSpot 会長兼共同創業者)、ウィル・アーメド氏(WHOOP Founder, CEO)

 トラックスーツに身を包んだハリガン氏が、マーケティング分野だけでなく、人間の健康のモニタリング方法や回復力が得られる睡眠、ストレス管理などについてもアーメド氏に質問し、聴講者の身体的なパフォーマンス向上にも期待できるようなセッションとなった。

 以上に示されるように、INBOUND 2024は、AIをはじめとするテクノロジーの力に対する期待やマーケティングスキルという領域に留まらず、人間が持つ限りある力をどのように最大限に使い、それを通じて個々人の幸せに貢献するか、という幅広いテーマが語られる舞台となった。なお、最終日の発表によると、INBOUND 2025は場所を変えて米国サンフランシスコで開かれる予定だ。

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この記事の著者

安原 直登(編集部)(ヤスハラ ナオト)

大学卒業後、編集プロダクションに入社。サブカルチャー、趣味系を中心に、デザイン、トレーニング、ビジネスなどの広いジャンルで、実用書の企画と編集を経験。2019年、翔泳社に入社し、MarkeZine編集部に所属。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2024/09/30 07:30 https://markezine.jp/article/detail/47059

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