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マーケター主導で進める生成AIの組織利用

生成AIの組織利用における課題と解決の鍵

課題解決の鍵と具体アプローチ

 ここまでお読みいただいた通り、生成AIの活用において、個人利用と組織利用では、課題の捉え方がまったく異なります。組織利用では、より広範な視点と長い時間軸で、生成AI活用を捉えていくことが求められます。この挑戦的な課題の中で、その解決の鍵となるポイントをあげたいと思います。

鍵1:先導者を作ること(先導者になること)

 最重要の鍵は、先導者の存在の有無です。先導者が不明確な状態では、導入に意思がこもりません。意思無き組織導入は、始めこそ上手く進んでいても、本当の成果にはつながりにくくなります。誰かからの推薦・指示であっても、自らの奮起であっても、そこに意思を持った先導者が生まれれば、必ず成果に向かった組織導入ができると思います。

 また、先導者にもメリットがあります。生成AIを組織に取り入れることは、組織としても個人としてもメリットしかありません。その未来の実現のために、先導していくことは非常に意義があり、経験蓄積といったリターンももたらします。

鍵2:課題解決のハブになること

 先導者が「生成AI活用で業務生産性にイノベーションを起こす」等の目的に基づいて、様々な領域の課題解決の司令塔になることが重要です。

 たとえば、「問題を発生させない」目的で生成AIのリスク管理を考えてしまうと、生成AIを組織では導入しないという意思決定になってしまうかもしれません。個別領域だけの課題解決に留まらず、1つの大きな目的のもと、個別課題が関連しあった全体の課題群を解決していく視点が必要になります。

鍵3:マーケティングのように戦略を描いて実行すること

 生成AI導入においては、“ターゲット戦略”が必要不可欠です。つまり、何を捨てるのかが非常に重要になります。なぜなら、すべてにおいて理想を突き詰めると、何も実行できなくなってしまうからです。

 たとえば、下記のように捨てるべきものや選択すべきものを明確にしていくことが鍵になります。

  • 成果:時間軸とセットで、どこまでの領域を成果として定義すべきか?(ある期間までは投資対効果までは成果として捉えない等)
  • 導入対象者:全社全員に導入すべきなのか、本当に必要な人だけに導入すべきなのか等
  • 教育支援:リテラシーごとにターゲットを区切るか、教育コンテンツをどのように分けるか等
  • ルール:どの法的リスクにフォーカスすべきなのか?
  • ツール選定:目的や自組織の状況から、どのツールに絞り込むべきか?

 実際に私が社内の導入を進めた際も、社内のアンケート調査をもとにして、どのような利用状況やリテラシーになっているかを把握し、戦略策定に役立てました。

 また、正解を見いだしにくかった「リスク検討プロセス」においても、情報システム部門と法務部門と議論を行い、導入想定のツール環境を踏まえた際に、どこまでの法的リスクが重要検討視点かを議論し、どこまではリスク度の観点から議論は不要等の絞り込みを行いました。

 社内のルール展開においても、1から100までルールを規定するのではなく、社内の利用環境を使う前提で、シンプルな3つの絶対ルールを設けるなど、必要なものに絞り込んでいくことを行いました。

マーケターが推進者となる意義

 課題を眺めてもわかる通り、生成AI導入の際には「領域横断型の問題」に直面することになります。また、誰かが様々な専門部署との折衝をしながらリードしていく必要があります。加えて、導入計画を策定する上では現場感も必要となりますし、常に新しいトレンドをキャッチアップし続けることも求められます。

 以上を踏まえると、私は「マーケターが中心となって推進すること」に大きな意義があると考えます。

現場ニーズの理解者である

 マーケターは日々の業務の中でデータ分析やコンテンツ制作など、AIとの親和性が高い業務に携わることが多いと思います。

最新の技術トレンドへの興味がある

 マーケターは生成AI領域やその活用事例について、常に興味を持って情報を収集し、取り入れようとする人が多いと思います。実際に、社内で生成AIに関する興味・関心と利用状況を調べたところ、マーケティング部門で高い数値が出ました。

様々な部門との連携が得意

 マーケティング部門だけに限った話ではありませんが、法務部門や情報システム部門、現場業務部門や顧客まで含め、様々な部門と連携して働くことが多い部門の1つだと思います。領域横断課題に挑み、リードするポテンシャルを最も持っている領域の1つであることは間違いありません。

まとめ

 AIの組織利用を推進する上では様々な課題がありますが、マーケターが中心となって戦略的に取り組むことで、より目的に力強く向かっていく導入が実現できると考えています。そこで重要となるのは、他専門領域の方と連携しながらも、その中心的先導役となって進めていき、課題解決において戦略性を意識して進めることだと考えます。

 次回は、具体的な戦略の策定について、例をもとにまとめていきたいと思います。

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この記事の著者

石田 拓己(イシダ タクミ)

スターティアホールディングス株式会社 マーケティング部 部長
クラウドサーカス株式会社 執行役員 CSO

博報堂でマーケターとしてマス領域&デジタル領域&メディア領域に9年半従事し、40を超える幅広いクライアント案件に携わる。その後マツダのグローバルのDXプロジェクトに出向して携わった後、DMM.com の経...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2024/10/18 09:30 https://markezine.jp/article/detail/47106

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