成功する企業の共通点
また、サイバーエージェントの藤田晋社長は、共著『心を鍛える』(KADOKAWA)の中で、「誰かのために」という利他の心がある限り、強い心で進んでいけると話している。
「人が最も心を強くできるときとは、「誰かのため」という利他的な目的があるときではないでしょうか。自分以外の人、それが親しい人であろうと、まだ見ぬ人であろうと、お役に立ちたい(立てるかもしれない)ときは、最高に頑張れる気がするのです(中略)もし、あなたが「いまいちパワーを出し切れない」と感じているならば。「自分(身内)にとってのメリット」はいったん横に置いて、自分の取引先やお客様、所属する組織、身を置いている業界、不特定多数の人たち、さらには次世代の人たちの存在に思いを馳せてみてください。「誰かの役に立てるかもしれない」という希望があれば、どんなこともきっと一生懸命にやり遂げられるように思います。
サイバーエージェントの「21世紀を代表する会社を創る」という目標も、そんな「誰かの役に立てるかもしれない」という思いの延長線上にあります。「誰かのために」という利他の心がある限り、強い心で進んでいけると私は信じています。」
出典:『心を鍛える』 藤田 晋 著、堀江 貴文著、KADOKAWA、2022年2月
前回の記事「広告業界で仕事のモチベーション維持に悩んでいるあなたへ/広告はヒトを幸せにするものである」で、広告とは誰かの届けたい想いを届けたい相手に届けるものだと書いた。「マス広告だろうがネット広告だろうが、届けたい想いがある。それは、広告主企業の想いであり、そして、その想いを、届けたい相手がいる。相手は、ターゲット層の生活者だ」。
広告の仕事は常に「他者」のことを考えて、「他者」のためにやるものだ。その「他者」は、広告主企業だったり生活者だったりする。「誰かのために」という利他の心がなければ、優れた広告は創れない。
電通が広告業界一位であり続ける理由。
他者のために全力を尽くす。他者の幸せを目的に生きる。他者の喜びを、自らの喜びとする。「誰かのために」という利他の心がある。たとえば、現在の(2014年にサティア・ナデラがCEOになった後の)Microsoftのミッションは、「Empower every person and every organization on the planet to achieve more.(地球上のすべての個人とすべての組織が、より多くのことを達成できるようにする)」となっている。
「地球上のすべての個人とすべての組織」とは、地球上の「他者」ということになる。その他者を「Empower(力を付与)」したいというミッションだ。「誰かのために」という利他の心が高らかに謳われている。
電通が広告業界のガリバーとして業界一位であり続ける理由。Googleが創業後まもなく急成長し世界のネット広告を牽引してきた理由。サイバーエージェントがネット広告業界一位に躍り出た理由。そして、一度は凋落したMicrosoftがサティア・ナデラCEO就任以降に急回復した理由。すべてに共通するのは、「他者」であり「誰かのため」であり「利他の心」ではないのか。
広告プラットフォームは、ユーザー(生活者=他者)、パブリッシャー(媒体者=他者)、アドバタイザー(広告主=他者)の為に、それぞれの立場やニーズを理解して、それぞれに使ってもらって喜んでもらわなければ普及しない。いまでこそ、独占禁止法(反トラスト法)訴訟を抱えるGoogleだが、そのプラットフォームがそれぞれの「他者」にとって圧倒的に便利だったからこそ、ここまで普及したのは間違いない。
それは、1998年に同様に反トラスト法訴訟で提訴されたMicrosoftも同じだった。当時のWindows PCがユーザー(=他者)にとって圧倒的に便利であり、パソコンが一般家庭に普及する原動力になったからこそ、独占的な地位を確立したのだった。そもそも、MicrosoftのWindows 95が普及したお陰で、インターネットが一般に普及した。その基盤の上で、Googleが登場し、AmazonのECが成立し、Meta(Facebook/Instagram)が普及した。Microsoftの立ち位置は、ある意味で、プラットフォーマーのプラットフォーマー的な位置にあり、業界全体という「他者」を「Empower」している。
そしてまた、電通が強い理由、サイバーエージェントが強い理由も、それぞれ、「他者のために全力を尽くす」、あるいは、「利他の心がある」からだと言ってよい。そもそも、自己中心的で、自分の利益優先でやっている企業が、社会に受け入れられるハズもない。