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有園が訊く!

サム・アルトマン氏「Worldプロジェクト」の全貌/AIが普及した世界にIDがなぜ必要なのか

 OpenAIの創業者として知られるサム・アルトマン氏が立ち上げた「Worldプロジェクト」が世界の注目を浴びている。このプロジェクトの背景には何があるのか。そして、どのように発展していくのか。その鍵となるのが、プロジェクトで提供される人間であることを証明する認証システム「World ID」だ。今回は、Microsoft Advertisingの事業責任者を務める有園雄一氏が、Worldプロジェクトを推進する企業、Tools for Humanity 日本代表の牧野友衛氏と対談。AIの時代において、人間であることを証明する重要性について議論した。

AI時代を見据えたプロジェクト

有園:「World」のプロジェクト、私は非常におもしろいなと思っています。マーケティングや広告の領域でも、認証と、そのための人間であることの証明の整備が重要だと考えているからです。

 本人確認が不要のSNSなどでは、大量の偽アカウントが広告詐欺などに悪用されています。また、Facebook(現・Meta)の暗号通貨プロジェクトは、マネーロンダリングへの悪用の懸念が指摘され、実現しませんでした。金銭的取引が発生するインターネットサービスには、本人確認済みのIDが欠かせないのです。

 そのIDの普及にOpenAIのサム・アルトマン氏が取り組んでいる。そして、旧知の牧野さんも携わっているので、ぜひお話をお聞きしたいと思っていました。まずは、会社概要とプロジェクトの背景について教えてください。

牧野:Tools for Humanityは、World Networkの発展に貢献する企業で、ハードウェアとソフトウェアの開発やマーケティングなどを手掛けています。私は日本の事業責任者を務めています。

 今、米シリコンバレーの実業家たちは、AIが普及した先のことを考えています。AIが進化し、それまで人が行ってきた仕事を担うようになった後、人はどうやって生きていくべきか。最低限の所得を保障する「ユニバーサルベーシックインカム(UBI)」をどう実現するか。実証実験など研究を重ねています。

 しかし、UBIを世界で実現するためのインフラがありません。日本ではコロナ禍で特別給付金が配布されましたが、個人にひもづく銀行口座があることが前提でした。それを世界レベルで実施しようすると、統一のIDがないと難しい。銀行口座の普及率が高くない国では配りようがありません。そのインフラを作ろうという発想が、プロジェクト立ち上げのきっかけです。IDとそれにひもづくウォレット(wallet)をセットにして普及させようと取り組んでいます。

Tools For Humanity 日本代表 牧野友衛氏
Tools for Humanity 日本代表 牧野友衛氏

“唯一無二の人間”であることを証明する匿名のID

有園:プロジェクトでは、人間の目の虹彩を「Orb(オーブ)」という装置で撮影する生体認証を採用したのですね。

牧野:このプロジェクトでは、Orbという端末で個人の写真を撮影し、その情報をOrb内で処理して、その人物が実際に存在しかつユニークな人物であるかどうかを判断します。個人が実際に存在してかつユニークな場合、虹彩コード(1と0の配列)が生成されます。Orbが取得したすべての情報はOrbから削除され、個人のスマートフォンに転送されます。Worldは名前、年齢、性別など、あらゆる個人情報を知りません。

有園:虹彩コードからIDを作り、ひもづけるのですか。

牧野:いいえ、虹彩コードは個々のIDとひもづいているわけではありません。虹彩コードを生成するのは、固有の人間であることを確認するためです。複数のアカウントを作れないように、過去に認証していない人であることを確認しているのです。現在、Orb認証済みのIDが約750万人分あるので、それらと一致していないことを確認します。そのため、虹彩認証を行うのは1度のみです。

有園:Orb認証した人に対しては、Worldcoin(WLD)という暗号通貨を提供していますね。どのくらいもらえるのですか。

牧野:現在は、Orbで認証された個人はWorld Networkの参加者となり、毎月Worldcoinエアドロップを受け取る選択ができます。

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悪質な広告の対策にもIDが不可欠

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この記事の著者

有園 雄一(アリゾノ ユウイチ)

Regional Vice President, Microsoft Advertising Japan

早稲田大学政治経済学部卒。1995年、学部生時代に執筆した「貨幣の複数性」(卒業論文)が「現代思想」(青土社 1995年9月 貨幣とナショナリズム<特集>)で出版される。2004年、日本初のマス連動施策を考案。オーバーチュア株式会...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

加納 由希絵(カノウ ユキエ)

フリーランスのライター、校正者。

地方紙の経済記者、ビジネス系ニュースサイトの記者・編集者を経て独立。主な領域はビジネス系。特に関心があるのは地域ビジネス、まちづくりなど。著書に『奇跡は段ボールの中に ~岐阜・柳ケ瀬で生まれたゆるキャラ「やなな」の物語~』(中部経済新聞社×ZENSHIN)がある。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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2024/12/02 09:00 https://markezine.jp/article/detail/47253

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