SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

おすすめのイベント

おすすめの講座

おすすめのウェビナー

マーケティングは“経営ごと” に。業界キーパーソンへの独自取材、注目テーマやトレンドを解説する特集など、オリジナルの最新マーケティング情報を毎月お届け。

『MarkeZine』(雑誌)

第107号(2024年11月号)
特集「進むAI活用、その影響とは?」

MarkeZineプレミアム for チーム/チーム プラス 加入の方は、誌面がウェブでも読めます

事例を通して見る世界のマーケティング/ブランディングのトレンド

生活者の贅沢に変化?事例と調査で見る「ラグジュアリーブランド」の最前線

 国内でも“兆し”あるマーケティングの新たな潮流に、業界を先進するブランドはどう向き合っているのだろうか? 世界で100ヵ国以上にオフィスを展開する広告代理店HAVASで日本のエグゼクティブ・ディレクターを担う北市卓史氏が、同社が持つ専門研究チームとそのネットワークを活かし、世界各国の先進的なブランドによる取り組み事例を紹介する本連載。今回は生活者の思う贅沢の変化について、昨今の「ラグジュアリーブランド」の成功事例や調査データから迫る。

ラグジュアリーは急成長産業

 ラグジュアリー業界は古い歴史があるにも関わらず、近年の急成長産業の一つとして挙げられていることをご存知でしょうか。コロナ以降も経済の先行き不透明感が強い中、「不況にも強い」とされているラグジュアリー産業はどこ吹く風で、年間ベースで8~10%の市場拡大を記録(Bain & Company社のリリースより)。今後も贅沢への加熱は止まることなく長期的な成長が期待されます。この背景には、富裕層が増加しただけでなく、アジアや中東といったマーケットの拡大、若年世代による消費の牽引といった、大きな市場変化があります。

 実際にラグジュアリーブランドに対する意識の変化は調査からも見て取れます。高級品に対しての消費傾向は世代間で大きく異なり、また本来なかった新しいラグジュアリーの捉え方も見受けられます。元来は歴史や伝統が大事とされてきた高級ブランドに、スポット的な新しさが求められる側面も。ステータスシンボルとして心を満たしてきた高級品は、投資商品としても見られるようになりました。特にプロシューマー層(トレンドを生み出し、社会の消費行動に影響を与える生活者グループ)になると、その傾向は顕著になっています。

画像を説明するテキストなくても可
クリックすると拡大します
画像を説明するテキストなくても可
クリックすると拡大します

 この記事では成長しつつ変わりゆくラグジュアリー産業の、最新のビジネス事例を紹介しながら、生活者の意識の変化を探っていきたく思います。生活者の“贅沢”は近年どのように変化をしているのでしょうか?

「社会問題+国際化」の事例 Gucci - Changemakers

 2019年、Gucci(グッチ)は「Changemakers」というプログラムを開始しました。このプログラムでは、才能がありながらも経済的な理由からファッション業界でのキャリアを築けなかった人材に、教育やネットワーキングの機会を提供。奨学金やコミュニティーへの投資を通して、若手デザイナーをサポートすることで、より開かれたファッション業界へと変容していこうという試みです。2024年現在も継続されており、多くの称賛を受けています。

画像を説明するテキストなくても可
グッチの公式YouTubeチャンネルが公開した「Gucci Changemakers Chapter V: Igniting Creative Opportunity」より

 本来ラグジュアリーブランドは「ユートピア(理想郷)」として捉えられてきた側面があります。“世俗から離れた存在であり、現実を忘れさせる夢を売ることが役割の一つである”といった論調です。しかし近年は、現実の社会的問題に対して声を上げ、アクションを起こすことを生活者が求めているようです。特に今回のグッチのように文化多様性に対する期待は大きいことが調査からもわかります。

画像を説明するテキストなくても可
クリックすると拡大します

 また多様性に対する議論は、ラグジュアリーブランドの国際化についても考える必要があります。元来は欧米を中心として発展してきたラグジュアリーブランドですが、文化的な多様性を認めるということは、より他の地域にも国際化を推進していくということになります。それを生活者はどのように感じているのでしょうか?

画像を説明するテキストなくても可
クリックすると拡大します

 結論から申し上げると、国際化はポジティブに捉えられていることがわかります。ラグジュアリー産業ではサヴォアフェール(長年の培った匠の技/ノウハウ)こそが、ブランド価値だと考えられていますが、それは伝統性(純血主義のような限定された継承性)ではなく、あくまで技術力の伝承だと、生活者は考えているのです。

 これはラグジュアリーが欧米に限られたことでなく、より広い世界に開かれていることを意味しています。昨年、中国出身の女優ファン・ビンビンがカンヌ国際映画祭で連日異なるアジアデザイナーの服をお披露目したことが話題になりました(Tatler誌より)。このように、多様性や国際化は今後もラグジュアリー産業でも推進されていくものと考えられます。

会員登録無料すると、続きをお読みいただけます

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

次のページ
「セカンドハンドマーケット」の事例 Vestiaire Collective

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • Pocket
  • note
事例を通して見る世界のマーケティング/ブランディングのトレンド連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

北市 卓史(キタイチ マサシ)

HAVAS JAPAN 株式会社   Executive Director

営業職をベースに、国内と海外にて広告代理店の会社/新規事業立ち上げに従事。2022年より世界149カ国にオフィスを展開する広告代理店であるHAVAS社の日本法人の現職に就任。多様性のある職場や働き方、他国オフィスとのオペレーシ...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2024/11/21 08:00 https://markezine.jp/article/detail/47457

Special Contents

PR

Job Board

PR

おすすめ

イベント

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング